星屑の煌めき
(Fate/月姫/七夜)これが所謂、運命
これも所謂、運命・続
「…………うーん……」
「いかがしたご主人様? いじらしい眉をそんなに顰めては愛らしい顔が台無しだぞ?」
「台無しなのは七夜のその気障ったらしいセリフ回しの所為かな。
その口調、止めてくれないって私頼んだよね、止めてって令呪使う勢いで頼んだよね?」
「それは失礼をした────それで。“ザビ子”はどうしてそんなにも陰鬱な顔をしているのかな。
まあ俺としては、こっちの世界で唯一の娯楽ではあるから、君のその百面相は見ていて飽きないがね?」
「……っコイツ本当に悪鬼だな……今回の聖杯戦争について、考えてた。
聖杯戦争の仕組みは、確か君に説明したよね?」
「ああ。七人の魔術師が七騎の英雄を使役して殺し合わせる、それが聖杯戦争だろ。
大まかな知識は喚ばれた時に自動的に叩き込まれているが、ざっとこんな説明で相違ないだろ」
「その通りなんだけど……どーにも今回の聖杯戦争は毛色が違うっていうか……。
でも考えてもみて、七夜。
君は昨日『ランサー』と戦った。その後に『アーチャー』、『セイバー』。
そして今日、『バーサーカー』と戦い、『ライダー』に『アサシン』と『キャスター』。
……ねえ、可笑しいと思わない? 七夜は『アサシン』の役割なんだよね?」
「七騎しかない筈の席に────八人目の存在しない俺の存在、か。
確かにまあ、おかしな話ではあるが……。
ご主人さ……いや、ザビ子は前回の聖杯戦争を知ってる口ぶりだが?」
「ちょっと、私前回のには参加してないからね。
前回は十年前だから私まだ七つだし、まだ刻印を継承してなかった頃だし。
母が教会の人間で、父が協会の人間だったからそれなりに知ってる訳……でもこんな可笑しな話は聞いてない。
前回なにかあったのか、今回から可笑しくなったのか────多分、前者だろうな……」
「ああそういえば忘れていたが────ザビ子。ここで良い知らせがある」
「……? どうしたの七夜、そんな怖い顔して真面目な声出して」
「サーヴァントは九人現界る。この気配からして……真面じゃあないな」
「……ぇ? 九人目の、サーヴァント……? そんな、そんなの有り得ないよ……だって聖杯は七騎の英雄しか喚べない筈でしょ……!?」
「それが、俺を喚んだ主のセリフかいザビ子? まあ俺という存在不適合者がいる時点で可笑しいと気付いた辺りは聰明かな?」
「うっさい七夜、ちょっと黙っててよ今考えてんだから……探りを入れた方が良い、のかな……。
七夜、確か君の能力に気配遮断があったよね、ソレをフル活用・フル活動して全サーヴァントを調べてきて。大まかでいい、出来る所まででいいから。
私はマスターの方に探りを入れる……どうにもあの神父が臭いんだ……」
「御意に御座います、我が主。
貴女様が望むのであればこの七夜志貴、天命を全う致しましょう」
「うん。さっさと行け」
◇ ◇ ◇
「ザビ子」
「お帰り七夜、ご苦労様。なにか分かった?」
「大体な。一人を除くサーヴァントの真名まで解った。
九人目のサーヴァントの正体はアーチャー、前回の生き残りだ」
「ぇ…………なん、て?」
「アーチャー、真名をギルガメッシュ。人類最古の王様だよ。
知らないか、ギルガメッシュ叙事詩……まあ結構マイナーな神話だから知らなくても無理はないが」
「し、知ってるよギルガメッシュ叙事詩ぐらい!
あれでしょ、2/3が神様で親友が神が作った泥人形エンキドゥで、不老不死の薬を求めたっていう人類最古の暴君」
「ご存知だったか、流石は我が主、博識であらせられる」
「いやぁ、まあね……って、そうじゃくて。
問題はなんで前戦争のサーヴァントがまだ現界しているのかって所よ、着眼点が違うって!」
「言葉の通り、前回の生き残りだろう?
────サーヴァントを現界させる方法は二つある。
ひとつ。聖杯戦争に勝ち残り、聖杯にサーヴァントを現界させるよう願う。
ひとつ。サーヴァントに人を食わし続ける。
恐らくはそのどちらかを使ったんだろうさ」
「む……七夜って以外と物知りだね……時々私も知らない事を知ってるし」
「こちらへ喚ばれる際必要最低限の知識を植え付けさせられる、それの恩恵故と答えよう。
なにもザビ子が己れの無知さを嘆く必要は皆目ないから安心しろ」
「よし、自害しろ七夜志貴」
「貴女様がそう望まれるならばこの命、喜んで差し出しましょう。
源氏星に従うのが天狼座の宿命……華々しく散る事さえ叶わなんだが、主の命なら致し方ない。
……じゃあなザビ子、色々愉快しかったぜ、ザビ子────……」
「え、ちょ、待って七夜、今のは冗談────……!!」
「無論知ってるが? こちらもほんの冗談さ、ザビ子の照れ隠しに付き合ってやった猿芝居ってトコだな」
「なっ────……!! 〜〜〜〜っの、馬鹿七夜、アンタなんかバーサーカーに両断されたら良いんだ!!」
「やれやれ……からかいが過ぎたからってそうむくれるなよザビ子、俺が悪かった。
だからそう攻撃するな、当たったら流石の俺でも致命傷は免れん」
「人外のモノを殺すのに長けた対人外用の概念武装、これに当たったら流石の君も消滅するだろうね……!!
七夜なんか、もう知らないんだから、勝手にくたばれば……っ!?」
「……ククク、俺も随分と愛されたもんだな。
嗚呼……俺にあるまじき事だがザビ子を殺す気がおきない……この事態に気付かせぬ内に、事を終らせたいもんだな」
殺人鬼の役割を忘れかけた悪鬼。
「次そんな洒落にならない冗談やったら本気で怒るからね……あんたに消えられたら困るんだから」
「了解だザビ子、貴女様がそう望まれるならば」
「うん。それも次やったら本気でぶん殴るから」
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