星屑の在り方
(hollow/アンリ)勇者の名前
「誰が悪だ。真の悪は誰だ。真の悪とはなんだ。
誰が悪と決めた。なんで自分が悪なのか」
「────」
「復讐者」
「────」
「この世すべての悪」
「────」
「誰が俺をこんな風にしろって頼んだよ。
俺だって、望んで成った訳じゃねーんだ」
「アンリ……」
「うん、分かってるぜザビ子。俺はそんなモノの被りモノだって知ってる。
俺は所詮、張りぼての出来損ないで、ソレの名を冠しているだけだ。
ま、それでも俺が“この世全ての悪”であることには変わりないけどな」
「……」
「だいじょぶだーって! つーか、な〜んでザビ子がそんな泣きそうな顔してんだよ、引くわー」
「っ…………アンリ、ごめん……私……!」
「良いんだよ、オレはこれで。これがオレにはお誂え向きさ。
さて、行きますかー。あ〜……ダリィな、これ昇ってくの疲れねェかー?」
「…………今まで夢を見させてくれて、ありがとう、アンリ……」
「……。やっぱマスターは笑ってる方が良いぜ。
やっぱりちょっと悔しいけどよォ、ザビ子の隣に居るべきなのは、オレじゃなくて俺の方だわ────此処は潔く身を引いてやるよ、今回だけだぜ?
じゃあなザビ子、妙な縁があったらまた違う世界でまた逢おうじゃねーか」
◇ ◇ ◇
「────お別れは済みましたか、ザビ子」
「……お別れもなにも、彼と私は同じ存在だから、またどこかで逢えるんだよ。
これから先ずっと一緒だからお別れなんて必要ないんだよ、カレン。
世知辛い世界ではあるけど、あの子はそんな世界に求められて産まれた子だから……だから……きっと、また、いつか巡り逢える」
「そうですか……アレは世界に望まれ、そうであるが為に存在した反英雄……故に、どこか歪ながらも美しい生き様の彼を“器”として産まれたのでしょう……。
最後に愛されていたのですね、それが例え憐憫の情からきたものであっても、最後にそれが本物になればよいのです」
「うん………………ありがとうカレン。有り難う、私を彼のマスターにしてくれて……」
其、勇ましき者
『彼』は『誰』でもない。
『ヒト』ならざる『人間』である。
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