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青春の定義
『たとえこの愛が間違っていたとしても』
ガラリ、と教室のドアを開ける

今日は二人が朝練なので、一人で登校だ

「おはよう、グレイ」

席で一人、本を読んでいたらしいグレイに話かける

「おはよう」

「今朝はいないんだな、エキストラ」

そういってからかうように笑うと、グレイは綺麗な顔を歪めた

「……迷惑だから、ふりきった」

「振り切る?」

あのしつこそうな人たちをどうやって振り切ったんだろう……

「それ、なに読んでるの?」

「……本だ」

「それはわかってるって」

グレイって、意外と天然?

「えーっとなになに……、恋愛もの?」

洋書らしく、字も英語

「グレイはやっぱり、日本語より英語の方が慣れてるの?」

「いや、そういうわけじゃない。……ただ、原書が好きなだけ」

そっちのほうが、作者の伝えたいことが直にわかると、彼は言った

「へぇ……。おれも読んでみようかな」

「ダメ」

「え?」

「ユウは、これはダメ」

「え、え?そんな真剣になること?」

すごい真顔で頷かれた……

「えっと、じゃあ、内容だけでも」

お願い!と手を合わせると、グレイはすこし考えた顔をして

「……コンセプトは、恋愛における友情と偏見」

「む、むずかしそうだね……」

こくり、と頷かれる

「俺の愛読書。……『even if this is the love wrong in the world, it is not related to us.』」

「それは、本の一節?」

「……ああ」

「もう一度言って」

グレイは首をかしげたあと、もう一度流暢な英語で繰り返してくれた

「『たとえこの愛が世界では間違っていたとしても、私たちには関係ない』……なんか、切ないけど、強い愛がそこにあるって感じ」

いいな、なんかそういうの。

そう言って笑ったら、なぜかグレイは驚いたようにおれを見た

「……いい、か?」

「うん、なんかロミオとジュリエットみたい」

「……それとは全く別物なんだが」

あれ、グレイ嬉しそう?

「やっぱりおれ、それ読んでみたいな!」

「ダメ、絶対」

「そんな薬物みたいに言わないでよ!」


「ふっ……」

あ、グレイが笑った

いや、今までも笑顔は見てきたんだけど

「はははっ」

声を上げて笑うところ、初めてみた……!!

「そ、そんなに面白かった?」

「ん、ツッコミ?したときの顔が」

ふふっ、とまだ笑っているグレイ

まぁ、いっか。楽しそうだし

「ユウは、あの時から変わら「おっはよー!!」

グレイが何か言いかけたところで、慶がドアを勢いよく開きながら教室に入ってきた

「おや?なんだ、クラスの雰囲気が妙だぞ?」

「慶、そこ早くどく!」

「うわっ、押すなよ!翔太」

入口でギャアギャアと騒ぎ出す二人

「……騒がしい」

「でも、それでこそあの二人だから」

そういって、おれは微笑ましい気持ちになって笑った。

グレイ、さっきなにを言おうとしたんだろう?

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