星屑の煌めき
(銀魂/銀八)月が満ちるその夜まで
「銀八先生よォ、おめいい加減貸した三千円返せよな、利子つけて返せ今すぐ返せ」
「無茶言うなザビ子、俺今オケラなんだよ……だからもう二千、いや五千円貸してくんね?」
「死ね。返済の催促中にまさかの貸し出し利用か、死ねよ頼むから、貸した金耳揃えて返して死ねよ」
「だからおめー俺いま」
「それはもう分かった。……ったく、来月の給料日まで待ってやる、だからそん時返せよな……生徒に示しつかないだろ、先生なんだからしっかりしろよ」
「子供の心を忘れない素敵な大人だろ」
「最低だろそれ人として」
◇ ◇ ◇
「────ザビ子先生と銀八先生は本当に仲良しさんですね」
「……なにを急に新八くん」
「いやだって、さっきもなんか話してたじゃないですか」
「話していたからといって奴と仲良し判定されたくありませんが」
「そうですか? でも、ザビ子先生と話している時の銀八先生はなんだかいつもより覇気がありますよ?」
「顔つき合わす度言い争うからじゃないですか」
「いつもよりテンションが高いというか、なんか楽しそうでしたよ?」
「それはきっと新八くんの勘違いですよー。
よ、っと、はいこれ、次の授業で使うモノな。
わりぃんだけど、化学準備室まで運んどいてくんねーかな」
「分かりました。ザビ子先生、次の実験はなにをするつもりなんですか?」
「なーにしようかねぇ、なぁんも考えてないや。新八くん、なんかやりたいものある?」
「えっ、そんな丸投げでいいんですかアンタ」
「毎度の事で私もアイデアないんよー、若者にアイデア募るのが手っ取り早くて楽だろ。
ぶっちゃけ考えるのクッソめんどくせぇーの」
「アンタもわりと適当だなっ!? ……はあ、うちの学校こんなんで大丈夫なんだろうか……。
やりたい事特に思いつかないんで先生の独断と偏見にお任せします、それとアイデアではなくアイディアです」
「うへぇ、一番困る返答だなぁ。仕方ない、次の休み適当に街ぶらついて探してみるか」
「あはは、頑張ってください」
◇ ◇ ◇
「適当にぶらつくってもなぁ、なんにもないしなぁ……豚の解剖でいいか、もうこの際。
────? あれ、あの後ろ姿………………銀八?」
「あん? お、なんだおめーかザビ子」
「なんだとは挨拶だな。わざわざ声かけてやったんだ感謝しろよ」
「したくねーよ。しかしなんだってんだ、たまの休みの日に一人で寂しく買い物かおめー」
「うっせーよ、授業の買い出しだボケ。それに一人寂しくならお前だってそうだろーが」
「休みの日まで学校モードか精が出るなホント。
それに俺はおめーと違って一人じゃねーし」
「は? なに一発で嘘だってわかる嘘ついてんだ見栄張んなよバレた時余計虚しくなるぞ」
「嘘じゃねーよ!! 現に、ほら────……」
「お待たせ銀さん!! ごめんね、支度に手間取っちゃって……!!」
「良いって。待つのも男の楽しみだからな。……ほれ見ろそれ見ろ」
「────銀八、こちらの方、は……?」
「見りゃ分かんだろ、あ、こいつ俺の職場の同僚でな、ザビ子ってんだ。ほれ、お前も自己紹介しとけ」
「あ、うん。えと、初めまして。わたし銀さんとお付き合いをさせて頂いてる者で──────……」
◇ ◇ ◇
「ザビ子、ザビ子ー?」
「……あ、神楽」
「おっはようアルー。ザビ子どうしたネ? 朝からぼうっとして、なにかあったアルカ?」
「…………いや、なんも。────強いて言うなら、昨日街で銀八と銀八の彼女に会った」
「げえっ、銀ちゃんに彼女居たアルカ!?」
「……ああ、しかもすげー可愛い女の子で、銀八には勿体ないぐらいの美少女だった」
「マジでか!! あんなちゃらんぽらんなマダオと付き合う女の子が居るのカ!!
世の中おかしい、間違ってるアル!!」
「……そうだな。私とは真逆の可愛い女の子然としてて、そんな娘と付き合えるなんて銀八、すげぇな」
「? ザビ子、なんだか元気ないネ、ホントどうしたヨ?」
「いや、大丈夫だよ私は。いつも通りに元気だ、いつも通りだよ」
「のわりには目の下クマ出来てるアル。あと良く見たら眼ェ赤いネ」
「……花粉症だ」
「……ザビ子、私の女の勘が働くネ、もしかしてだけど、ザビ子って……」
「言うな!!!!」
「っ……!!!!」
「ぁ…………わ、悪い……でも、それを言わないでくれないか、頼むから」
「ザビ子、泣きたくなったらいつでも私の所来るヨロシ。いつでも胸貸してやるアル」
「ありがとう神楽。その気持ちだけで有り難いよ。先生失格だな、私も」
「先生だって、先生の前に一人の人間アル。傷ついたり迷ったり躓いたりするヨ。
でも、それが間違いなんかじゃないアル。間違うのは、それが良くないって思う事ネ。
ザビ子はなんにも間違ってないアル。ソレで良いネ、ザビ子はソレが正しいアル」
「……さんきゅ神楽。生徒に励ましてもらうなんて、私、銀八のこと馬鹿に出来ないなぁ……」
当たり前の様に傍に居たから、
当然のように近くにいて、だから、気付けなかった。
この胸を締め付ける虚無感も。
この腹の底から湧き出る孤独感も。
この身体を渇かせる、涙の理由にも。
気付きたくなかった。
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