悪魔も喘ぐ夜
*
「麗はもう寝たんですか?」
「いや、起きてるよ。
麗?兄貴帰ってきたよー」
階段に向かう途中の廊下にいるはずの麗
に声をかける。
と、麗が俯いたまま無言で…まるで幽霊
みたいにフラフラと近づいてくる。
「麗…?」
様子がおかしい。
一歩麗に踏み出そうとして麗に手首を掴
まれた。
そのまま手加減のない力で引かれ麗のほ
うへとバランスを崩す。
しかしそのまま倒れこむわけにはいかな
くて、咄嗟に壁に手をついて途中で体を支
えた。
…え?
唇にやわらかいものが触れた。
一瞬遅れてそれが麗の唇だと理解してバ
ッと顔を上げた。
「麗…?!」
家族の…他の人がいる前ではしない約束
だ。
だからこそ今まで麗の我儘を許していた
のに。
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