星屑の煌めき




(OROCHI/酒呑童子)その細い指さえ掴めない




「軍資金もなかなか貯まってきたし、新しい仲間も増えたしで、そろそろ交流を深めようかな。
────────すみませーん!」

「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件で?」

「えーと、大会席を開きたいんですが……大丈夫です?」

「はい、問題ありません。今用意致しますのでお時間宜しいですか」

「有り難う御座います、お願いしますねー」





◇ ◇ ◇






「お待たせしました、大会席の準備が整いました!」

「有り難う御座いましたー。
────うわっと、こうしてみるとなかなか壮観だな……歴史上の偉人と酒を酌み交わせるだなんて、不思議な感覚」

「ザビ子殿、主催者である貴方がこんな隅で飲むなんて、勿体ないわ」

王元姫おうげんきさん。いえ、わたしはあくまで投資しただけですし────皆さんが語らってる所を見てるだけで、幸せなんです」

「貴方は無欲な人ね、ザビ子殿。その殊勝さ、子上しじょう殿にも見習って欲しいところだけど……」

司馬昭しばしょうさんはアレでも頑張ってる方ですよー」

「そうかしら。……ザビ子殿の目にはそう見えるのね」

「だって、こんなに個性豊かな方々を纏めるだなんて、スッゴい事じゃないですか!
信長のぶなが様、曹操そうそう様は最早別格扱いとして、孫呉そんご劉蜀りゅうしょくまで集結してる連合軍を纏めるなんて、超至難じゃないですかー」

「……確かに、言われてみればそうだけど。そう言われてみればそうね、少しは子上殿も、怠け癖が減ってきてるし、めんどくせ、の回数も減ってきた。
目に見えて分かる結果ではないけれど、少しは君主としての自覚が芽生えたのかしら」

元姫げんきさんは司馬昭さんにちょっと厳しいですよね〜、まあ、司馬昭さんがアレなんでそれぐらいが丁度良いんですかね」

「っ、ザビ子殿あまりからかわないで欲しい……!!」

「へへ、ごめんなさい。あ、お酒なくなっちゃいましたね。わたし新しいの取ってきます、元姫さんお代わり要ります?」

「いえ、私はこれで十分。他の人にお酌をしては?」

「うん、そうします」

「……。ザビ子殿は、どこか不思議な魅力を持ってる人ね、話していると、こちらまで笑顔になる……飽きない人だわ」





◇ ◇ ◇






「お酌して回るのは良いけど、あんまり話した事ない人にいきなりお酌するのはちょっとな……憚れる」

「────む。ザビ子ではないか」

「あ、酒呑童子しゅてんどうじさん」

「どうしたのだ、その様に酒樽さかだるを抱えてキョロキョロするとは」

「いや、元姫さんの提案で皆さんにお酌して回ろうかと思ったんだけど、私人見知りが激しいから、ちょっと……」

「そうか。ならば、私に酌をしてはくれないか」

「はい喜んで。どーぞ、御一献と言わずにさあさどーぞ」

「うむ、すまない」

「いいえ〜。じゃんじゃん飲んでね酒呑童子さん。今回は貴殿が居たから勝てたようなもんなんだから。
言うなれば、この宴の立て役者、的な?」

「む……そうだろうか」

「うむうむ、そうなのです。貴殿がいたから勝てた戦です、貴殿が居て初めて得られる勝機、八塩折やしおおりも貴殿なくして開発出来ない。
妖蛇退治の糸口を見いだせたのも、酒呑童子さん、貴殿がいたからです」

「……そうか」

「うん、そういうコト。だからもう遠慮なんてなしなしっ!!
今日はしこたまお酒用意してもらったからガンガン飲んで、酒呑童子さん!!」

「ザビ子の言葉に甘えるとしよう……それでは、その酒樽ごともらえぬだろうか」

「酒樽ごと!!?? わあ、酒呑童子さんたらその名に恥じることない酒飲みさんだー!
イイ飲みっぷりだねェ、わたしも負けてらんないかー」

「ザビ子も酒を好むのか」

「嗜む程度ですけどね〜、下戸でもなければ蟒蛇うわばみでもない、本当に普通の酒愛好家って感じです」

「そうか────であれば、私の瓢箪ひょうたんの酒を飲んでみぬか」

「え、良いんですか? わあ、前々から興味あったんですよねー、酒呑さんの瓢箪のお酒っ!!
聞くところによると、物凄〜い美酒って話で一度味わってみたかったんですよね〜」

「ふむ、そう噂になる程、か……悪い気はしないな。ではザビ子、一献」

「わ、有り難う御座いますっ。それじゃあ有り難く御相伴にあずからせていただきます」

「……ザビ子は酔いが回るのが、少し早いようだな」

「っぶぁぁい……ふぅ、そうですかね〜? 自分じゃ分からないですけど、端からすれば分かるんですかね」

「ああ。酔いが回った証拠に、顔が熟れた桃より赤みを有している……熟れすぎて皮割れしそうな程に、朱を帯びている」

「────────っ、しゅ、てん……さん、も、酔ってませんか。
いつもならこんな、顔を近付けたりなんてしないじゃないですか」

「私か? 私は名の通り、酒呑みだ。酔う事など有り得ん」

「素面で、それですか……どこの郭嘉かくか殿に仕込まれたんです、奉考奉考ほうこうですか、郭奉考かくほうこうですね」

「……いや……ザビ子があまりにも無理をするので、諫めるついでにだ。
私はこの様な見た目故、比例して腕力も人の子より随分とある、丁重に扱うにはと聞いてきたまでなのだが」

「一回否定するけどやっぱ根が素直だから認めちゃいましたね、あの糞不逞軍師……!!」

「む。ザビ子。なにやら心ノ臓の動きが早まったな……今日はあまり飲まない方が良いのではないか」

「はい、そうしますね。……あ、でもやっぱもう一杯だけ良いですか。
不逞上司を完膚なきまでに叩きのめしたいので力加減を解き放ちたいんで、己れの限界を超えた拳をお見舞いしたいんで、キツめの一杯いただけます?」




































心配の仕方も対処の仕方も明後日の方向過ぎて。
気遣いとか有り難いんだが、湾曲過ぎて伝わりにくいです。





















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あきゅろす。
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