星屑の煌めき
(復活/黒曜)フォルテッシモ
「────さて。今日の朝食は昨日の白滝の煮物と……サンマの刺身だな、うむ」
「っくぁあ〜ぁ…………お早う御座いますザビ子、今朝はやけにご機嫌のようでなによりです」
「お早う骸、今朝はいつにも増して気怠げだな。というか寝足りないという顔をしている」
「それはもうザビ子のお陰で、計画に支障が出ましたからね。
心配事と悩みの種が増えて眠れないんですよ」
「いつまでも過ぎた事をネチネチと……小姑かお前」
「僕はザビ子と違って神経図太くないですからね、繊細なんですデリケートなんですナイーブなんです」
「ッハ……言ってろ。それよりもお前今から顔洗いに行くんだろ?
だったらついでに千種と犬も起こしてきてくれ。朝食は皆が揃わねば始められない」
「了解しました。すぐに起こしてきましょう」
◇ ◇ ◇
「……あれ…………確かこの辺に置いた気がするんだが……どこいった」
「ザビ子さんおっ早うごっざいまーふっ。……って、なにしてんれすか?」
「む……その声は犬、か? ……お早う。いやなに、ちょっと探し物を」
「なんかなくしらんれすか?」
「ああ。私にとってなくてはならない身体の一部が……眼鏡が、眼鏡がどっかいった」
「そーいや、いつもかけてる眼鏡してねーす、ザビ子さんて目が悪かっらんれすね」
「ああ……もう、眼鏡がないとなにも見えない、明日も見えない……人を判断するのさえ出来ない。
正直に言えば、犬の顔すら見えない。先刻だって声だけで君と判断した」
「ふへぇ、それって結構な目の悪されふね……。ザビ子さんて眼鏡ないとなんも見えない人らったんれすか、初めれ知りましら」
「ん、まあソレさえあれば日常生活に支障はないが……なくすとまず……い?
……む。犬、君今移動したな、どこへ移動した、見えない相手と会話は辛いんだから勝手に動く、なっ?」
「っ、ザビ子さん危ねぇ────……!!」
「────む。どうした犬、なにが起こった」
「あっぶねぇギリッギリセーフれす……今ザビ子さん転びそーらったんれすよ、ギリギリれオレが受け止めっ……!?」
「おや。犬、君の顔がやけにクリアに見えるんだが、何故だ」
「うわわわすいませんザビ子さん緊急事態らったんれこのハプニングは許しれ欲しーびょん!!」
「ハプニング……ふむ。成程、良く解らないが今私は君に抱き締められているのか?
あとそんな急に腕をひっぺがされると作用反作用で────……」
「あイッデェェェ!!!!」
「……どっかにぶつけるぞ、って遅かったか。
大丈夫か犬、傷の具合を見せ……って、なにも見えない私が言うのもなんだが」
「っ、ザビ子さん顔近いれす顔近いれす!! もちょっと離れてくらはい!
色々と心臓に悪かっらり、目に毒な双丘が重なりあう谷が見えらり精神的に危なかっらりれ危ネェす……!」
「? 言ってる意味が良く分からないが……とにかく傷を見せろ、至近距離なら見えるからもっとこっち来い。
ほら、私が診るのは嫌かもしれないが傷を放っとくと大変だぞー、あ、ここ血が滲んでる……」
「いや嫌っれ訳じゃなくれ…………ッ、痛ェ! そこダイレクトに傷口触ってまふ!」
「悪い。良く見えないが良く診とこうと思って……触診った感じ特に目立った外傷はなし、コブと擦り剥けて赤くなった跡があるだけだな。
今すぐ手当てと言いたい所だが────生憎眼鏡がないとソレもままならん……」
「いーれすよ手当てなんて。オレ頑丈れすから放っとけば治りまふ」
「まあ君がそういうならば私も強くは言わない。それより犬、悪いが眼鏡を探すのを手伝ってくれないか。このままじゃ朝食の支度が」
「あ、はいびょん。良く見たら朝飯の支度途中らったんれすねぇ、そーいやオレ腹減ったびょーん」
「だろう。何故なら私も腹が空いた……出来るだけ早く支度を済ませねばサンマが痛む、生魚は足が早いからな」
「そーれすね、早くめっけて飯食いたいれす! ザビ子さん眼鏡はどの辺に置い──『バリンッ』──ばりん……?」
「……」
「……」
「…………犬。今の音は、もしや」
「……すいません。怖くて足あげられないんれすけろ、多分……今オレザビ子さんの眼鏡踏んれます」
「…………犬。君、死亡保険に加入していたかな?」
「すいませんっしらァアァァアア!!」
『迚も強く』動き出す二人。
「仕方あるまい。暫く君には私の視力の代わりをして貰おう。
私から一時も離れるなよ、トイレと風呂は別だが」
「ひぇぇ……骸さんの怒りを無駄に買いそうれす!」
「…………おはよ……なにしてんの、二人して」
「お早う千種。聞け、犬は私と一生を添い遂げるのだ」
「……そう。とりあえず、犬、なにしたの」
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