隣は譲らない
◎ライ達
ただいま主人公、…戦ってます。
まさか…自分が風邪を引くなんて思ってもみなかった。
薄々、気付いてたつもりだったんだけど…真冬にアイスはダメみたいです皆さん。
「僕…天才なのかな。」
「馬鹿だから風邪引いたに決まってんでしょ!」
相変わらず…このシャオちゃんの怒鳴り声は頭によく響く。そんな怒鳴り声をあげながらも、ちゃんと額にあるタオルを冷やしてくれる。
「ゔぅーシャオちゃんの所為で頭の中がキンキンするよ〜」
「真冬にアイス食べるあんたが悪いのよ、本っ当馬鹿」
「うー…だってー…」
慣れない空気、ふかふかとした羽毛の毛布にうずくまりライは頭を隠した。
そんな事も気にせずシャオは言葉を続けていた。
「にしても…お粥担当おっそいわねー」
「お粥担当?」
「そ、ロックさんが張り切ってどっかに向かって行ったのだけは分かるんだけど…。」
あぁ、そっか。
ロックさんたまに主婦みたいに料理できるとこがあるんだよね。
「お粥来たら起こしたげるから、あんたは寝てなさい。」
「うわ、優しい」
どうやらその気持ちが今にも眠りそうな僕の表情に表れていたみたいで。
「ううっさいわ!!」
「ぶふ…っ!」
思っきり布団で顔を隠された。
これがまた、凄く…痛かった。
「ゔ〜酷ーい」
「いいから寝なさいっ!」
お粥。食べたい…。
時同じくして―――――…
「よぉーし!完璧だ。棘ちゃん、俺天才かもし「お粥が冷めないうちに持って行っていただけますか?お二人共」
棘の言葉に二人は同時に頷いた。
「おぅ、了解だぜ。」
と、言っているクジリンの横をお粥を持ったミライが通り過ぎる。
「ち、ちょっと待った!それは俺が持っていく。」
「……。」
「シカトかい」
くるりと振り返ったミライの表情はいつになく真面目だった。
だが、
「…兄上の看病は私がする」
「お前は主婦かっ」
「…主婦じゃない」
口喧嘩の内容が、
「んな事分かってるっつの!とにかくそれは俺が持っていく」
「無理。」
「ンだとォ…っ」
子供っぽい。
絶妙なタイミングで会話を続け、二人でお粥を持ちながら歩いていると目の前にライとシャオの姿が見えてきた。
「もう!あんったら遅い!!」
「いや、シャオさん!それが…」
「兄上、大丈夫ですか?」
「し、心臓飛んでくかと思った…!」
寝てなさいと言われた張本人に怒号の如き大声で起こされたライは、胸と頭を手で押さえつつ、そう言って溜息をつく。
それを見てから、ミライは先程持ってきたお粥をライの前に差し出す。
「兄上…お粥です。」
「わぁ、美味しそうっ!今度から料理担当は決定だねー」
「あ!ま、また俺の先を!」
「何事も、早い者勝ち…」
「いただきますっ」
「くぅ〜そぉ…野郎っ」
ほかほかのお粥を前に満面の笑顔で合掌するライの隣で、クジリンとミライは密に火花を散らし続ける。
「あー幸せぇ」
「あんた羊顔になってるわよ?」
例え、どんな事があっても…
(貴様に…)
(お前なんかに…っ)
隣は譲らない
-END-
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