星屑の煌めき




(イナGO/南沢)薄暮の月、暁闇に揺れる




「きゃぁぁぁ、二次関数の鬼畜ぅぅぅ!! もうワケ分かんねえぇぇぇぇぇ!!」

「ワケは分かるだろ普通に考えたら分かるだろ」

「うっせぇよ芋紫いもむらさき!! テメーにゃ関係ねェだろ、あっち行ってろ、シッシッ!!」

「犬猫か、俺は。担任直々にザビ子に勉強を教えてやれって言われてきてみれば随分な歓迎をされたから帰るわ」

「やあよく来たねパープルボーイさあ早く僕に勉強を教える作業に入るんだ」

「舌の根も乾かねえ内にコレかよ」

「お前頭だけは良いだろ、それを人様の、主に私の役に立てないでどうすんのよ、とりあえず数学は後回しで日本史と世界史を教えてくれさい」

「数学をなんとかしてくれと頼まれたんだよ俺は。歴史なんて後にしとけ。
今はお前のそのつるっつるの脳みそに皺とともに数学の基礎を刻み込んでやる」

「やぁだぁ、数学はまだギリ合格ラインだから大丈夫なんだよパープルボーイ南沢みなみさわ

「変な洗礼名つけんな殺すぞ」

「ノリの悪いこった。南沢ぁ、まじでちょっと社会教えろ下さい。
他はギリ合格ラインだけど社会だけは爆死レベルなんだよね、私」

「ザビ子、お前義務教育に感謝しろよ」

「高校生活が不安で仕方ないよ、わりとマジなテンションで」

「まあ、お前の将来なんて毛ほども興味ないし正直勉強見てやるって行為が既に面倒臭い事この上ないが、俺は俺の内申点が上がるならお前の手伝いをするぞ」

「やったー、だから南沢ってば大っ嫌〜い!」

「いいから教科書開け。いいか、開くだけで済むと思うなよ、死ぬ気でついて来い」

「うへぇー」





◇ ◇ ◇






「────で、1914年に第一次世界大戦があったワケだ。
ここまで駆け足で来たが、生きてるか?」

「おう、知恵熱で倒れそうだがなんとか生きてるぞ」

「生きてても教えた内容覚えてなけりゃ意味ないけどな。今どの辺りか分かるか?」

「わーるどうぉー」

「世界大戦な。中途半端に英語で言おうとすんな、変なカタカナ発音だからなに言ってるか分からねえよ」

「WW」

「文字だけで見ると笑ってるようにしか見えねえからそういう表現も控えろ」

「第一次世界大戦」

「しつけェよ」

「あっだ!! ってーな、なにも殴るこたねェだろ!?」

「自分の胸に手ェ当ててなんで今殴られたか考えてみろ」

「南沢ァ、当ててみたけどマジ分かんない」

「協調性と人の気持ちを汲み取る感性が欠如してんのか……憐れな」

「お前勝手に憐れむなよムカつくからその顔止めろ憐憫の眼差しを私に向けるな止めろ眼球抉り出すぞコノヤロー」

「はいはい、因みに一次大戦は何年に終わったか分かるか?」

「あー、1918年?」

「ん、正解。やれば出来るじゃねーか」

「まあね」

「調子に乗るなよ、俺が教えたから出来るようになったんだろ」

「ァいっだ!! ぐぅ、貴様仮にも私女なんだけど、殴るの止めろぉや〜」

「なんだお前、俺に女扱いされたいっていうのか」

「いやそれだけは気持ち悪いから勘弁してください」

「失礼なヤツだな」

「だって、南沢あんたに女扱いされてみ〜?
私のHPがガリガリ削られるわ、私のガードをクリティカルブレイクすんな」

「酷い言われ様だな、そんなに俺に女扱いされるのがいやか?」

「ううん、多分イヤじゃないよ多分。
ただ、そんな事するアンタと、そんな事されたテメーに嫌悪感がぱないだけだ」

「お前……」

「ん? なんだよ」

「……いや。なんでもねェよ」

「あぁ? 途中まで言っといてそりゃあネェだろ篤志くんよォ」

「うっせ。絡むなよ酔ったリーマンかお前」

「ザビ子ちゃんはァ、嫌がる人を追い詰めたり問い詰めたりするのが趣味なのですぅ」

「普通に最低だな……。つーか、勉強はしなくていいのか?」

「南沢、パルプ、パルプフィクション」

「ヘルプミーな。とりあえず社会の……そもそもどこまで行ったんだった……?」

「WWTが終わったトコ。私歴史好きだけど、日本史は室町幕府が終わった安土桃山時代から江戸時代は夏の陣までしか分かんないんだよね」

「知ってるよ、お前の苦手は全部分かってる」

「信長様マジ最高です」

「そうか。おら、二次大戦までまた駆け足な」

