星屑の煌めき




(銀魂/真選組)斯くも弱き心情の発露
斯くも儚き生命の流れにて→斯くも尊き流星のさざめき→斯くも猛き女神の微笑み・続



「おいザビ子」

「沖田くん、ソレは屯所内ではNGワードだぞ。俺は君の指示に従い佳唯カ イと名乗ってるんだが」

「へぇへぇ、そうだったねェ。どうでィ、半年振りにあった同僚との再会は?」

「…………見てたのかお前」

「見たくて見た訳じゃねェよ、たまたま見廻りの途中で見掛けただけでさァ。見知ったチャイナ娘と見知った頑固者が衝突してる現場をな」

「頑固者って、わたしそんな」

「頑固だろうが。帰りたいって思ってるくせに、許してやるって思ってるくせに、そんな考えを全部殺して私情を殺して今の偽物自 分を、必死に守ってる。
そんなへんちきな奴を頑固者って言わねぇでどうすんでェ。卑屈者か?」

「…………われの読みゃぁ甘い、わたしゃぁこれっぽっちもいにたいって、許しちゃるって思うてねぇぞ。
許すって、われ、死物狂いで働いて稼いだ生活費溶かされた事ねぇじゃろ、なにも知らねぇ外野がしゃしゃるんじゃねぇ。
今に始まった事じゃねぇ、いっぺんだけじゃねぇ、もうなんべんもなんべんも繰り返してきたんだんじゃ。
その度しゃぁないまた働いていくしかありゃぁせん、また稼いでおりゃぁその内やめるじゃろうって、思うとったんじゃ。
が、一向にその気配がしねぇ。いっちゃんケツの最後に堪忍袋の緒が切れるってなぁ、そがぁなコトじゃ。
もうアイツに愛想が尽きた。アイツに尽くしょぉった自分を殺したい。じゃけぇわたしゃぁわたしを殺す。
もうあの家にわたしゃぁいないし、わたしゃぁこの世に存在しなぃんじゃ。
それでええ、それだけの話じゃ、誰も困りゃしねぇ、誰にも迷惑かけてねぇ」

「────」

「夕飯の支度に遅れる。じゃあな沖田くん、今日の夕飯はカレーな」

「甘口で頼まぁ。土方さんのだけタバスコとワサビとカラし入りで」

「んな事したらわたし解雇だし切腹モノだからな」

「大丈夫大丈夫、佳唯なら尻連打で終わる筈でさァ」

「ケツしばかれるのも痛いから却下。そんな事言ってると沖田くんいつか給料貰えなくなっちゃうぞー」




◇ ◇ ◇





「土方さんもあんだけお小姓付けるのに反対してたわりにゃあ、随分と寛大なったもんでさァ」

「なにが言いてぇんだおめーは」

「別にー、佳唯もすっかりお小姓姿が板についたなぁて思っただけでさァ。茶坊主が欲しがってたわりには書類整理も任してるとか、おっかしーなー?
ちゃんとした先輩小姓にはなんもやらせねぇで、茶坊主として迎え入れた小姓には書類整理任せるんですねェ。
見なせぇ土方さん、テツも草葉の陰で泣いてらァ」

「テツはまだ生きてるだろ、勝手に殺してやるなよ。
適材適所ってのがあんだよ、人間にゃあ。テツは向かねえだけだ、それ以外の大事な仕事任してんだろアイツには」

「そーですかぃ、そいつぁ失礼しやしたぜ。てっきり勘違いって奴だ」

「うっかりだろそこは。まあ良い、総悟、お前の明日の見廻り佳唯も連れて行け」

「はいよ」




◇ ◇ ◇





「えー、なんで俺も見廻り行かなきゃならんのですか副長ー」

「上官命令だ、黙って従え」

「ぶーぶー、横暴だー。俺腕っ節自慢じゃないけどびっくり非力ですかんね、あんま期待しないでくださいね。
────そんな沖田くんは今どこに居るんです、副長?」

「今ちょうどパトカーに乗り込んでるな」

「げぇ、しかも助手席に座ったって事は俺が運転って事ですか!!?? 勘弁してくださいよ俺ペーパードライバーっすよぉ?!
走る棺桶ですよ、良いのか沖田くん、蛇行運転しちゃうんだぞ俺!!」

