星屑の煌めき




(Fate/士郎)ちゃんとこっち向いて




「……イギリス、か。なんかなぁ、そこに行くのを目的にしてたけど……いざ来いって言われると躊躇うもんだな」

「どうしたんだザビ子、夕飯後こんな時間に縁側に座り込んで……考え事か?」

「衛宮くん。……うんまあ、ある意味考え事、かな?」

「?」

「うぅ……そんな可愛らしく首を傾げないで、私の決心が揺らぐぅぅ」

「可愛らしいってのは男にとって最高の貶し言葉だって、知ってるか?」

「まことにごめんなさい。
────あはは、やっぱここは落ち着く、良いなこの感じ……」

「話が見えないが…………お前、俺の話聞いてるか、聞いてないだろ」

「聞いてますよ、君は私を気遣ってきてくれたんですよね。その気遣いは本気で癒される。
私ね、ずっとこの衛宮邸に居たいって思ってしまう程に、ここの居心地がいいの」

「────なら、好きなだけ居ればいい、お前がずっと居たいと願うのなら好きなだけ居たらいい。
ここはもうザビ子の帰る家だ、ザビ子の帰りを待ち望む家族だっているんだから、それはもう立派な自分の帰るべき場所だろ?」

「衛宮くん────有り難う、私少し元気出た……うん、頑張るよ」

「ああ、頑張れよ…………って話の全貌が分からないのだが」

「あれ、言ってなかったっけ?
私。近々魔術の本場、イギリスはロンドンの時計塔に行くんだよ」

「へえ、そうか。それは色々と大変だな────────って、はァ!?」

「暫く向こうに行ったきりになるだろうし、今の内にこっちで出来る事をしとこうかなぁと?」

「なんだそのちょっとコンビニ行ってくる、みたいなノリ。
お前事の重大さをちゃんと理解してんのか!?」

「うわ、いきなり大きな声出さないでよ。びっくりしたなぁもう……。
大体、時計塔へ招かれるってのは魔術師にとっては最高の名誉なんだよ、ちょっと浮かれてしまうのも仕方のないことなの。
高校を卒業したらってのが向こうの出した期限なんだけど、私達ももうそろそろ卒業でしょ、三年の冬休みが終わったら卒業なんてあっという間だし」

「それはっ…………そう、だが。ザビ子、お前この前卒業したらどっかの企業に就職するって言ってただろ、あれは嘘か?」

「表向きはイギリスの企業に就職って話。ウチの姉妹会社が向こうにあるからそこに就職ってカタチ。
まぁ、不安の方が多いけど私の目標だったトコからのスカウトだし、張り切って勉強してくるよ」

「ザビ子……お前、分かってない……! お前がここから居なくなるって事だろ、それは!
帰ってきてお前が居ないって事が、どんな意味か、分かってない…!!」

「…………ぇ、みやくん?」

「ここに帰ってきて、お前が居て、藤ねぇや桜が居て、皆が居る……。
一人でも欠けたらダメなのに、なのに、お前が……ザビ子が欠けたら、俺は……!!」

「────────衛宮くん……」

「お前の事なんかもう知らねぇ、どこへでも行っちまえ……!!」

「……ありがとう衛宮くん。そこまで悲しんでくれるとは、思わなかった。
だからこそ、行かなきゃならないんだ────出来れば、君も一緒に」

「…………っへ、あ?」

「良く良く考えてみたら、私がそんなの耐えられない。
衛宮くんと離れるのは少しだけでも辛いんだから、それが日本と倫敦ロンドンだよ、普通に私が無理だよ。
でも時計塔には行きたい、だってある種の悲願でもあるし招かれるのならば尚更行かなきゃ。
でも衛宮くんとは離れたくない。だったら、衛宮くんも一緒に来ればいい。
私と一緒に時計塔に行けばどっちの問題も解消されるし、ほら一石二鳥?」

「…………」

「勿論、衛宮くんが嫌と言うならそれもまた仕方のない事……ちょっと寂しいけど一人で行くよ。
私に君の行動を縛る権利もなければ権限もない、君の人生の妨げだけはしたくないんだ」

「…………」

「やっぱり、嫌、だよね? ……分かってたけど……仕方ない、イギリスには私一人で────」

「因みにどれくらい向こうにいる予定なんだ?」

「へ? どれくらいって、まあ二、三年くらいかな? もしかしたら多分もっとかもしん────……」

「是非とも動向させて頂きたい、宜しく」

「え、そんな簡単に決めていいの!? 良く考えて決断した方が……」

「いや、俺も行くぞ。それとも、ザビ子が俺と一緒に居たくないって言うなら俺は止めておく」

「是非ともお願いします。…………あれ、なんか誘導された気がする」

「よし、決まりだな。卒業したら行くんだろ、ならまだ時間はある。
けど、ザビ子の今の成績を考えてみると卒業できるのかが危ういけどな、アハハ」

「うわ、ちょっと洒落にならない不吉なコト言わないでよ衛宮くん!
最近体力続かないから体育の成績がすこぶるヤバいの知ってる癖に!
セイバーとの契約が、思いの外キツイの知ってる癖に!」

「悪い悪い……それは俺が一番身に染みているさ、エンゲル的な意味でも。
ま。卒業まであと数ヶ月あるしさ、思い出沢山残そうぜ」

「あはは、そうだね。出来る限りの思い出、残そうか。
日本での思い出……例えば────衛宮くんが私に魔力提供するとか?」

「なっ────!!?? ば、そ、駄目だそんな事、絶対駄目だ!!」

「衛宮くんのその左腕魔術刻印、元は誰のだと思ってるのかしら」

「う────────然し、だな……それは、その……それとこれとは、また別問題が発生してしまうというか……歯止めが効かなくなりそうで怖いというか……理性の箍が外れそうというか

「あはは、冗談冗談。そんなものより私は君と過ごす一瞬一瞬を大切に過ごしたいよー。
不束な私ではありますが、何卒宜しくお願いします、衛宮くん」

「…………なんか、その言い方だとザビ子が嫁にくるみたいで照れる、とても照れる……」


















































私を見ていて、私だけを見てれば良い。

君が紡ぐコトバはまるでマホウのようだ。














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あきゅろす。
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