星屑の煌めき
(復活/黒曜)願いを叶えて
「冒険したーい」
「柿ピー、ついにザビ子が壊れたびょん」
「……そう。ほっとけば、めんどいし」
「ちょ、おめーら私を放置すんなコンチクショウ。私は冒険してぇのです」
「……そう。じゃあ、はい」
「? なにこれ? お財布とメモと……隣町の地図?」
「……ここのスーパーで洗濯洗剤と柔軟剤が安いから、買ってきて」
「っ千種…………うん、私家庭的な男の子嫌いじゃないよ、嫌いじゃないけど、なんか相手にされて無い感じと冒険=お使いっていう方程式中学生の扱いとしてどーよ」
「あ、オレそれ知ってる、『はじめてのおつか○』ってヤツら!」
「……タイムサービス。五時からだから、宜しく」
「んなの骸にさせりゃ良いじゃん────ねえ、骸?」
「呼びましたかザビ子」
「ずっとそのソファの後ろに待機しといてその言葉はどーよ。
まあ説明しなくても良いから楽ですが。
アンタ今暇でしょだから買い出し行け因みに反対意見は認めないから」
「せめて僕の言い分を聞いてからその荷物を渡して欲しいのですが、まあ暇ですから別に構いませんが。
そのかわりザビ子、褒美としてザビ子が欲し──────」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァアァァアアァァァァァ!!!!!!!!」
「グフゥゥウウウ!!」
「スッゲー!! ザビ子てスタンド使いだったんら、オレ知らなかったびょん!!」
「……俺はあえてなんも言わないけど、骸様、タイムサービスは五時からですのでなるべく急いで向かって下さい」
「ぐ、ぐふぅ、誰一人として僕の事を気遣う者がいないとは、流石ですよお前達……!」
「柔軟剤と洗濯洗剤だかんねー、んじゃあ、行ってらっしゃい?」
「ザビ子、ここ二階。窓から蹴り落としたりしたら流石の骸さんでも死ぬんじゃれ?」
「まあ骸だし。大丈夫でしょ。
そんな事より私は冒険がしたいんだよ冒険が!
全て揃えると願いを叶えてくれる不思議な球とか、聖なる杯を巡って殺し合いを繰り広げるとか、不思議なランプを擦ると魔人が出てくるとか。
もうなんでも良い、冒険したいっ!」
「中二末期らびょん……ザビ子、あと数年経ったら今の発言を思いらして忸怩たる思いをするびょん」
「うわッ、犬ちゃんの癖に難しい言葉使いやがってもう可愛いんだから! コイツぅ思いきり可愛がってやらァ」
「いだだだだだだ、脛を執拗に小突くらって地味に痛ェびょん!」
「……ザビ子の言い草、なにか叶えて欲しい願いがあるみたいだな」
「お、流石千種! 言葉の意味を読み取るのが上手いねえ、甘いの一個あげちゃおう」
「……要らない。それより、願いってなに……微妙に興味ある」
「へ? え、別にそんな大した願い事じゃないし言う必要ないすよ」
「オレも微妙に興味あるびょん、聞かせろよザビ子、面白かったら座布団やんよ!」
「なにその寄席気分、止めてよ私をこれ以上辱めないで〜」
「………………それは、もしかしたら俺と同じかもしれない────?」
「ぇ……千種と、同じ? 千種も、私と同じ事考えてるってこと?」
「…………そして、多分、犬も、かも」
「多分てなんらよ柿ピー! 多分オレも同じ考えらと思うけろ、分かんねーびょん」
「……犬がそこまで言うなら……そうかもな……。……知らないけど」
「────そうだと良いなぁ。だって、私の願いが叶ったら皆一斉に叶うって事だよね?
手間が省けるし、それでいて合理的だし〜?
まあ同じだったらの話だけど、さ……」
「……そうだな。もし一緒だったらの話だけど」
「ザビ子は単純らからなぁ、案外一緒かも知んねーびょん、ヒャハハッ!」
「犬ちゃんはまだ可愛がり足りないようだねぇ!」
「いだだだだだだ、だから脛を執拗に地味に蹴るらよ!」
お願い神様、魔法をかけて。時を止めて。
────願いは一つ。
『いつまでもこうして、皆とずっと一緒にいられるように』と切に願う。
神にも仏にも、悪魔にだって願う。
庶わくば、この仮初めの平穏が、日常になれば良い────
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