「うへぇー」





◇ ◇ ◇






「────とまあ、ここでバブルが弾けて崩壊するわけだ」

「オーイェース」

「目が点だぞ」

「大丈夫、自分が生まれた年バブルまではなんとなく否が応でも理解してる、失われた二十年アリガトウ」

「点どころの話じゃねえ、虚ろだ」

「近世はもうハチャメチャだなぁ、私のキャパオーバーしてる」

「大丈夫かお前、次のテスト生き残れるのかそれで」

「…………頑張る……」

「この世で一番頼りのない頑張るだなぁオイ、もっと歯切れよく言えないのか」

「うっせぇよもう、どうせ私は万年落ちこぼれだバカヤロー、南沢と違って成績も頭脳も見た目も今一つだコノヤロー」

「逆ギレすんなよ、なにもかもがその通りだな」

「うわぁぁぁん!! もう本格的に南沢が大嫌いになるわァァァァァァ!!」

「そりゃ結構。嫌いになるついでにこの問い四問解いてみな」

「うぅ、問い四問、てなんぞや」

「こ〜こ、この文章問題。答えてみろ」

「問い四んんん……『俺がお前の勉強を見る本当の理由考えた事あるか?』……え、なにこの思っくそ手書きの文章問題……ていうかコレおもくそアンタの字じゃん」

「バレたか」

「バレバレです。アンタと何年の付き合いだと思ってんのよ」

「それもそうだな。それで? これの答えは?」

「アンサー、内申があがるからです」

「半分正解だが、半分外れだな」

「はぁ? 120パー正解だろ?」

「例え九割九分九厘正解だとしても、残りの一割が外れてたらそれは正解じゃないんだよ。
それが正解である事を立証したり証明したりやなんやら、これは数学の基礎な」

「めんどいな数学。お前はもう一生立証して証明しとけよ」

「これが数学の面白い所なんだが……ザビ子にはまだ高尚過ぎて伝わらない、か……憐れな」

「シャーシンスクランブル!」

「よっと」

「綽々と避けんな腹立たしい。あと落ちたシャー芯取って勿体ない」

「じゃあ最初からやんなよ。……ほらよ」

「おう、さんきゅ。助かったわ」

「────お前ってつくづく、俺の思うように動いてくれねぇよな……」

「あ? なんだ今更。私が南沢の思う通りに動いた試しなんかないだろーが。
お前と私、何年の中なんだよ。それぐらい察せよ」

「だろうな、お前と俺だし。お前はそーゆー奴なんだよな、だからこそ俺はそんなお前の事が────────」

「あ、メールだ……誰からだろ……っうを、神童しんどうからだ!! どど、どうしよ!?」

「……」

「そういや。南沢、なんか言い掛けたよな? なんだ?」

「なんでもねーよ。精々赤点取れバカたれ」

「いっだ!!?? だからお前仮にも私女子なんだって言ってんだろ中3男子の溢れんばかりの力から繰り出されるデコピンは痛いぞバカヤロー!!」

「ッハ、そんなの俺が知るかよ。そんな事より神童からメール着てんだろ、返事返せば」

「そうだった。なんて寄越したんだ神童のやつゥ……な、今度の日曜日お時間宜しいですか、だって!!
ギャァァァァなんだこれ面映ゆいぞォォォォォォォ!!」

「今度の日曜日、下手したら追試だけどな」

「時間なんて有り余ってるわバカヤロー早速返信打たねば……予定はない、と……送☆信っ!!」

「……今日はここまでにするか、俺のモチベーションも下がってきたし、もう暗いし遅いしで帰ろうぜ」

「そうだなー。あ、南沢送ってくよ、勉強見てくれた礼だ、ジュース一本奢るぞ!」

「サンキュー。じゃあ一番高いヤツ頼む」

「やっぱ取り消す今の言葉。やっぱ私、お前の事大嫌いだ」

「光栄だね。もっと嫌ってくれても構わないけどな?」

「果てない程に嫌いだ。良いからさっさと帰ろうぜ〜、私夜目効かないんだ」

「はいはい、じゃあ三○矢サイダーで手を打つぞ」

「おっけぃ。じゃあ戸締まり確認照明確認済んだし、帰ろうかー」




















































宵闇に浮かぶ二つの影。
それは決して、交わる事のない影である。




































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