悪魔も喘ぐ夜
*
「ねぇ、お兄ちゃん…。
ぼくを頼ってよ。
ぼくを必要として?
ぼく、お兄ちゃんの為ならもっともっと
強くなるよ。
お兄ちゃんに優しくする。
ぼくの全身全霊で、お兄ちゃんを守る」
俺が唇を塞ぐ為に出した手にも麗はそっ
とキスをする。
騎士が王女に忠誠を誓ってするキスのよ
うに。
「…麗に守ってもらわないといけないほど
貧弱じゃないつもりなんだけど…」
年下の弟の背中に隠れて守ってもらうな
んて考えたこともない。
あまりに情けなさすぎる。
「でも無防備だよ。
兄さんに簡単に好き勝手させちゃうでし
ょ?」
「ぐ…」
反論できなかった。
一方でそんな俺を見てクスクス笑う麗は
俺が知らない大人びた空気を纏っている。
「ねぇ、お兄ちゃん?
お兄ちゃんは何が一番怖いの?
兄さんに人身御供みたいなことしてま
で何を守りたいの?」
麗の真摯な目が俺を見つめる。
その問いに即答できなくて、答えを探し
て黙り込む。
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