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青春の定義
ぬくもり
「……っ!!」


目をつぶる

このあと、自分がどうなるかなんて考えてられなかった

ただただ、そのときを待つしかないと思った



男の手が、直におれの胸元に触れそうになった、その時だった。


「い、いだい、いだだだだっ!?」


突然、男が呻き声をあげ始めた



「……?」

あれ、手がゆるんだ……?

そっと目を開く

おれは目の前の光景が信じられなかった


「……グレイ?」


グレイが、あの大柄な男の頭を片手で掴んでいた

まるで握りつぶさんとばかりに、その手は力を込めすぎて震えている

「や、やめろぉぉっ、割れる、割れるっ!!」

「……あ?」

「ヒィッ!?」

凄みの聞いた声

ゴミでもみるような目で、男を見下ろすグレイ

言い過ぎかもしれないけど、殺気のようなものさえ混じっているようだ


怖い……


男よりも、グレイの方が怖い。

「っ、グレイ!もういいよ、もう、いいから。警察に引き渡そう。おれ、大丈夫だよ」

必死に彼の腕を掴んで、大丈夫、と何度も繰り返した

「大丈夫、大丈夫だから……!!」

お願いだから、その手を離して



「……。わかった」


グレイは男の頭を離した。

男はそのまま、ドサリとアスファルトの上に落ちた

「……ごめんな、怖い思いさせて」

そして、ぎゅっと抱きしめられる


おれは、怖くなかったといえば嘘になる

けれど――

グレイが来たとき、素直に安心したから


だから、ありがとうの気持ちも込めて抱きしめ返した



なぁ、グレイ

なんでお前は、おれのことこんなに大事そうに抱きしめるんだよ?

おれはお前と会って、まだ日数もたってない

なのになんで、こんなに優しいの。

普通、友達が襲われそうになっても、あんな怖い顔しないだろ

あんなふうに、人殺しそうな顔しないだろ


「……よかった」


一際抱きしめる力が強まる

そのぬくもりは、すごく暖かくて、それでいて懐かしくて

「ありが、と……」

おれの視界は再び真っ暗になった

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あきゅろす。
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