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悪魔も喘ぐ夜
*


 頬を包んでいた手を首の後ろに回して麗

が抱き着いてくる。


「ぼく、大人になるからっ。

 お兄ちゃんが頼れるように、もっともっ

 と頑張るから…。

 お兄ちゃんに…もっとちゃんと…触れさ

 せて…。

 弟だからとか、年下だからとか、そんな

 …そんな壁、作らないで…」


 麗の肩が震えている。

 でもその肩を抱きしめていいのか…抱き

締めてしまっていいのか、俺にはわからな

い。


 “今ここで突き放した方が麗にとって傷

は浅いんじゃないか”


 麗を泣かせたくないと思う一方でそんな

考えが頭を過る。


「お兄ちゃんだけなんだよ…。

 誰と出会っても、誰と一緒にいても、

 “やっぱりお兄ちゃんだけなんだ”っ

 て思い知るだけ。

 お願いだから…兄さんのことだけで頭を

 いっぱいにしないで。

 ぼくのことが好きって言うなら、お兄ち

 ゃんの中にぼくの居場所をちょうだい」


 涙で濡れる麗の顔が近づいてきた。

 唇が触れる…そう思ったけど避けなかっ

た。

 今突き放せば麗がバラバラに壊れてしま

うんじゃないか…そんな予感がした。


「んっ…」


 どっちのものかもわからない声が漏れ

た。



 窓の外で雷が轟いて、大粒の雨が窓の外

に降り注ぐ。

 全てを包み込み、覆い隠す雨が。





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あきゅろす。
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