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姿は変わっても
◎城島 拓也

姿が変わっても…君はきっと。


ある朝、目を覚ましたら…


僕は 覇弥雄になっていた。

その事に気付いたのは、いつもみたく庭の花を見ようとしたら庭がなく、覇弥雄の部屋だったからで…。それから、慌てて寝ていたベットから飛び出す。

洗面所で自分の姿を確認して頬を軽く抓った。

「…夢、じゃないんだ…」

その時、玄関が勢いよく開けられた音がしたと思うとどたばたと慌ただしい足音が近付いてくる。

「覇弥雄ぉーーっ!!」

ドシッと背中に抱き着く人物を見て、ちょっと長めに伸びた覇弥雄の前髪をかきあげて横目に見遣る。その姿はまさに…−。


「え……ぼ、僕!?」

「あっれ?ハヤオンって自分のこと、僕って言ってたっけ?」

背中側からそう上目使いに顔を覗かれる。

「そもそも、覇弥雄のことハヤオ…ンて呼ばないし……」

お互いが何かに気付いて顔を見合わせて、少し時間が流れた…−。


「つまり、僕が拓坊の顔して柚希。ハヤオンの顔してるけど中には拓坊がいる。…てことだよね?」

僕の顔をした柚希は、そこにあるソファに座るとそう言う。
ふと覇弥雄の顔をした僕は、その言葉に頷きある事に気付く。

「…てことは、覇弥雄は柚希の中、…かな?」

その言葉に柚希は苦い物でも食べたような顔になる。

「うわー。覇弥雄、執事とかに挨拶しなさそうっピンチ…!」

「だね、柚希の家は豪邸っていうか」

そう言うと柚希は僕の顔で苦笑する。

「何言ってんのー、拓坊んちの方が大きいでしょー?多分」

その時、さっき柚希が扉を開けた時のような音が玄関から広間に響く。その姿を見て柚希は満面の笑みを向けた。

「おかえりーハヤオン」

「柚希…」

「あれ、僕ってわかっちゃったの?つまんなーいぞ☆」

「…てめぇ」

玄関から足早に部屋の中へ上がると、僕の声でそう言う柚希の前に立ち尽くす。

「拓坊の綺麗な顔は、殴っちゃだめだよー」

柚希が勝ち誇ったかのように、僕の顔で不敵な笑みを浮かべていた。

(穴があったら、入りたい…)

それを見てからはぁと溜息をつき、柚希の顔をした覇弥雄は頭をかくと自分の家に帰ってきて落ち着いたのか、そこへ腰をおろす。

「じゃあ…俺の体の中に、拓也が居るのか?」

「え?あ、うん…」

いつも笑顔な柚希なだけあって、覇弥雄のように睨むような目付きでそう聞かれると一瞬ドキリとしてしまう。

「そ…か…」

そう言って腕の中に顔を埋めると、僕の顔をした柚希は頬杖をついて、んー…と声をあげる。

「でも、なんでこうなっちゃったんだろうねー。拓坊は心辺りとかある?」

「ない、けど」

蚊の鳴くような声で僕はそう言って目を伏せた。
すると、途端、吹き出す声が聞こえて僕は顔を上げる。

「え?な、なに?」

「ぷふ…なんかギャップあって面白い!」

「柚希…後で覚えてろよ、マジで」

顔を埋めて寝ていたかと思った方向から声が聞こえ、僕と柚希は同時に覇弥雄(柚希)の顔を見る。

「おー僕カッコイイ!」

「ナルシストかお前は」

(確かに、柚希と僕が口喧嘩してて覇弥雄が笑って見守るなんて…異様な感じ)

そう思いクスリと笑った時、三人の会話を遮るかのように玄関のチャイムが鳴る。


「…一応、覇弥雄の家だし僕が出てくるよ」

「……ああ」

不安げな覇弥雄はそう言って、僕は立ち上がって玄関の方へ歩いていった。

(やっぱり、口調とか表情とか覇弥雄っぽくしとかなくちゃいけない…よね)

「ぼ、俺は…お、俺は」

呪文みたいな言葉を連呼しつつドアの前まで行き着くと、深く深呼吸をし、ゆっくりとそのドアを開ける…−



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あきゅろす。
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