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「ちょっと。拓也くん、ここにいる?」
そこには、クラウドさんが腕組みをして機嫌悪そうな顔を覇弥雄の顔をした僕に向けていた。
(あれ、覇弥雄って…クラウドさんの事、なんて呼んでたっけ?でも…凛ちゃんや柚希を呼び捨てだから)
「シャオ、いらっしゃい?」
かな?、と首を傾げ無意識のうちに自然と笑みが零れ、はっと気付いた時には、しまった!と顔は横に向いていた。
ゆっくり逸らしてしまった目でちらりとクラウドさんを見ると、案の定 目を丸くして眉間にシワを寄せ固まっていた。
「あ、あんた…っ」
しどろもどろな状態になるのもわかる気がする。覇弥雄は、僕や柚希と出会った時からたまにしかこんな笑顔は見せない…というより
どれも…本当の笑顔にならない。
「…くなら、ここにいる」
「え…?は?」
「な、なんでもな…ねぇ!た、拓也なら…」
すると、僕の視界に柚希の顔が映る。
(え)
「戻った…?」
突然の事で僕はただ手の平を見つめる。
「拓坊だよね」
ふいに目の前に居る柚希に声をかけられ、首を縦に振る。
「…なんだ豚まん、人の顔じろじろ見んなよ」
「だっ誰が豚まんよっ!!さっきまでた、拓也くんみたいに喋ってたくせに」
玄関で怒鳴るクラウドさんの声は、見事に柚希や僕の耳に届いていた。
「あははっ、いつものしーちゃんの声がするー」
「…うん」
「大丈夫だよ」
「え?」
「覇弥雄には、もう凛ちゃんが居るんだから。でもびっくり…」
柚希はせつなげにそう言葉を吐くと、そのまま僕に笑ってみせた。
「僕と拓坊は…さ、しーちゃんが好きだって覇弥雄に言ってたからいいとして。覇弥雄まで恋してたなんてねっ」
ぱっと明るく子供みたく笑うと、柚希は僕の肩を叩く。
「い、痛いんだけど」
「しーちゃんのナイトは拓坊だけなんだからーしっかりしてよね」
僕は時々、柚希が大人みたくそう笑うのを見て…思う。
(柚希も…覇弥雄も、僕のために…)
「…ありがとう柚希」
「わぁー眩しくて、目が眩むーぅ」
「あはは」
柚希が体を使ってリアクションをとると、クラウドさんと話していた筈の覇弥雄は拓也の腕を掴む。
「…ナイト出動」
「うわ、それ僕のセリフ!」
「じゃ、行ってくるね…ありがとう」
「まーまーいいってことよー、ね」
「別に」
その言葉を合図に僕はクラウドさんの待つ玄関まで歩いて行くのだった。
-END-
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