星屑の煌めき
(復活/骸)流される幻想の塵芥
「待って無理、寒い」
「十二月並の気温、だそうです」
「ひえええ、さっっっっむ!!!! やめてよぉザビ子まだ冬服出してないしそもそもこの制服頭おかしいぐらい寒いんだけどぉ!?」
「まあ、制服というものは往々にしてそういう物ですよザビ子、諦めて着込んで下さい」
「テッメ、もとはと言やぁお前が黒曜の制服イカすからコレで行きましょう! とかヌかしやがった所為だろ!
それに付き合う、わたし、とても、寒々しい!!!!
てゆーか、M・Mもよくコレ着てるよな……なんで文句……いやなんでもないや、金だよなザビ子知ってる〜」
「ザビ子、ここにカーディガンがあります、羽織りますか?」
「えっ、うっそ、骸様にしてはやるじゃん気が利くじゃん羽織る羽織るーもうクソ寒くて下痢しそうだわー」
「……レディとしてどうでしょうね、今のあなたの発言は」
「んだよ、人間生きとし生ける動物なんだからそこに品性も知性も悪も善も愛も夢もないよー?
生きる為に死んで、死ぬ為に生まれるんだからわたしたちは。
カーディガンありがとう骸様、やっとこさあったまれるにゃーん」
「あなたは時々人間の本質を捉えているようですね、ザビ子」
「そんな大仰なもんじゃないケドさー。んぶぶ、一枚着ても寒いな……ていうか、骸様、お前薄着な割に寒がってないね。寒くないの?」
「僕はもともと、寒さにも暑さにも強いですからね」
「ほぉん。そうなん? まあ羨ましい事だがねェ。それでも、その唇は紫色になってるから、やっぱ寒いんでしょ?」
「────っ、」
「ほらやっぱりほっぺたちめたいじゃんけ。お前強がるのも勝手だけどさ、わたし等の一応はボスって自覚してくれる?
お前が倒れられたら困るんだよ、あったまりなさいちゃんと、カーディガン、お前にこそ必要なんじゃにゃあか」
「……いえ、僕の事は大丈夫なので気にかけないでおいて下さい。
僕なんかよりあなたの方が体を冷やしては駄目だ、女性は寒さに弱いんですから、将来に響きますよ」
「わたしの将来こそ気にかける必要性ないっつっの。
えぇい、話が平行線だな、いい、待ってろ、今しょうが紅茶淹れてくるから、刮目してステイして!」
◇ ◇ ◇
「────わりと思っていたんですけど、あなたは言動の割には気配りというか目端が利くというか」
「んだとゴラ誰が粗野で粗雑でガサツだって?」
「なにもそこまで言ってないです。そこまで言ってるのは単にザビ子が普段からそう自身の事を決めつけているからなのでは?」
「っ……。いや待てそれも遠回しにわたし馬鹿にされてるじゃんけよ、上等じゃい表出ぃ骸様、ギッタンギッタンにしてやる」
「今日日21世紀にそんな死語が聞けるとは。そのまま放っとくとチョベリバとか言い出しそうですね」
「ぷっ、流石にそこまでは言わないよ〜。流石のわたしもそこまで流行遡れない、うむ、時代に取り残されし者の宿命也やと。
あ、そういや骸様、しょうが紅茶どお? お砂糖足らる?」
「いえ、十分な甘味は得られています。有り難う御座いますザビ子、とても美味しいですよ」
「せかせか。そんならいかったずら。骸様こういうのあんま飲まなさそうだったしわたしもちょい不安だったんだー。
おくちに合えばそれは幸いって感じ。美味しいのなら僥倖僥倖、善也善哉。
うむ、しかしてしょうが紅茶で暖を取れたとしてもあんまあったかそうにならないのが世の常よね。寒いわ」
「ザビ子は生来暖かい所に居ましたからね、この様な寒さにそもそも適していないのでしょう」
「あ、そういえばわたしの故郷は寒くなることあんま無かったな、言われてみれば。
ふーむ、その口振り、骸様は寒い所生まれ?」
「いえ? 僕はどこでいつ生まれたのか、もう忘れてしまいましたからね」
「そうなん。それなら骸様のソレは究極の痩せ我慢ってやつなのでわ?」
「────あまり否定は出来ないのが辛いですね。クフフ、敢えてノーコメントでいきましょう」
「やーねー。痩せ我慢なんてするだけ心の贅肉だよー。そんなの心が真っ当に育った“人間”がするものなんだからー。
わたしと骸様、ひいては黒曜メンバーがやるべきもんじゃないニャア?」
「…………」
