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青春の定義
これからゆっくりと グレイSide

それは、俺がまだ小さかったころ

父の故郷である日本に初めて来たときのことだ。


「ハルマサ、ここはお前にとったの第二の故郷だ。父さんが母さんと出会った公園に連れていってやるよ」

そういって手を惹かれて連れて行かれたのは、今でもよく覚えている


そしてそこで、俺はユウに出会った




どんな話だったか、グダグダとつまらないこと(たぶんノロケ)を話している父さんに嫌気がさして、そこらへんを一人でブラブラしていたときのことだったと思う。

公園といっても、結構な広さのある場所で、恋人たちの憩いの場でもあったらしい(父段)




そのうちに迷ってしまって、突然目の前にボールが降ってきた


「……ボール?」

どうして空から?と上をみたときだった

「うーん?ぼーる、どこー??」

誰かの声が聞こえた

「あ、の……」

当時の俺は日本語で父さん以外と話したことがなかったから、かなり緊張していたんだと思う

俺に気づいたその子は、嬉しそうに指差して言った

「あ、ぼーる!……ひろってくれたの?」

「……うん」

「ふぅーん?」

珍しいのか、俺の顔をじっと見つめて、その子は言った

「ねぇ、きみどこからきたの?がいじんさん?」

「……わかんない」

「わかんないの?」

「……うん」

母はオランダ人、父は日本人

じゃあ自分はどっちなのか、当時の俺はよくわからなかった

「ふーん?一人?」

こくりと、俺は頷いた

「じゃあ、いっしょにあそぼ!きっとすぐにけいちゃんとしょうちゃんもくるから!」


ね、と笑うその子。

茶色い髪を揺らしながら、鈴みたいに笑う顔がとても印象的で

子供ながらに、綺麗な子だなと、思ったのは鮮明に覚えている


「……ありがとう」

「こっちこそ、ぼーるありがと!あ、おれ、ゆうってなまえ!」

そのとき、俺はお前の名前がユウだと知った。

「ユウ……」

その名前の響きすら、なにか素敵なものに感じたのも、覚えている




























「……つまりは、一目惚れなんだよ」


最後にそう付け加えるて、俺は話を終えた。

本当はそのあとにも色々あったんだが、さすがに長くなるし、話すのも大変だ

「お前はなぜ、と言うが、理由なんて、元々ないようなもんだ。ただ、あの出会った日に、好きになってた」

それが拗れに拗れて今に至るのだが


「……そう、だったんだ……」

ユウは呆然としながら、何度もそうかそうか、と頷いている

「あー……、おれ、サイテーだな。忘れてたんだ、そんな大切なこと」

「……お互い、幼かった。それに、お前と過ごしたのはほんの数日だった。忘れてもおかしくはない」

それに、お前は言ったのだから。

『わすれてたら、おしえてね』と

それを、今が壊れるのが怖くて、あの頃より大人になったユウに拒絶されるのが怖くて、教えなかったのは俺なんだ

だれが責められるか

「ほんと、ごめんな。でも、おかげでようやく腑に落ちた気がするよ」

ユウはニコッと笑って、ありがとうと言った

「教えてくれてありがとう。なんかさ、ときどきグレイが懐かしく感じることがあったんだ。そういうことだったんだね」



「おれ、おまえの恋人にはなれないけど、ちゃんとお前のこと好きだから。だから、これからも仲良くしてくれるとうれしいな」


その優しい言葉に、俺は少し、泣きたいような気持ちになった


そうだった、ユウは、こういうやつだ

だからおれは、こいつを好きになったのに。

怖がるなんてらしくないことしてないで、もっと早く伝えとけばよかったな……


「すまない」

「え、え!?な、なんで、友達には戻れないとか、そういう……!?」

「そうじゃない。……でもおれはお前が、やっぱり好きだから」


そういって、おれはそっとユウの唇近くの頬にキスをした


「……!!?」


「お前のこと、諦めきれなくてすまない、という意味だ」


「〜〜っっっ!?」

俺の腕をパシパシ叩きながら、顔を真っ赤にするユウを、可愛いな、なんて思いながら、俺は笑った。

この様子だとユウは男がムリというわけではなさそうだし、まぁゆっくり、時間をかけて振り向かせてみるのもいいかもしれない


そんなふうに思った。


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あきゅろす。
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