星屑の煌めき
(イナGO/剣城)枯渇する叫び声
「っんー……今朝も良い天気〜、絶好の部活日和だ」
「ま、お前は部活中だろうがなんだろうが余所見してるから天気は関係ないだろ」
「南沢煩いぞー。爽やかぁな笑顔で嫌味を言うのは止めろ」
「事実だろ? お前が部活中にしてる事はなんだ?」
「黙れよエロ沢ー。この歩く猥褻物め」
「朝から随分な態度じゃないかザビ子、お前は今日もツンデレだな」
「死ねよエロ沢、頼むから私のいない次元に消えて」
「お前がそんな態度取り続ける限りは止められねえな、面白いし」
「そう。じゃあ態度改めるわ、南沢今すぐに私のいない次元に消えて下さい」
「言い方変えただけじゃねーか」
「消えて欲しいと思ったんだもん……あ、そういや南沢、おはよ」
「遅、朝の挨拶を交わすまでどんだけ時間かける気だよお前」
「距離にして物の50メートルかな?」
「だいぶ歩いたよな、普通会ってすぐ交わすもんだけど」
「だって南沢が朝から喧嘩ふっかけてくるから、売り言葉に買い言葉って知ってるかな?」
「俺は事実を言ったまでだっつの」
「真実は時として虚構より侮り難し、事実が正義だとは限らないのです」
「また随分と勝手な……。ま、俺には今度の期末テストお前が赤点取ろうが関係ないけどよ」
「南沢、ノート貸して」
「断る。精々赤点取らねえ様に必死扱いて勉強しろ」
「死ねよ南沢、三国に見してもらおう」
「三国のやつ、もうザビ子にはノート教科書一式貸してやらないって憤慨してたぞ」
「マジでか。なんでかなぁ心当たりが2、3個しか思い浮かばない」
「それ充分だろ。なにしたんだお前」
「三国に借りた全ての教科書にパラパラ漫画描いたのと、赤ペンと青ペンでさほど重要でもない事柄を3D加工したの。あ、あとノートには授業中に考えてた事を走り書きした」
「…………。それはあのお人好しな三国でも断るだろ」
「そこまで酷くないよ。倉間にした方が酷かったよ」
「倉間に? お前なに後輩にノート借りてんだよ……」
「違うよ、辞書借りたの辞書。大事な事だから二回言うよ、倉間には広辞苑借りたワケだ」
「はいはい。で? なにをしたんだ?」
「卑猥な単語にマーカーで記しつけて付箋貼っといた」
「ガキかお前は、お前それちゃんと倉間に謝れよ!?」
「うっさいなぁ、ちゃんと新しい辞書をあげたよ、最新式の電子辞書を」
「授業で使えないだろそんな辞書! お前そんなだから人望皆無なんだよバカじゃねーの!?」
「朝から横で騒がないでようるっさいな。……っ!!」
「お前倉間と三国には一度きちんと謝罪しとけよ誠心誠意込めて謝れよ。
……あ? 急に立ち止まったりしてどうした?」
「別に。悪いけど私先行くわ。教室で僕と握手ーーっ!」
「ぅおい、ちょっ……なんだ、今度は急に走り出したりして。前に誰か……あ、アレか」
◇ ◇ ◇
「────剣城さん、お早う御座います!」
「……ザビ子先輩。早ようございます」
「見てください剣城さん、私携帯買って貰ったんです! 英雄の新機種なんですよ!」
「おめでとうございます……ま、使いこなせるかどうかはザビ子先輩次第ですよね」
「アハハ、それはそうなんですけどねー。私機械類に弱いんで……あの、剣城さん良かったらメアド教えて貰っても宜しいですかっ!?」
「は?」
「あ、あの別に差し支えなければの話でして支障を来すようであれば良いんですっ」
「…………別に、構いませんよ」
「……ぅえ、ほ、本当ですか?」
「ザビ子先輩が言い出した事だろ、アンタが俺に聞いてどうするんですか」
「そ、それもそうなんですけど……あの、ぅ、嬉しくて……っ」
「……ザビ子先輩、赤外線交換の仕方分かりますか」
「えーと、まだ実は良く……昨日買って貰ってアドレスを変えたぐらいでして……使い方がまだイマイチと言いましょうか」
「つまり全く使いこなせてないって事かよ……携帯、貸して下さい。俺がやっときます」
「……ごめんなさい、お願いします」
「ん。────はい、終わりましたよ」
「え、もう!? 今ちょろっと携帯いじっただけでもう終わったんですか!? はっや!」
「んなの簡単じゃないですか、もたもたする方が可笑しいですよ」
「うわあ、現代っ子〜」
「アンタも同世代だろ、ザビ子先輩」
「面目ない事に私機械音痴でして」
「……良く今まで生活出来ましたね」
「必要最低限の機械にしか触れませんからね〜、剣城さんみたく人の携帯もパパっと操作出来るって憧れます」
「別にこれぐらい今時誰でも出来ますよ、ザビ子先輩が異常なだけです」
「ぐぬぬ……否定出来ない自分が悔しいですぅ……!」
◇ ◇ ◇
「うーわ、恋する乙女よろしく顔真っ赤だなアイツ……朝から気色の悪いモン見た……。
つうかアイツ、なに後輩相手に敬語使ってんだ……剣城一年だろ」
「お。南沢じゃないか、おはよう」
「三国か。はよ……見ろよアレ、ザビ子は今日も朝からアプローチに忙しいみたいだぜ?」
「ああ、あいつも懲りないというか飽きないよな、ザビ子の唯一の褒め所はあのしぶとさだもんな。
いや、剣城も最近は満更でもなさそうな感じだし、根負けしたのかもしれないな」
「下手したらアイツ、ストーカー一歩手前だろ……あ、三国。今日ザビ子がノート貸せってくるかもしれないぞ、気を付けておけ」
「なんだって……!? あいつ、あんだけの事をしておいていけしゃあしゃあとノート借りにくるだと……!?」
「マジでなにされたんだ、お前」
叫べない声は体内を反芻するだけで
まさか、アイツがあんな顔するなんて、な。
俺には絶対見せないあの笑顔に、俺は。
(心奪われてなんてしない────ただ、どうしようもなく苦しくて、苦いだけ)
◆ ◆ ◆
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