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青春の定義
初恋 雅Side
僕は急いでお茶を準備していた

優斗先輩、様子がおかしかった

いつも、どんなことがあっても後輩の前では気丈に振る舞う人なのに

あんな呆然とした先輩、初めてだ……


「先輩、入りますよぉ」

僕はお茶とお茶菓子を乗せたお盆を持って、先輩の部屋に入った

そういえば、はじめて部屋に入る


今度僕のところ来てくれるって言ったのに、なかなか来てくれないし……

「あ、雅くん。ありがとう」

そこに置いて、と促され、ベッドの脇の小さな卓上にそっと盆を置いた

「あの、雅くん。少し、その……聞きたいことがあるんだけど」


なんですかぁ?と首をかしげると、あー、と優斗先輩は言いづらそうに声をだした


「……あのさ、雅くんはキリスト教とか、詳しい?」


「へ、キリスト??」

予想外の質問に、僕は目を丸くする

また、どうしてキリスト?

「僕、日本文化を学ぶ過程で、神道とか、仏教とか学んでいるんです。それで、対比して西洋の宗教も学ぶことはありますけど……」

それでも、詳しい、とまでは言えないと思うな……

「えっと、じゃあさ、その、クリスチャンで……その、罪とかって……」

クリスチャン?罪?

せ、先輩中二病にでもかかっちゃったのかな……

いや、たとえそうでも僕は先輩を……!!


「七つの大罪とか、そういうのですか?」

「えーっと、おれもよくわかんなくて」

あれ

先輩、顔が赤い……

赤い顔をして、布団にうずくまる姿に、いつの日かの姉の姿が重なった


『あのね、みーちゃん聞いて!あたし、告白されちゃったの……!!』



ざわっ、と体中の産毛が逆だった気がした

「……あの、もしかして、ですけど」




「キリスト教では、同性愛は罪なんです」




「あ、あー、そう、なんだ……」

なんですか、その納得したような、戸惑ったような、困惑したような、照れたような顔は


「……もしかして先輩、男にでも告白されたんですか?」

「え?!あ、いや、告白はされてないよ!」


てか、おれ男だし!!と必死に抵抗する先輩



告白は、って……



「あーあぁ……」

先、越されちゃったんだ

しかも、会話の前後からして慶先輩や、翔太先輩じゃない

だって、あの二人はクリスチャンでもなんでもない

それに縁がある家でもないから、あの二人ならクの字もでない

つまりは、僕の知らない、外国人かなんか

「雅くん?」

どうしたの?と語りかけてくる先輩に、僕は微笑み返した

「なんでもないです!……僕、もう行きますから。先輩はゆーっくり、休んでくださいねぇ」

僕はその場を後にした

パタン、と扉を締める


「なんだよ」


慶先輩でも、翔太先輩でも、ヒカル先輩でもない

僕の知らない人が、優斗先輩にあんな顔させる

「……僕だって、本気だったのに」

初めて先輩が、人の少ない僕の舞踊愛好会を見に来てくれたときから


『すっごく、綺麗だね!おれ、感動しちゃった』


男の人からの言葉なのに、どんな女性からもらったときよりも胸が高鳴ったのは……


僕は廊下の壁に持たれかかって、小さく呟いた

「僕の初恋、終わっちゃうのかな……」

それまで一目惚れなんて信じてなかった僕の、最初で最後の初恋だったのになぁ

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あきゅろす。
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