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「…っ!!?」
「ク、クジリン君…っいつの間にー!?」
上から覗き込むようにライの後ろに立っていたクジリンは首を傾げる。
「え?結構前から居たけ…痛っ!!」
珍しく人型になったクジリンの長い前髪をミライは何も言わず引っ張る。
そしてライに聞こえるか聞こえないかの声で、
「偽鼬…今聞いた事を他の者に話したら承知しない…」
と、冷たい目でクジリンの目を睨みつけていた。
一瞬、怯みかけたクジリンもムッとした表情になるなり
「上等だ…ツンデレ野郎!!」
と、恐れを知らず完璧に喧嘩腰で答えた。
「まぁ、いずれ皆に話す時が来るかもだし。ね」
そう言って、ライの見ていないところで喧嘩していた二人は振り向いたライの顔を見るなり何もなかったかのように振る舞っていた。
「とりあえず、シャオさん達がライ兄さんとミライの事呼んでたぜ。"ちょっと聞こえなさいよーっあんたらー!!"て」
「あははっ!!クジリン君、その鬼顔!シャオちゃんそっくり〜」
「(はっ!兄上が笑っている!?…私もあの顔を…あの顔……)」
「ちょっとライ、その笑いはー…何に対しての大爆笑かーしらぁ?」
一瞬にしてライとクジリンの顔が青ざめる。
「え、えぇと…それは、ねクジリン君?」
「そ、そそそうだよな、ライ兄さん!そうなんだよシャオさん!」
「わかるかーっ!!」
「「いーゃあぁぁっ!!!!」」
その時、野原を駆け回るライの手からヒラリと落ちた一枚の写真。
ミライはそれを静かに拾いあげ、ぱっぱっと手で写真にかかった砂を落とす。
「…兄上の大切だった者は私の大切な」
「者、ですか?」
ミライが後ろに振り返ると、棘はにっこりと紳士的に微笑んでみせミライの隣へ並ぶ。
「…貴方には関係ない」
「…そう言われると思いました。ライさんと同一体のプラチナさんをそう避けた貴方の事ですから」
そう言う棘の顔は微笑んだまま。
「あれは…兄上じゃない。兄上を乗っ取った……ただの疫病神だ」
棘の表情はミライ共々変わらず、ミライはただただその写真をじっと見つめていた。
「そうですか。友達、仲間、繋がり…ミライさんにとって大切なものは何か、もう少し勉強していただかなくてはいけませんね」
「…?」
そう言って棘はシャオ達の方へ歩いて行ってしまった。
このたった一枚の写真を見て棘や兄上は…心に何を描いたのか…
自分には解らない
何か…
兄上がただ大切だと
口にしていたから 私は
彼を大切な者だと言った
プラチナというあの男も同じ様に
兄上が大切だと そう口にしていたから……
でも棘はそれを学べと私に言った。
本当に大切だと言える者は…
「ミーライー!!休憩終了ー!で、ここで遊んでこー?」
ライが遠くの方で大声を出して自分の名前を呼ぶ。
「兄上…」
「ミライ君よぉ、一人で色々しょい込むなよ。なんてったって俺達は…な・か・まだからな!!」
こいつは…ただ路地裏で倒れていた……いや…そうか…
「そうだ…ロック」
「お…おお名前で!?」
「ミーラーイー?」
聞こえないのかなー?といった感じで腕組みをしていたライ。
兄上の本当の笑顔を…私がきっと
「…行く」
「お、おうよ!」
少しだけ…わかった気がする。
私に欠けているその"なにか"が。
ライが呼ぶ方へ
その声が私の道標となるなら…。
-END-
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