「でーじょーぶでーじょーぶ、良いからとっとと乗り込め佳唯ィ。
サクッと行ってサクッと終わらせようぜィ。俺暑いからアイス食いたい」

「ま、マジでか。…………えー、シートベルトおっけ、鍵刺す、回すエンジンかかる、前後左右見渡す、ハンドル握る、アクセル…………を踏、む」

「そんじゃ土方さん行ってきまさァ、こんなんだから遅れてもサボってるってワケじゃあねぇすからー」

「…………聞いた以上に、思ってた以上にペーパードライバーだったのか、佳唯────」




◇ ◇ ◇





「どうでィ、そろそろ慣れたかィ、運転にも」

「…………」

「前傾姿勢過ぎねぇか、それだと逆に前見えづらくねぇか?」

「…………」

「おーい、ザビ子ー」

「…………おきたくん」

「お、やっと反応した」

「わたし、うんてん、してる?」

「片言になるぐらいど緊張してんなぁ、もちっと肩の力抜いてリラックスすりゃ肩凝らずに済むぜェても、無茶な話か」

「わたし、うんてん、こわい!」

「お前って追い詰められると方言出る癖あったが、最上級の場合日本語下手になるんだな」

「ひと、じゃま、はねる」

「土方さん以外は撥ねたら死ぬからやめといた方がいいぜィ、アレなら撥ねても死なねーし、もし仮に死んだとしたら俺がラッキーでさァ」

「ふくちょう、しぬ、だめ」

「あ、お前今赤信号無視したぞ、パトカーなんだからルールぐらい守れやァ」

「おれ、るーる、おれ、ちつじょ」

「とりあえず初心者マーク貼っといて良かったな、多少甘く見てもらえる筈でさァ」

「────っ!!」

「? どうしたザビ子────」

「…………」

「……あー。ナルホド。────旦那ぁ、昼間っからプラプラと良いご身分ですねェ」

「沖田テメっ……!!」

「んぁ? なんだと税金泥棒、俺達の納めた血税返しやがれコノヤロー」

「旦那税金払ってるんですかィ?」

「沖田くん今日もいい天気だな、パトロール日和だ、俺はこの辺で…………んぉ?」

「!」

「あり、運転してるの多串くんじゃねーのか、初めて見る顔だな……」

「最近ウチに来た奴でねェ、佳唯ってんです」

「ふうん、……ん? なんか見た事あるような………… 」

「どうも。佳唯です。初めまして。それじゃあ失礼します」

「待て待て、まだ赤信号でさァ。ここで突っ込んで行ったら粉微塵になるぜィ。しばらく旦那で時間潰そうじゃねぇか」

「暇つぶしの道具か俺は。まあ、俺もお前らで暇潰しゃあいいか。どーせ今暇してるからよ」

「……暇、なんですか、お仕事の……方、は?」

「んぁー? 依頼がねーから暇も暇よォ。あってもちんまい報酬だしよ、金ないから大家の婆ぁ激おこも激おこ。
んで、面倒くせーから散歩がてら暇潰してたら、おめーらに声かけられた訳よ」

「ほーぅ、そら大層なご身分ですねェ……なァ、佳唯? おめーもそう思うだろォ?」

「そうですね、雇い主としての最低限の責務を果たさないとは人としてあるまじき行為だと俺は思いますね。従業員三人が可哀想だ」

「おまっ、言うじゃねぇか……初対面でそこまでづけづけ物申すか普通……あ、いや税金泥棒集団だからなマトモな人間性ねぇか」

「っマトモな人間性をアンタにだけは語られたくない!! 人を雇う者として最低な事をやったお前に、そんな事言われたくない!!
給料まともに払った事もないくせに!! 人が稼いだ生活費ギャンブルに回すくせに!!
そんな、最低なアンタに、アンタにだけは言われる憶えはないし言う資格もない!!!!」

「────やけに食ってかかるなお前。…………? なんで初めてあったのにウチの金銭事情詳しいんだ……?」

「沖田くん。行こう、無駄口叩いてる暇ないんだ、青信号になったしパトロールに戻ろう」

「そいじゃあ旦那、俺達はここいらで失礼しやーす」

「お、おい待てお前────────……」





◇ ◇  







「────ごめん沖田くん、急に声荒げてびっくりしたよな、煩かったよな……」

「べっつに。珍しいもん見れたからチャラにしてやらァ。さーて、無駄口叩いた所為で眠くなっちまった。
俺しばらく寝るから、適当に見廻りしておけ、怪しい奴見かけたら起こしてくれィ」

「ん。おやすみ────────銀時、お前やっぱり最低最悪なヤツだな……ちったァ変わったかもって思ってたわたし、馬鹿じゃないか……」




















































































そうして迷宮迷宮、帰りたくても帰れない

それでも心のどこかで諦めてる自分がいる。
仕方ない。そういうものだ。ああいうものだ。
でも、だからといって、許せるものじゃない。
ああ、もう本当に、どうしょうもないな、わたしもお前も。



























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あきゅろす。
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