星屑の煌めき
(復活/黒曜)失う瞬間気付くモノ
「────────よっし、買い物完了ッ!
チョコは……骸の分、オッケー。千種の分、オッケー。犬の分、オッケー!
よしよし、買い物忘れはナシ、今の私は所謂死角ナッシング無敵マン!!」
『私、今年こそ彼に告白するんだー!』
『チョコとか手作り以外考えられないわぁ、女の子の常識ぃ♪』
『うぅ……このチョコ、受け取ってもらえるかなぁ?』
「────アハハ、女の子はこの時期になるとみィんな戦争に行くみたいねェ。
ほっぺ真っ赤にして、大好きな人達の事考えて作って渡すのかなぁ……可愛いなぁ、私には真似出来ないなァ、うむうむ」
『この時期になっとアレだよな、なァんか妙に落ち着かね〜!』
『手作りチョコって、変な日本語だよな。別にカカオから作ってる訳じゃねぇのに……』
『そわそわしてくるな……うあー、チョコ食いてぇ!』
「────その反面、男子は落ち着かなさそう……頑張れ青少年達よ。
さて、私も早く帰んなきゃ。三人が帰って来る前に作らなきゃこっそり作り損ねちゃう」
◇ ◇ ◇
「たっらいまぁ〜! ……? すんすん……らんか甘ァい匂いが充満しれるびょん。ザビ子ー居るんかー?」
「お帰りィ犬ちゃん、そして相変わらず鼻が良く利く! はいコレ犬の分、夕飯の前には食べちゃ駄目だよっ」
「ヒャハ、チョコら! さんきゅザビ子。
甘い匂いの元はチョコだったんら、今食いてぇす!」
「駄目だよ、ご飯食べた後にしようね。お腹一杯になっちゃうからね」
「オレそんらヘマしねーびょん! だから今食いてぇびょん!」
「甘いのか、甘いのが欲しいのか、このイヤシンボめ!」
「あっ、なにしれんらチョコ投げたりして勿体無ェら!」
「あはは、犬文句言いながらもナイスキャッチ〜♪
然も全部空中キャッチとか、マジ動物的ぃ!」
「らって、勿体ねェびょおん」
「可愛いなァもう! そんな可愛い犬には特別夕飯のおかずを一品多くしちゃおう!」
「ヒャハ、さんきゅザビ子……ってなんら漠然とした怒りが込みあげっな、それ!」
「まあまあ。Happy Valentineってコトで?
それはそうと犬、千種と骸は? 二人揃って散歩?」
「…………」
「? 犬、どったの、顔強張って怖いよ」
「柿ピーは、散歩。骸さんは…………ちょっと買い出しに行ったびょん」
「買い出しィ? あの骸が買い物なんて……プフー、似合わね〜」
「……」
「あの面倒臭がりな千種が散歩ってのも、意外だな……というか犬も散歩に出掛けてたよね?
なになに、今日はみんなして、お散歩Dayなの?」
「ま、そんらトコびょん。ザビ子、ザビ子! 早くメシの支度済まそーぜ!
骸さんが腹空かして帰ってくんれ、メシ作って待ってなきゃ骸さん拗ねるびょん!」
「うん、それもそうだね。早く作っておかなきゃ骸煩そうだし、千種は無言で詰め寄って来そうだしねぇ。
因みに本日の御品書は……和食中心です。全部事細やかに言うのメンドかった」
「ザビ子────────オレもメシの支度手伝うびょん……」
◇ ◇ ◇
「……骸様。手筈通りに事は進んでいます」
「そうですか。順調に進んでいる様でなによりです、千種。
まあ、仮に計画が頓挫していれば、お前達の弱さが明るみに出てしまうというもの。
順調に進んでいて良かった、僕はこれで漸く一安心で心晴れやかといった所でしょう、クフフ……」
「……骸様、この計画の事はザビ子には」
「お前には関係の無い事です千種、ザビ子には関わりの無い事だとお前も分かっている筈」
「……失礼しました。今のは、俺の失言です」
「分かれば良いんですよ。クフフ、あの並森相手に喧嘩を売るのは愉しい……さて、彼の人物は動くんですかねぇ?」
「……動くでしょう、俺達の計画に気付かず、滑稽に踊らされる結果になるでしょう」
「だと、良いですねぇ。クフフ…………さて。そろそろ黒曜センターに帰らなければザビ子が心配します、千種、お前は先に帰っていて下さい。
僕は最後の仕上げに駒をヒトリ、用意しなければ……クフフ」
◇ ◇ ◇
「遅いねえ、なぁにしてんだが二人して。
ザビ子ちゃんお手製のご飯が冷めちゃうよねぇ、犬」
「────────ザビ子、お前一人で先食っれろ。オレちょっと外行ってくるびょん」
「え? あ、ちょ、犬どこ行くの?」
「…………二人を、探してくるびょん。メシあったかい内に食っれ待っれろ」
「ぅん…………犬、帰って、来るよね……みんな帰ってくるよね?
ちゃんと、千種と骸と犬の三人で……帰ってきてくれるよね?」
「……っ!?」
「ぇ、あれ、ご、ごめん…………なんでもない……とにかく、早く帰ってきてね。
そうじゃないと、ご飯全部私ひとりで、食べちゃうからね?」
「おう。ちゃんと帰っれくっから心配すんらびょん。ザビ子は精々全員分のメシ食っれ太んねェよーに気を付けろびょーん!」
「うん────────ちゃんと、夜が明ける頃にはみんなで帰って来てね」
キミ想う。キミ思う。キミの儚せを冀う。
もうこの時間は帰らないと、彼女は理解していた。
彼らが帰ってこない事も、彼らが犯した罪も、彼らの所業も、彼女は既に識っていたのだ。
それでも、彼女は彼らの道の妨げだけはしないと、独り、誓っていた。
──失う瞬間気付くモノ、彼らは『仲間』──
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