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短篇集
01


今日も憂鬱な時間がやって来てしまった。
私の苦手な英語の時間。
しかもテストの返却ときたもんだ。
対して、隣の席のアイツはというと――

嬉しそうにニヤニヤしながら、今か今かと先生が入室して来るのを待っている。


「こら、政宗。ニヤニヤし過ぎ。
いくら英語が得意だからって、あからさまに楽しそうにしないでよね」

(当てつけか?コノヤロー)

机上にもたれ掛かりながら、幼なじみである政宗に文句を垂れる。
私の両親と政宗の両親はとても仲が良く、所謂家族ぐるみの付き合いをしている仲。
それに加え高校に入学してからはクラスメート、これが腐れ縁と言うやつか。

「Ha!!いーじゃねーか、それぐらい。
俺が英語が得意なのは事実だろうが。今更何だよ」

そう。政宗の英語への興味は凄い。
他の教科はてんで良くないのに英語だ・け・は、学年内でもトップクラス。
あれだ、好きな教科だけで生き延びてるような典型みたいな奴なのだコイツは。

恨めしげに彼を見ていると、政宗が私の顔を見て眉をひそめた。

「…って…それよりも雪里、お前顔色悪りぃな。そんなにやべぇのかよ。英語、ちゃんと勉強しなかったのか?」
「え…と、…他の教科はちゃんとテストの一ヶ月前から勉強してたよ」

――私、相変わらずごまかしが下手過ぎる…

後ろめたさが隠しきれない。あんなに次回は頑張るからと宣言していたから。
目がキョロキョロ泳ぐ。

「おい、英語はどうした。英語は」
「…前日ぐらいから…かな?」
「前日って…そりゃないだろ」

返す言葉もない。

「それでなくとも英語苦手だって喚いてただろうが。ただでさえ難しいのに『前日から』なんて捨ててるとしか思えねぇ。
どうしたんだよ」
「…う〜ん…だって苦手なんだもん」
「…それは知ってる」
「いくら勉強しても頭に入らないしさ。途中で投げ出したくなるの。しょうがない。あはっ!」
「……しょうがない、だと?」

思いっきり顔をしかめている政宗。
あれ?不味い事でも言ったかな・・・

「あれ?どした?政宗…」
「You see?分かってるのか?お前が英語の再テスト受ける度に勉強見てくれないかって先生に言われる俺の身にもなれ!!」
「っごめんなさい!!」
「OK.そうだ。
分かればいいんだ。分かれば」

ビックリした〜。
どうやら彼の琴線に触れたらしい。
私が悪いせいで政宗にも迷惑かけてたのか、知らなかった。勉強、ね…。政宗の為にも頑張らなきゃいけないな。

しかし、はたと気付く、
(でも、政宗は私と一緒に勉強するのそんなに嫌なわけ?)

心が少し痛んだのと同時に、英語担当の先生がガラガラと教室の扉を開いて入室してきた。
その腕に抱えているのはやはり先日行った試験の答案用紙の束とみた。

「あぁ、い、胃が痛い〜〜っ」
「そんなになるなら始めから勉強しろよな」
「うわっ、耳も痛い〜〜」
「……ホントにお前って奴は……」



――起立!礼!お願いします!


学級委員かつ生徒会長である元就の凛とした声が響く。この優等生め。


――あぁ、始まるなよ!!

私の想いは無視して、無情にも答案の配布は始まってしまった。


  



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