星屑の煌めき




(銀魂/銀時)狂おしいほど枯渇する舌先




「“いま巷で人気の妹カフェ……メイド服を着た女性に兄と呼ばれ給仕される……”。
妹カフェか、またけったいなモンが出来たもんだなぁ、このかぶき町にもよォ、なあ定春?」

「わふっ!」

「だよなぁ、妹たってよォ、アレじゃねーか。
世界で一番身近にいる異性でありながら、世界で一番手ぇ出しちゃいけねぇ女だぜ?
アレにあらぬ幻想を持ち込んじゃいけねーよ、人格疑われるってもんだ」

「わきゅ!」

「どうせやんなら、魅惑の女教師って感じの教室カフェみたいな? あーゆーのを出して欲しいもんだよな」

「わんっ!」

「ピンクナースもいいな……白衣じゃなくて薄桃色のナース服な、ありゃ良いもんだ。
汚しちゃならんと思いつつも、穢したいと強く願いたくなるあのふしだらな服、たまらなくそそられるな、うんうん」

「くーん」

「オイ止めろ。定春になんて事聞かしてんだ貴様」

「あん? んだよおめー居たのかよザビ子、居たんなら俺の会話に混ざれよな」

「混ざれるか、混ぜるな危険がなにをしゃあしゃあと!!
ったく、神楽も新八も居ないからって昼間っから居間でピンクな会話繰り広げんなよな、然も一人で延々と話してるから傍目から見ると変な人だぞアンタ」

「ばっかおめー、こんな昼間っから仕事ねぇし昼寝も出来ねぇ俺の苦しみがお前に分かっかザビ子」

「分かりたくねーよンな苦しみ。くれぐれも私の可愛い神楽に変な事吹き込むんじゃねーぞ」

「へいへーい。相変わらず黙ってりゃ可愛い顔したザビ子ちゃんは口開きゃ残念で中身は百合趣味だなぁ、世も末だこりゃあ」

「うるっせえな。私は百合趣味なんじゃねえ、神楽が好きなんだよ。
お前だってシャキッとしてりゃー見れなくねーってのに、万年死んだ魚の目ェしてっから彼女の一人や嫁の一人、愛人の二人も出来やしないんだ」