「骸様無心で紅茶飲むのやめーい」
「ぶふ、紅茶を飲んでる人の後頭部を叩くのはどうかと思いますが」
「ザビ子の話無視する骸様が悪かんべ今のは。わたしは無視されるのと嘘つかれるのが一番嫌いなんだって言ったべさ〜」
「契約時にそうありましたっけ?」
「こいつ、都合の悪い事忘れるタイプかな?」
「僕はいつも未来を見て生きているもので」
「おのれ。もういいモン、この件は流してあげる優しいからわたし。
破格の優しさ、閉店セールもかくやという優しさを見せつけるわたしであった。
っ、ぷぁい。しょうが紅茶も飲み干してしもうた。而して依然としてさむっ────クシュ!!」
「……あの、もしかしなくても今のは、クシャミ、ですかザビ子?」
「もしかしなくてもクシャミだろまったく。わたしも自覚あるよ、似つかわしくないクシャミだもんの、分かってらいや!」
「いえ。大変可愛らしく僕としてはギャップがあって大変グッドですが?」
「変態かよ。もうやだー、趣味趣向が玄人過ぎてザビ子理解出来ない怖い」
「なんですか、一応は褒めたつもりなのですか?」
「褒め方下手くそかよ骸様。もっとさ。こう、なんかあると思────ックシ!!」
「……ザビ子。寒いのですか?」
「ぶぅ、寒くてクシャミが出るのはおかしいと思う。なんで寒いぐらいでクシャミ出るの?」
「冷気が三叉神経を通して鼻から刺激してクシャミになるんですよ。
詳しくは省きますが、そういう仕組みになってるんです、諦めて寒いと認めてください」
「ぶうぶう。────寒いです、しょうが紅茶飲んでもちっともあったまらないです」
「よい子ですねザビ子、特別に頭を撫でてあげます」
「雑だな褒め方!!?? しかし褒められるのは大好きだからとく許す、存分に撫でるがよい、愛を以ってナデナデするのだ」
「はい、僕はあなたにはあまりある愛を以って接しているつもりですがね」
「にゃんですと? それは初耳だわ、どこ情報よそれ〜どこ情報〜」
「さて? どこでしょうね?」
「底意地の悪い……。分かってやってる確信犯ずらー。嫌味な男じゃて」
「そんな事よりザビ子、もう寒くはなくなりましたか?」
「なんでかね、依然として寒いよ」
「そうですか。先程ザビ子がしょうが紅茶を作っている時にストールを見つけたので、羽織りますか?」
「えっ、そんな素敵アイテムあったのここに。羽織る羽織る〜寒過ぎ謙信って感じ」
「それは良かった。僕の努力が無駄ではなかったという事だ」
「ていうか骸様の方が寒そうだけど。顔色悪いし血の気の引いた顔っていうか、生気のないっていうか」
「クフフ、僕は元来こういう顔色ですので、お気にならさず?」
「っ、たく。素直じゃないねウチのボスは────!!」
「!? ちょ、ザビ子……!?」
「何度も繰り返すケド、わたし達にとって、お前は大事なボスなんだからその辺自覚しな、熱でも出て倒れられたら計画おじゃんになるっしょ!?
良いから黙って暖を取る!! フェミ気取るのは構わないけど自分を大事に出来ない人間に、誰かを助ける権利なんてないんだから!!」
「────……ザビ子……すみません、気を使ったつもりはなかったんですけれど、あなたにはそれが枷になる、と言うんですね。
申し訳ないですザビ子。僕も認識を改めます、以後は気をつけたいと思います」
「ふむふむ。分かれば宜しい。このストールはおっきめのだし、二人分ぐらいはあるし、この大きさなら二人ぐらい包めるからな。
まあ、ちょいくっつく必要あるけど仕方ないから我慢してね骸様、わたしを湯たんぽにしてもいいんだぜよ」
「クフフ、ザビ子を湯たんぽにするには少しばかり体温が低すぎるのがネックですね」
「しまったにゃ。使えねぇなわたし! 低体温症がアダとなった!」
「はい。ですので、あなたで暖を取る時は、その時はまたこの様に寄り添っても良いですか、ザビ子?」
「そうしてくれ。その時はまたこうしてストールで包まって暖取り合おうなー」
寄り添いながら詠うウソ
どうせ、わたしを置いて行く癖に。
優しい嘘でわたしを騙すんだね、お前は。
◆ ◆ ◆
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