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悪魔も喘ぐ夜
*


「させるか、ですか…。

 そうですね…。駆がその体で、文字通

 り僕の精子を一滴残らず受け止めて麗

 の前でしようと思えなくなるほど満足

 させてくれたら、話は別ですが」


 からかう兄貴の目が楽しげに細められ

る。

 俺はもう我慢しきれずに兄貴の胸倉を

掴んだ。


「ふざけるなよっ!

 一体いつからそんなになちゃったんだ

 よっ!?

 麗が可愛くないのか!?」

「麗が駆を欲しがらなければ、優しくし

 てあげますよ?

 弟として、ね」


 兄貴のパジャマの胸倉を掴んだままギ

リギリと睨みつける。

 兄貴は兄貴でそれに臆することなく冷

めた視線を投げてよこす。


 パジャマを握りしめすぎた手に力が入

らなくなるまで睨み続けて…結局、根負

けしたのは俺だった。

 俺がどうこう言ったって兄貴は変わら

ないだろうし、表面上仲良くされても解

決にはならない。


「兄貴は…なんでそんなに俺を…」


 あの夜に言われたことを思い出し、項垂

れて溜息と共に弱々しく呟いた。

 ふっと兄貴が笑う気配がする。


「強いて言うなら…駆が駆だから、でしょ

 うね」

「…だったらもっと俺の意見を尊重しても

 いいと思うんだけど…」


 楽しげな兄貴に唇を尖らせて不満を告げ

ると頬を滑った指先に顎のラインを擽られ

た。


「そういう意味で言ったんじゃありません

 よ?

 僕は駆が思ってるよりもずっと意地悪で

 すからね」


 …本当に意地悪だ、この兄貴は…。


 今まで俺が思い描いていた兄貴像をぶち

壊してもまだ足りないらしい。


 べつに兄貴を理想の兄貴像に押しこめて

たつもりはないけど、兄貴の口が悪くとも

言動が意地悪でも好意的に受け入れてきた

つもりだ。

 それを根本から掘り返して打ち砕いて、

まだ足りないと言う。

 リアルはもっとドロドロしているんだと

見せつけて…


 …見せつけて…どうしたいんだ?

 俺に嫌われたい?呆れられたい?



 ふと気づいて、何かが頭の中で繋がりか

けたけれど、それを遮るように顎を引かれ

た。


「この僕が目の前にいるのに、何を一人で

 呆けているんですか?」


 何か別のことでも考えているとでも思っ

たのか、兄貴の視線が鋭い。








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あきゅろす。
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