「いや、愛人はいちゃダメだろ」

「愛を囁く用、身体を求める用で、二人。こんぐらいは欲しいだろ普通」

「お前の普通は常識外だから常識的に考えて。どんな倫理観してんの?」

「私のクソ親父は愛人が沢山居たが、モテるから仕方ねえって母さん笑ってたぞ」

「お前の一族の倫理観可笑しいから! 笑って流せないから胃凭れ起こすから!」

「ウチの家族はみィんな頭可笑しいよ、だからこんな的外れな娘が生まれちまったんだろうよ」

「もれなく異常者が生まれる家系て最高に頭イイな……悪い意味で」

「まあな。それよか銀時、なにを熱心に読んでたんだ?」

「お前最初から居たんじゃねーのかよ」

「銀時がピンクナースについて語ってる辺りからしか知らないよ」

「こういう時は空気読んで最初から居た風にすんのがセオリーだろ」

「途中参加の場合もあるさ、なにがあっても可笑しくないのが人生だよ銀時。
ほんでほんで、なにを読んでたのかって」

「……名言だな────これだけど、あんま面白いもんでもねーぞ」

「あん? 江戸スポかよ昼間っからいかがわしい雑誌読んでんなよな……」

「ザビ子、俺をそんなゴミを見るような蔑んだ眼差しで見るな地味に傷付くぞ」

「然も見てる欄が、『妹カフェへお帰りなさいお兄ちゃん♪』て、アンタ末期だな」

「お。そういやお前リアル妹だよな、高杉アニキに向かって『お兄ちゃん♪』みたいな感じで呼んだ事あんのか?」

「馬鹿も休み休みにしろよ銀時。あの晋助がお兄ちゃん、なんて呼ばれて喜ぶタマか?」

「いや、多分いまのおめーみたいな眼差しを、おめーに向けるな」

「分かってんじゃねぇか。大体アレはな銀時、幼少の私が『お兄ちゃん』て呼んだら頸動脈切りやがったんだぞ…」

「バイオレンスだなオイ、もっと可愛い昔話ねぇのかおめーら兄妹はよぉ!」

「妹に向かって『二度と俺を兄と呼ぶな』て言うか普通言わねえよ普通!! お陰で若干先端恐怖症だバカヤロー!!」

「どんまい。多分高杉はアレなんだろ、照れたんだろうよ」

「照れただけで妹の頸動脈切りますか普通。切らねえよ。
どんな厄介なツンギレだそれ、晋助はそんな奴じゃないよ」

「どうだかな。なあ、お前は高杉の事好きか?」

「はぁぁ? 銀時テメ、人の話聞いてたか?
私達兄妹はな、仲良し仲悪いとかそういう尺度で計れないんだよ、憎悪を向けられて当たり前の存在なんだからよ、私は」

「は? ちょ、待て。それどういう意味だ……?」

「あれ? ……なあ銀時、私と晋助が兄妹だってのは知ってるよな?」

「おぉ、まあ一応……苗字同じだしよ」

「私と晋助は同い年なんだってのは、勿論知ってるよな?」

「…………あり」

「その顔から察するに、知っていたが深く考えたこと無かったって事だな。
私と晋助は同い年の兄妹、にも関わらず双子なんかじゃねぇ…………考えられる答えは?」

「腹違いか、お前ら」

「そういう事。私は本妻の子で晋助は妾の子。
晋助に負い目を感じたクソ親父は財産なんか全部を晋助名義にして死んでいったワケだ、勿論私にも少し遺産分配されたけどな。
同じ高杉を名乗ってはいるが、私はこうも複雑な兄妹で、私はアレに憎まれてるんだよ」

「ほっほう、成る程全ての合点が一致したわ、俺。……どおりで高杉のヤローがおめーに執着すっか、分かった」

「奴は本妻の子である私が、憎くて憎くて仕方ないんだろうさ。
ちっちゃい頃は睨まれた記憶しかないし」

「おめーも大概鈍いよなぁ、罪作りなやっちゃな」

「あん? なにすんだよ銀時、まだ江戸スポ読んでる途中なんだよ返せ」

「俺も途中までしか読んでねぇもん。
────時にザビ子。お前は高杉がお前の事をどう想ってるか知りたかねぇか?」

「……晋助が私をどう想ってる、か? んなの分かりきってる、憎らしいんだろ私が、私の所為で晋助は虐げられていたって話だし」

「ばっか、逆だ。高杉はおめーの事が好きで好きでどうしようもねぇんだ」

「…………はぁ?」

「兄妹愛なんかじゃなくて、一人の男としてお前を好きなんだと、分かんねえ?
おめーに自分の事兄貴だと思わせたくなくて兄貴って呼ばせなかったり、兄妹だと意識させねぇ為に突慳貪つっけんどんな態度取ったり、涙ぐましい努力をしてんだよ」

「っ…………う、そだ」

「まあ、あくまで俺の憶測でしかねーけどよ、アイツお前の事になると血相変えてきやがるからよぉ、分かり易いぞ?
長年の謎が解けた。お前を見るアイツの目、マジ餓えた獣みてぇにギラギラしてたからよぉ、今後気をつけなよザビ子ちゃぁん?」

「…………うそだ……っ」

「なあ、無粋かもしんねぇけど────お前、高杉の事兄貴としてちゃんと好きだったんだろ?」

「……っうん。晋助の事、好きだったよ、兄って呼ばせてくれなかったけど、私にとっては、晋助は兄貴だったんだよ……。
私には、アレが兄貴なんだよ、あんなんでもたった一人の兄貴なんだよ……っ」

「……ザビ子、悪かったな。
ちょっと銀さん心配だったんだよ……お前と高杉、いつもどっかしらどっかで繋がり合えてるみたいで、妬けたんだ」

「銀時は悪かねぇよ……悪いのは全部うちのクソ親父だ……ごめん銀時、私はお前が一番好きだよ、異性として一番愛してるのは銀時だけだ」

「……ごめん、な」

「バカ謝んな、元はと言えばうちのクソ親父が悪いんだし……銀時を不安にさしちまった私も悪いんだ。
好きだよ銀時、世界で一番大好きだ。何者を敵に回しても私はお前を取る。
そりゃあ、さ……晋助の事も好きだけど……これは兄妹愛だ、お前はなんも心配するこたァねえよ」

「…………ごめん」

「────────笑って、銀時。
それで帳消しにしてやる……あのバカ兄貴の事は、もう忘れるよ」
















































咽が焦がれるぐらいにあなたを呼ぶ。
(私も好きだったよ、晋助……もっと早く言えよバカ兄貴…)
「んなだせぇ事言えっかよ……察しろよ。バカで可愛い、オレの大事なザビ子いもうと……」












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あきゅろす。
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