星屑の煌めき
(Zero/龍之介)夕暮れに蜜は満ちる
「ねえねえ龍之介〜、来て見てきてみてーーーー!!」
「なんだよザビ子〜、オレちょっと今目が離せないんだけど」
「手が離せないの間違いじゃないのぉ…………ね、なにしてんの?」
「ジ○ンガだけど。ザビ子もやるか?」
「いー歳して○ェンガに興じるのもどーかと思うんだけど」
「えー? ザビ子ソレ偏見だぜ? 大人だからやらないとかオカしいだろ、こんなに楽しいアソビ」
「龍之介、もうイイ歳なのよ……貴方が許しても世間が許してくれないのよ……っ!」
「ザビ子の泣き真似わりと鬱陶しいんだけど……アレ? てか旦那は?」
「青髭様なら、材料を調達してくるって出て行ったよー。
それにしても。青髭様の調達してくる材料って、男の子ばっかだからツマンナイんだよねぇ。
気骨がないのは致し方ないとはいえ、根性がないのは良くないとザビ子思う」
「オレ的には若い女がいいんだけどなー。そろそろ肉感的なカラダを切り裂きたいし…………なあザビ子〜」
「却下!!」
「……まだなんも言ってないんだけど、せめて最後まで言われてくれよ」
「最後まで言わなくても、事の顛末は分かる!
どうせ私を切り裂きたい、とか言うんでしょ、常識的に普通に考えて却下!!」
「むう…………ザビ子〜、どうしてもダメ?」
「むぐっ……そ、んな可愛い声で強請っても無駄だから……だからそんな潤んだ瞳で上目遣いをしても無駄だからイヤだから!」
「え〜、いーじゃん、ちょっとくらい。……旦那に頼んで切り裂いたって死ななくしてもらえば良いじゃんか」
「私はね龍之介、自分が痛い思いするのは嫌なの。此方から一方的に痛めつけるのは好きだけどね。
誰だってそうでしょ、痛い思いするのは龍之介だってイヤでしょうに」
「え? 別に構わないけど?」
「なんてこったーい。この人根っからの殺人狂だったのか」
「それはザビ子にだけは言われたくないな、お前だってオレと類友だろ」
「────そうだけど、そうじゃないよ。
私死ぬのはイヤだし痛い思いするのはごめん被るし、龍之介とは似たり寄ったりだけど本質は違うし。
龍之介は愉快犯な殺人鬼だけど、私は真理を追い求めてる殺人鬼だから」
「オレにはどうも同じように思えるけどな〜? 本質は違うっていうけど実質やってるコトは同じだしさ」
「過程と結果が違うから、ギリギリセーフ! ……だと良いなっ」
「ザビ子ってアレだよな、弁が立つ割には自爆するよな」
「うっさいな……分かってる、皆まで言うな腹立たしい。本人自覚してんだから良いでしょうに。
っていうか、今気付いたけど、龍之介……そのジェン○なんか細長くて白くない?」
「あ。今頃気付いたのかよザビ子ー! 鈍いなあ、もうちょっと目を養えよ〜」
「うんこれから養うことにする。…………それさ、もしかしなくても────人骨?」
「当ったり〜♪」
「うっわあぁ…………凄い。これ大きさからして子供のだよね? あ、然もこの太さからして指の骨?
均等な太さ、長さに加工し華奢過ぎず華美過ぎず、適度な装飾を施してある……。
……多分、龍之介がやったんじゃなくて、青髭様がやったのかな……なんとなく青髭様の趣味っぽいし」
「凄いだろー? これは右腕で建てたジェン○の塔でさ、切り離しても旦那の魔術で痛覚共有してるから彫ってる最中もイイ悲鳴が聞けたんだぜ!」
「ふぅん、霊子を編んで擬似神経として本体へ繋いでるのか……ふむふむ………龍之介、本体はまだ生きてるの、アレ?」
「まだ生きてるかな。死なない程度にやってるんだもん死なれちゃ困るしさ〜あ?
この子の悲鳴は最ッ高なんだぜ? すぐに死なすのが惜しいくらいゾクゾクするCOOLな叫喚……ザビ子も一回聞いてみなって、癖になるからさ!」
「私はそれよりこの子のナカミが気になるかなぁ、この子を使って根源へ至れないかな?」
「ザビ子はまたそれかよ〜……素直にバラしたいって言えばオレも譲るんだけどな」
「うっさいな。魔術師ならば皆が一様に抱く欲望じゃない。根源へと至る道、なんとしても私はそれを見つけたいの!
