星屑の煌めき
(銀魂/銀八)何時如何なる場合も薄れない
「あーおーげーばー、とーおーとーしー? 我ーがー師ィのォーおーんー?」
「なんで最後半音あがるんだお前」
「ごめん私この歌歌えない」
「卒業式の練習とかで散々歌わされたろ!?」
「ごめん私その時寝てたわ」
「お前厳粛なムード作ろうか、例え練習でも厳粛な空気出そうか!?」
「いやだってかったるいし」
「卒業生の言葉がそれかよオイもっと感慨深くないのかよ」
「だって。卒業って言ったて……感慨深くないですよ別に」
「お前な、この高校生活でなにを培ってきたんだよ」
「ボケツッコミスキルとスルースキル」
「なに養成所だここは! 将来役だたねえ専門知識身につけてんじゃねーよ!」
「だってさ、このクラスに3年間居てみ? そりゃボケツッコミやスルースキルが高くなるよ」
「ごめん、なんか俺が悪かったわ、別に俺が謝る必要ないけど俺が悪かったわごめん」
「……でも。そうだな、明日からみんなで馬鹿騒ぎ出来ないのかと思うと、ちょっと寂しいかな」
「お、やっと卒業生らしいセリフだな。うんうん、それでこそこの晴れの卒業式に相応しいってんだ」
「けど普通に明日クラス全員でネズミーランド行きますけどね」
「えっちょ、おま、なにそれ初耳だよ俺呼ばれてないよ」
「だって関係者以外は呼ぶなって言われたから。クラスメイトだけでのお別れ会です」
「おま、俺も一応クラスの一員よ、担当の先生よ、俺も呼べよお前ら」
「だってー、土方くんがァ〜、『間違ってもあの腐れ天パ教師だけは呼ぶな』って言ったから、それに該当した誰かさんは呼べなかったのでしたー」
「アイツの就職取り消してやろうかな」
「……坂田先生も陰湿な嫌がらせするね」
「仕方あんめぇ、アイツが陰湿な嫌がらせすっから俺も陰湿な嫌がらせし返してるだけだ」
「坂田先生ってみみっちいね。私びっくりしたよ、あんたはもっと豪快な人かと思ってた」
「俺はデリケートでナイーヴで繊細なんだよ」
「それ全部同じ意味じゃない? どんだけ自分繊細アピールしたいの?」
「フェアリー系男子舐めんな、構ってくれないと存在消えちゃう系男子舐めんなよ」
「意外と面倒臭い人でした。あはは、最後の最後で思わぬ発見をした」
「そうかぃ」
「こうなると、もっと時間が欲しいなあ……もっとこうして坂田先生とお喋りしたい、もっと坂田先生を知りたい、もっと誰も知らない坂田先生を見ていたい。
ああ、時間が惜しい────世はかくも残酷であるのだな……」
「お、やっとしんみりムードか? おっせぇよおめー、もっと早くしんみりしとけ」
「感傷に浸るには、その時間を嚥下せねば伝わらない。て事ですかね?
ほら、アレと一緒だよ。遊園地にいる時は楽しい、そんな時間が当たり前にずっと続くと思ってしまう。
けれど物事には必ず終わりが来る。
遊園地を出て、初めてソレが当たり前に享受出来る愉悦ではない、と気付けるのですよ」
「まあ確かにそんなもんだな、当事者にゃあソレが分かんねぇんだ……先見性なんて持ち合わせちゃいめーしよ」
「けれど、終わりが当たり前に来る、というのは忘れてなくちゃいけないんだよ。
これから先をより素晴らしいモノへと変える為に。
今までの時間を素晴らしいモノだと昇華する為に。
前に進む為に忘れなくちゃいけない概念、それが『楽しい時間』……過ぎてみればそれは本当に、素敵な夢でした」
「いつになく、詩人だなお前……厨二ポエマー的ななにかを感じた」
「酷いな坂田先生。せっかくしんみりムード作ってあげたのに。
ここで先生が優しく私の頭を撫でて儚げに微笑んでくれたりしたら私、恋に落ちちゃいそうですよ」
「そうか。じゃやってみっか」
「私、好きな人以外に頭撫でられるの嫌いなんで止めて下さい」
「お前言ってる事滅茶苦茶なの分かってるよな?」
「さっき言ったシチュエーション、沖田くんにやられたんですけど、全く胸キュンしなかったのは私が可笑しいワケじゃない。
あの人真っ黒い笑顔で『望み通りにしてやったぞ、これで思い残すこたァねぇな?』て言ったんだよ、信じられる坂田先生」
「あいつァな、サディスティック星の王子だから近付くなよ」
「ま、そんな沖田くんともお別れですけどね、最後の最後まで3Zは面白可笑しくて、寂しさなんて微塵にも感じさせないクラスだったなぁ」
「センチメンタルなザビ子も、なかなか見らんねぇから貴重だなァ?」
「あっはは、ドラゴンスクリュー喰らいたいんですか坂田先生?」
「おっかねぇやっちゃな……黙ってりゃそれなりに身分の良いお嬢様な風に見えなくもないのに、勿体ねえな」
「ふふ、伊達に3Zの一員じゃありませんからね。妙ちゃんのお陰で色んなプロレス技を身につけましたよ」
「いやだから本当にここなに養成所? お妙の奴危なっかしいもん伝授してんじゃねーよ!」
「それ1つ取っても私には大事な思い出ですよ?
嗚呼、こうしてただ話しているだけで今までの思い出が湯水のように湧き出してくるなんて、本当に退屈しない高校生活だった…」
「……そうかィ。そいつァなによりだ」
「はいっ! 先生も、どうぞお健やかに……」
「おう。────さって、最終下校時刻だな、けーるべ」
「先生、帰りちょっとお茶しませんか? 駅前のカフェでケーキバイキングやってるみたいなんです。
私奢るからさ、先生行こうよ、ケーキバイキング!」
「マジでか。実質タダで死ぬほど糖分摂れんのか……血圧が熱くなるな」
「よし、交渉成立っぽいし、早速行きましょうかー」
「大丈夫だよな、俺の血圧はまだ耐えられるよな、ケーキ如きで上がる様な柔な血管じゃねーよな……うん勝てるよ俺イケるよ俺」
魂に刻んだこの記憶。決して忘れはしないのだと吼える。
「おーす、はよぉザビ子……あり、なんでぇ銀八先生まで居るんですかィ」
「おう沖田ァ、朝から随分なご挨拶だなおめーはよ……大学生活台無しにしたろか」
「止めてよそんなみみっちい報復……大人でしょ坂田先生?」
「おめーは黙ってろ裏切り者、ケーキ5つまでとか拷問かザビ子!」
「相っ変わらずウルサい奴だなァ、銀八よ……」
「多串てめぇ、就職先のに会社に難癖つけて社員全員ノイローゼにしたろかアン?」
「……卒業したのに、なんだか寂しくないのは先生がこんなだからだよねぇ……ふふ、困った困った」
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