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ただ、呟いただけ
◎ライとプラチナ

ねぇ君は…本当に後悔してないの?

みんなが寝静まりかえった夜のこと
僕は頭の中に響いたその声にはっと目を覚ます。
他の誰にも聞こえないプラチナの声…
周りではクジリン君やシャオちゃんがすやすやと寝息を立て眠っている。

「プラチナ…今僕寝てたんだけど」

「知ってるよ、ただお菓子ばかりの世界が僕には苦しくってね」

「むっかぁ何それー」

すっかり目が覚めたのかいつもみたく少年、ライは屈託ない笑顔で笑ってそう言うとハンモックからひょいと猿みたく木の枝へと跳び移った。
その様子をいつもライの中で見ているプラチナは馴れたように口を尖らせてヒューと口笛を鳴らしてみせる

その枝の上に立つとライは片手を木に添えて月夜に流れる風を感じながらその場に座り、足をぶらつかせる。

「で…プラチナ。いまさら後悔してないか、なんてどうしたの急に」

端から見れば独り言−。
けど、確かに存在していると互いの鼓動が教えてくれる
プラチナは頭の中で一時黙っていた。
一息ついたようにふーと肩を落とし、落ち着いた様子でその重くなった口を開く。

「…ライは僕の存在を知り、僕と共に大天使ミカエルを捜してくれると誓った。だけども、そのせいで一度終わりを遂げた旅をまた仲間達と続けてくれているんだろ?…そう思うと罪悪感が募ってね」

涼やかな風が二人のしんみりとした心に通り抜ける…
プラチナはいつだってそう。
自分を責めて、自分が全部背負い込んで……強気な一面を皆の前で見せているけど僕の前ではいつもこうなる

「なーんか…プラチナって本っ当お馬鹿さん」

「それは、君のおバカ病が移ったせいだと僕は言い張るね」

プラチナは嫌みったらしくそう笑んでみせた。内心ぎゃーぎゃー言って猛反発する自分を押さえながら冷静に…冷静に……

「って馬鹿は失礼だってば!そうやってまた人をおちょくるんだから、もう僕寝させていただきますっ!」

馬鹿 という言葉に敏感な自分は突っ込まずにいられなかった。

そうやって笑うプラチナだって、僕はらしくっていいと思う。今は僕の中に居ることで僕に似なる姿になっているから…プラチナの本当の姿は知らない。

けど僕は僕、プラチナはプラチナとして存在しているということを……
今は互いに存在し合うことでこの夜空を見上げることが出来るということを…一緒に旅をやってきてやっと解ってきた気がする。

「それと約束、もうこれ以上自分だけが悪いだなんて思わないこと。前にプラチナが眠った時にみんなで決めたの、これを僕達の最後の旅にしようって…当然プラチナも入ってるからね」

ライはさっき寝ていたハンモックにひょいと簡単に跳び戻ると掛け布団に潜り おやすみ! と言葉だけ残してもぞもぞと布団に埋もれていった。


これじゃあ皆がこの旅を飽きないわけだ

「……君の笑顔は…僕が奪ったのかもしれないのに呑気な奴だね。本当見てて泣けてくる」

それが君の覚悟なら…

君を犠牲にしてでも自分の志(こころざし)のためだけにミカエルと再び戦いを仕掛け

僕はただ、それだけを求める

言葉では解りやす過ぎるんだ
だから余計にでも

君の心を悟るのは
誰よりも難し過ぎる…−。

人の幸福(しあわせ)を願って君は一体何を得られる?
人のためだけに君は命をも賭けてしまうというのか?

抜け出せるものなら…君を僕から今すぐに解放させてあげたい……


「ありがとう…そして…決して自分を見失わぬように」


ゆっくりと瞼を閉じ
星空の下、二人は眠りに就いた。

互いに望む

まだ見ぬ 明日の希望のために…


-END-

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