龍之介だって、血統は悪くない筈だよ、ご先祖様は魔術師紛いだったんでしょ?」
「オレはそういうのにはキョーミ無いからなぁ、先祖が魔術師っても、生業的には悪魔召喚やってただけだし。
旧い家って言われても、それはもう死んだ家だしさぁ」
「魔術回路は受け継がれてるのに知識が死んで廃れてしまった旧い家、か。……龍之介って良いよね、気楽で。
『』へ至る事はその家代々受け継いでる呪いの言葉だし、それを忘れられるなんて幸せだわね〜、龍ちゃん」
「ザビ子の短所というか、気を付けるべきは血筋に拘るからだと思うぜ。
呪いとか、そんなのに縛られてるから何時までも楽しく人を殺せない。吹っ切ればザビ子も心の奥底から人殺しを楽しめるし、目的も叶うかもよ?」
「龍之介に嫌味は通用しないどころか嫌味で返された。もう信用ならんぞこの人。
私は人殺しを楽しもう、なんてハナから思ってないよ。目的の為に仕方なく、仕方な〜く人を殺して開いているだけだし。
分かり易く言うと……龍之介はさ、集合的無意識の存在を知ってる?」
「知らない。なんだよそれ」
「────集合的無意識というのは、人類全体が共有する普遍的な心の事を指すの。
この集合的無意識そのものは、意識的に把握することは出来なくてね。だけど、これらを、直感的なイメージとして認識することが出来る。
例えばホラ、全世界に類似する神話が数多存在するのも、集合的無意識があるからなんだよ。源泉は同じでもソレを汲み取る人間が違う。
人間は個別に存在する。思想や趣味趣向だって人それぞれ。だけども然し、皆が同じ様に抱く意識は確かに存在する。
生きていたい────ただ、生きていたい。そんな簡単な意識を皆根っこに持ってる。
それが五十億、七十億として存在しているんだよ?
だったらその中に一つぐらい根源へ至る道があっても可笑しく無いじゃない?
だから私は殺人鬼なんだよ龍之介。手段が目的になった訳じゃないんだよ、まだ」
「いや、ザビ子の言ってる事、サッパリだ。意味分かんないし。
旦那とはまた違った無神論者かと思ってたけど、それもまた信仰みたいなんだろー?」
「いや? 私は完璧な無神論者だよ?
龍之介みたいに歪な神論も唱えないし、青髭様みたいに神も憎まないし。
仏様も神様も信じてないよ。神道も信じてない。
ただ。在るなら崇めよう、亡いなら悼もう、座するならば畏れよう、程度。
あるならそれに縋るけど、日常を神に感謝して〜みたいな基督教でもない」
「ザビ子はザビ子で神さまの存在を否定した上で肯定してんだろ、ならオレと一緒じゃんよ」
「大まかに言うと違うけど、まあこの際龍之介とお揃いってのは嬉しいからそれにしとく。
それにしてもこの○ェンガ、造形凝ってるよね……ここ、この付け根だった部分の彫りっ! 特に素晴らしい出来だもん」
「お、分っかる〜? これさり気に苦労したんだぜ、子供の指の骨って細くて脆いじゃん?
ちょっとでも力入れすぎるとすぐにポキッと折れるから、すっげー大変だったんだ」
「わお、全部に細やかな装飾を施してある!? 龍之介工作嫌いな割には頑張ったね〜!
根気の入る作業じゃん、これ一個作るのに何人やったの?」
「ん〜……確か、十四人、ぐらいだっけな? アレ以外は潰れちゃったからもういないんだけど、ザビ子が帰ってくる前までは超COOLな悲鳴の大合唱だったんだぜ?
あー、あれはホント聞かせたかったな〜……旦那には感謝してもしきれない、最ッ高のプレゼントだよな!」
「おぉ……よく見れば一面に増えてるね……。そっか、青髭様は龍之介にこういうプレゼントをしたのか……へぇ」
「お? どうしたザビ子、目が笑ってない笑い方して……やっぱりザビ子もやりたかったとか?」
「違うよ。私も龍之介にプレゼントしたかったのー。
今日龍之介誕生日じゃん、私が先に龍之介を祝いたかったのに……青髭様ったら、なにが『ザビ子を応援しましょう、出来る限りの範囲でですが』だ!
もうあの笑顔は信じない、天使のような悪魔の笑顔だったわ!」
「ほあ? ……っあ〜、今日オレ誕生日か……もうそんなんになるんだー、いやぁ月日が経つのは早いなー。
でさ。ザビ子はなんでそんなぶすったれてんの?」
「べっつにィ!?」
「うっわ、分かり易い不貞腐れだな……もしかして、いっちょ前に妬いてる?」
「バッ…………カ、そんな訳ないじゃん!」
「いやいや、分かり易いなザビ子ー滅茶苦茶顔真っ赤だしー」
「うっさい! もうこっち見んな!」
「餓鬼の癖にいっちょ前にヤキモチとか、可愛い〜な〜♪」
「どーせ私は龍之介に比べりゃ子供ですよー、へっへーんだ!」
「ザビ子ー、ちょっとこっち向いてみて」
「なに────────……、っ!?」
「うん、やっぱザビ子は紅が似合うな〜」
「っ……りゅ、龍之介の…………ロリコンんんんんんんん!!!!」
「ザビ子煩い、その口唇もっかい塞ぐぞー」
朱に交われば、二人は幸せ。不意打ちの口付けは、私を紅に染めるのでした。
(プレゼント渡せず仕舞いだけど、うんまあ、いっかな。)
(ここはあれだよな、ザビ子をプレゼントって事で良いのかなー?)
1/31 龍ちゃんハピバ!!
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