星屑の煌めき
(Fate/士郎)睡に就き微睡みに視る彼の御霊
「へぅー、喉が痛い〜」
「そりゃ風邪を引いたらそうなるでしょう、普通は」
「りぃぃぃぃん、その珍しい物を見たみたいな顔でワタシを見ないでくれぇぇぇぇ」
「見事に声がいつものザビ子の声じゃないわね、あの、アレみたい、青くて毛むくじゃらのクッキーを貪り食らうモンスターみたい」
「ねえそれ普通に遠回しに言ってる風だけど普通にストレートに名指しだよねそれ……へぅ」
「まあそうなるわね。ふふ、弱ってるザビ子も新鮮でイイものね」
「本調子になったら凛、覚悟しといてぇ……」
「はいはい覚悟しとくわ精々早く治す事ね。蜂蜜湯作ったから飲みなさい、ある程度咳を止められるわ」
「ぇ、なにその優しさ……ザビ子ときめいちゃう恋に落ちる音がしちゃう……」
「恋に落ちる前に地獄に落として欲しいのかしら。まあ無駄口叩けるだけ元気って事ね。
士郎にお粥を作らせたから、持ってきたら食べて薬を飲んで暖かくして大人しく寝てるのよ」
「げえ、ワタシお粥嫌い芸人なんだけど!!」
「つべこべ言わず食べなさい、消化に良い物から食べるの、今のアンタは万全じゃないんだから。
桜も、林檎を買ってくるって言ってたから、その内摺ったのを持ってくるわ、それを励みにお粥食べなさい、アンタ林檎好きでしょ?」
「へぅ、古くてボケた林檎は好きです。ボケてスッカスカの奴が好きです」
「なんて家計に優しい娘なのアンタは……ってと、なにか欲しい物はある?」
「水が欲しいです、へぅー」
「りょーかい、じゃあウォーターピッチャー持って来るわね。用意に時間かかるから、ザビ子、大人しく寝てなさい」
「そんな子供じゃないんだから」
◇ ◇ ◇
「ザビ子先輩、入っても大丈夫ですか?」
「……桜? どぞー」
「失礼します。ザビ子先輩、林檎を摺ってきたので、食べてください」
「ありがとう桜、わざわざ林檎買いに行って来てくれたんだしょぉ、ご足労かけてすまんのぉ 、へぅ」
「そんな、大した事じゃありませんよっ。ザビ子先輩が林檎がお好きと聞いたので、なにかわたしにも出来る事がないかと……」
「いじらしい愛しいなぁもぉぉ、桜ありがとうホントありがとう。
そんな桜にとっておきのお菓子が隠してある場所教えてあげる……居間に戸棚があるじゃん。下から二番目の左の扉の一番奥にお高い芋ようかんがあるのじゃ……へぅー」
「ちょ、ザビ子先輩大丈夫ですか、そんな長ゼリフノンブレスで言ったら喉にしわ寄せが……」
「────────っっっっ」
「ああ! ザビ子せんぱぁい! 死なないでくださぁい!」
「っ、死、なっ、な、い……っ! り、んご、食……べた、い……っ!」
「食欲魔神ですねザビ子先輩……あの、とりあえずお水持ってきますね、林檎はここに置いておきますので、お好きな時に食べてください」
「うん、ありがとう桜、いただきまーす」
「お布団にこぼさないで下さいね、ザビ子先輩」
「そんな子供じゃないんだから」
◇ ◇ ◇
「ザビ子。起きてるか?」
「……起きてる起きてる」
「いやおもいっきり寝起きだろそれ。悪いな、起こしちまったか」
「んー。お腹空いたから起きるよぉ、士郎、お粥出来たの?」
「ホントに声がいつものザビ子と違うな……その、ツラいか?」
「んーん、みんながこうして心配してくれるから、ちょい嬉しかったりする。代わりばんこでお見舞いにきてくれるの、嬉しい、大丈夫」
「そっか。声は枯れてるけど、元気そうだな。熱は計ったのか?」
「凛が来る前に計ったので、8度9分……だったかな」
「めちゃくちゃ熱高いじゃねーかおいザビ子それ大丈夫じゃねーだろ明らかに!!」
「士郎くんうっさいですわー、病人の部屋で騒ぐのはよくなーい、へぅ」
「あ、悪い……じゃなくて、明らか病院行くべきだろその熱は……!」
「士郎が静かに騒ぐ奇妙な技を覚えた……んー、士郎、その引き出し……上から二番目の右の引き出しに入ってる、青い蓋の小瓶。取って」
「…………えぇと、これか」
「ん。ありがと。あとついでにその水差しでグラスに水、注いでワタシに渡してくれる?」
「はいよ。それ、市販薬じゃないよな、お前が調合したのか?」
「へぅー、我が家に伝わりし万能薬とでも思って……水ありがと。っん」
「ふーん、なんか明らかに毒っぽい見た目だけど薬なのか?」
「いや、劇薬よ。これを飲んだら仮死状態になるとかなんとか……へぅ」
「ヤバいじゃないかそんなん飲んで良い、ああもう飲んだー!!??」
「ふぅ、大丈夫大丈夫……仮死、状態……になる、だけだし。
有名なシェイクスピアに、もある、でしょ……コレ、はソレに、近からず、とも、劣らず……簡単、に説明、すると『完全な絶対安静』だと、思ってくれ、たら……へぅー」
「────つまり、コールドスリープみたいなものか……?」
「そぅ……因みにコレを起こすには外的要因が必要だから六時間経ったら士郎、起こしに来てね。生半には起きないから」
「え、じゃあどうやって起こせば」
「そこはほれ、どこぞの森の眠り姫宜しく」
「ぶふぉ────!!??」
「じゃあ、しろお、あとは、まかしたよ……おや、……す、み…………」
「ちょ、おいまだ了承して────マジでか……!!??」
早く起こしてねワタシの王子。
「んんー、グッドモーニング! おや、士郎おはヨーソロー!」
「…………おう、お早う……」
「っあー、その顔見る限りマジで眠り姫の起こし方してくれたの……? あれ実は嘘での、六時間経てば自動的に復旧するようになってるのよこの体は……」
「っっ、お前俺を謀ったのか!?」
「ごめーん! でもマジにやるとは思わなかったアリガトご馳走様ー!!!!」
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