01
ジリリリリリ…、
『うっせー…』
部屋中に鳴り響くアラーム音に悪態をつきながら、眠気に勝てず再び布団にもぐり込んで目を閉じる。
「…にゃーん」
『んっ…、れお…?』
不意に、お腹のあたりに微かな重みを感じて布団からひょっこり顔だけ出すと、
「にゃあ」
『…あー、れおん。おはよ』
俺を起こそうと必死でにゃあにゃあと鳴く俺の愛猫れおん。
(ちなみに男の子、そんでもってアメリカンショートヘア)
『…つーか、ねむっ』
愛しのれおんを抱き上げて一瞬眠気は覚めたものの、しばらくするとやはりひどい睡魔に襲われる。
『ふぁー…』
再びうとうととし始めた刹那、れおんが俺の頬をぺろぺろと舐め始めた。
多分俺を起こそうとしてくれてるんだと思う。
(やばーい、れおんくんてばいい子過ぎて泣けてくる)
ようやく眠気が飛んだところでベッドから起き上がり、れおんを抱き上げてリビングへと向かう。
『あれー?今日は兄さんいないんだ』
リビングに着いて軽く辺りを見回せば、いつものように新聞を読みながら朝食を取る兄さんの姿がどこにもなくて。
代わりにテーブルの上には俺の朝食と置き手紙。
綺麗な字で、
「先に行くから朝ご飯温めて食べてね。それと、れおんにご飯あげといて。」
と書いてある。
とりあえず、兄さんがつくってくれた朝食を手に取り電子レンジに放り込む。
その次にれおん専用のお皿に適当な量のキャットフードを注ぎ込んだ。
『おーい。れおん、おいでー』
キャットフードを手に持ってれおんを呼べば、首輪についた鈴をちりんちりんと鳴らしながらこちらに寄ってくる。
『あい、どーぞ』
「みゃー」
『よしよし』
美味しそうにご飯を食べる愛猫の頭をなでて、その可愛さに見惚れてしばらくの間眺めていると、不意に鳴ったちーんという音に意識を引き戻される。
あぁ、電子レンジかと思い出し、もう一度れおんの頭を軽くなでてからキッチンに向かった。
『いただきます』
やっぱりひとりでご飯とは寂しいもんだなーなんて思いつつ牛乳に手を伸ばす。
ちなみに今日の朝ご飯はクロワッサンのサンドイッチ、それに牛乳。
クロワッサンの間にお肉やら野菜やらをはさめるだけのお手軽料理なのだ。
でもおいしいんだこれが。
(ちなみに牛乳は毎朝。和食だろうが何だろうが朝は牛乳)
あとは顔洗って歯みがきして制服着てー、そんな風に次にやるべきことを頭の中で整理しながらクロワッサンに手をつけた。
『さて、行くかー』
独り言をつぶやきながらネクタイをきっちりと締めて、鞄を手に取り玄関へれっつごー。
靴を履いて目の前の扉を開ける。
『行ってきまーす』
れおん以外は誰もいなくなってしまった家に小さくそうつぶやき、がちゃっと音をたてて鍵を締める。
澄み切った朝の空気を大きく吸い込むと、身体中が新鮮な空気で満たされているような気がして心地よかった。
雲ひとつなく晴れ渡る空が、俺の背中を押す。
人通りがほとんどない道をひとりで歩くと、なんとなく寂しさがこみあげてくる。
でも、
これからテニス部の朝練で侑士先輩の姿が見れるんだなーなんて考えれば、自然と顔がほころんだ。
それくらい、今の俺は侑士先輩で満たされているんだなって改めて実感した、そんな朝。
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