悪魔も喘ぐ夜 * 淫魔―――… 生き物の精気を糧にして生きる闇の者。 時には吸血鬼(バンパイア)紛いのことを する者がいるから間違われがちだが、生き 血のみを糧とする彼らとはルーツが遠い昔 に分かれている。 生き血はもちろん、精液、唾液、汗、涙 といった体液から生気を吸い取り糧とする 者…とり分け快楽を与える者達を総称して 淫魔という。 彼らは同族間で子を成し、血脈によって その生を引き継いでいく。 一方でそんな彼らが喉から手が出るほど 追い求める存在がいる。 それが『魔魅香(フェロメニア)』と呼ば れる、稀有な特異体質をもつ者。 これは突然変異でしか生まれず、人の間 にあってはただの人と同じだが、一度体質 が花開くと淫魔にとっては抗い難い香りを 放って誘惑するという。 また、その蜜を味わってしまえば禁断の 中毒症状を起こし、それ無しでは生きてい けなくなり、過去に狂った死者を幾人も出 してきた。 魔の者たちはその稀有な体質をもつ者を 畏怖とそれを凌駕する欲望をもって『至高 の甘美』と呼ぶ。 では、そのどちらもを一つの体に秘めた 者がいたとしたら… それは喜劇だろうか? それとも悲劇だろうか…? |