星屑の煌めき
(復活/骸)水面に連鎖する雪の残影
「ザビ子、今日は何の日か存じてますか?」
「えっ、なにその眩しい笑顔……怖いんだけど、なに、どったの骸」
「いえ、今日は何の日かザビ子は存じてますか?」
「やだ骸が『今日は何の日bot』になった……たしけて誰か」
「今日は皆、用事があって出払っています」
「今日に限ってなんでだよ畜生。誰がコレの相手すると、待て、出掛けるように仕向けたな貴様さては」
「さて? 僕はたいしてなにもいってはいませんが?」
「お手上げポーズ取んなよ腹立つにゃー!! こっちがお手上げだわ畜生めが!!」
「さて────ザビ子、今日は何の日、ですか?」
「……ふんどしの日」
「そう来ると思ってましたよ、ええ、素直じゃない貴女の事です、小ボケを挟んでくると思ってました」
「凄い自然な流れで私の体を抱き寄せて腰に手を這わせるのはやめちくれ〜」
「この距離なら貴女はジョークを挟めない、と思いまして」
「…………」
「クフフ、その赤い顔が何よりの返答です、ではザビ子、今一度だけ問います、『今日は何の日』ですか?」
「…………1576年(天正4年1月15日)丹波国黒井城を包囲していた明智光秀軍が、波多野秀治兄弟の裏切りに遭い敗退。(第一次黒井城の戦い)」
「────凄いですね、これだけの距離にいながらも頑として答えない懸命さはいじらしいを通り越して感嘆に値します」
「やめろぉ、お前の鼻の先を私の鼻の先にくっつけるなァ〜」
「強攻策です。あまりにも目に余るのでこうでもしないと貴女は屈しないと思うのですが」
「くっこの、少しばかり自分の顔が整ってるからといって好き放題やりおってからに貴様……でも確かにお前のその綺麗な顔がとても弱点な私は抗う為にボケるんだけども。
待て待て、少し離れてくれ骸、私ボディータッチあんま苦手だから心に決めた人以外は触らせないって話したよな?」
「……。そうでしたっけ」
「強制命令発動したろかー!? その身に刻む服従印暴走させて暴発させたろかー!?」
「おっと、それは困りますね。照れ隠しはもう少しお淑やかで可愛らしくお願いしますよザビ子?」
「それでも私の顎に指を這わせるのはやめないのね。あんた死して尚伊達男だよ」
「まあこれはその……ザビ子が、抵抗しないでいるから少しばかり気が大きくなってると言いますか……」
「? 抵抗はしないけど? だって骸の顔大好きだし、骸の事好きだしな、私」
「……」
「よっしゃ私の突然のデレで怯んだ今がチャンス! 脱出成功ー!!」
「あっ、ちょ、それ狡くないですかザビ子!?」
「ふふー、これも策略です〜、これぞかの有名なガコロウトンの刑!」
「……正しくは『駆虎呑狼の計』ですよ、使用する意味も違いますし」
「なんと。それは知らなかった、横○三国志読み直して来るね。じゃっ!!」
「させません」
「ぐお!! 凄い、漫画でしか見たことないドアに向かっての壁ドン!! 凄い漫画みたいな事してるね骸!! こう、相手がドアに向かって背を向けた所にドアを開けさせないように手でドアを押さえつける構図!?
凄いね、漫画みたいだ!! えっ、やばい、漫画みたいな事に私なってるの? やばい!」
「ザビ子の語彙力があるんだかないんだか分からない所に申し訳ないんですけど、何勝手に逃げようとしてるんですか貴女は」
「親の顔より見た台詞だそれ!!」
「…………。いや、貴女はこうしてはぐらかすんです、知ってますよ」
「バレた〜? じゃあお互い手の内晒したトコだしお日様明るいし今日のところはお開きに────」
「────なると思ってるんですか」
「ならないって分かってた!! やだー凄い自然な流れで私の体を横抱きにしてベッドに置くのやめてー!!」
「こうでもしないと、ザビ子は全ての空気をブチ壊すじゃないですか」
「そして当然のように馬乗りになって私の両手を拘束した上で覆い被さるの止めてー、お前それ顔が良いから許される行為だかんなー?!」
「そうなんですか。じゃあこの先の事も許されますか……?」
「おずっ、首……撫でるのやめて、くんない……?」
「貴女が素直に最初の問いに答えていればこうはなりませんでしたよザビ子」
「えっ、じゃあ今からでも答えるんでこの状況から私解放してくれない?」
「ここまで人の事煽っておいてソレはないんじゃないですか?」
「煽ってない煽ってない、焚き付けてもないから退いて退いてー。うおおお、暴れて両手脱出成功したぞー!!
今日はバレンタインですねぇ、残念ながら最近は任務が忙しくて買い物行ってないんですわぁ!! だから骸が期待してるチョコはないですー!!」
「おや? それは残念ですね……ですがここにちゃんとあるので結構ですよ?」
「は? っ……まっかーさ、やめて私が人生で一番聞きたくない言葉ワースト5に入ってる言葉だけは言わないであんた!!」
「……ふぉんほぉーにすあおゃやいでふね」
「ふう、私の両手で物理的に骸の口を塞ぐ事によってその禁止ワードは免れたわ……危ないところだった、正義は必ず最後に勝つんだ」
「────……」
「ひゃっ!! ちょ、なにすんの骸!! 今ちょ、あんた、今私の手の平舐め、たでしょ……!!??」
「そうしないと、口を塞がれたままになりそうだったので、つい」
「やだもうあんたって子はどうしてさっきから親の顔より見た展開みたいな事をサラッとしてんだよ〜、笑いそうになる」
「ザビ子、自分の貞操の危機だって分かってますか?」
「馬鹿ね、分かった上で茶化してんじゃない。私がこういうムード苦手なの知ってんでしょぉが」
「────ハァ……」
「は? なんで今心底呆れたみたいな顔して溜息ついたのあんた、こちとらあんたによって貞操の危機真っ最中な体勢なんだけど?!」
「いえ。ここまできてそういう事にならないのはザビ子だけですよ本当に」
「うわー。そういう事言うって事はあんたこういう事やって来たって自供したも同然なんですけど。
概念壊れてんのはあんたの方じゃわ、私は貞淑なだけだっつの、自分の身は自分で守ってるだけなのに」
「敢えて多くは語りませんけれど、弁明させてもらいたいのですが」
「聞いてもいいけど私をこの体制から解放したらね」
「あ、じゃあ結構ですこのまま事を致しますので」
「すんなすんな、人の首筋に顔を埋めて息を吐くな、やめろやめろ、そういう空気になってないじゃん今ー!!」
「クフフ、目の前にあるモノを何十年お預け食らっていたと思っているんですか、ザビ子?」
「……え?」
「もう十数年前から貴女の事を慕っていますのに、貴女はどうしてか靡きもしない、剰えこうして誰もつけずに男の部屋に単身で乗り込んでくる始末。
僕の理性が壊れない方が、おかしくはありませんか、この場合?」
「────そんなん知らんがなーー!! 勝手に好かれて勝手に片想われてもこちとら鈍感力EXなんじゃボケーッ!!
マジで、腹をまさぐる手の動き気持ち悪いんでやめ、おごっ、テメなに服の中に手ぇ突っ込みやがっ、ばぁ!!??」
「……嬌声ぐらい、可愛いモノをあげて欲しいんですけど」
「出来るかーーーー!!!!」
優しくて、愚かなほどに優しい気持ち。
まださせないわ、その覚悟が出来るまで。
まだ出来ません、その覚悟が整うまでは。
02/14 HappyValentin!!
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