星屑の煌めき




(Fate/士郎)アマオト




「────────雨……」

「おや、ザビ子。どうしました?」

「セイバー……うん、ちょっと、雨が降り始めたなぁって」

「この調子だと本降りになるのにはそう時間は掛らないでしょう、用事があるなら早めに済ますと良い」

「うん。そう、だね。私には用事はないけど、士郎はあるみたいだし……」

「ザビ子?」

「…………ごめんね、セイバー。私ちょっと出掛けてくる。夕飯前には戻るよ、今日の当番私だし」

「分かりました。……気を付けて下さいザビ子。
雨は悪いモノを呼び醒ます、足元を掬われないように」





◇ ◇ ◇






「…………士郎、みぃつけた」

「────ザビ子か……」

「なにしてるの。こんな雨の中、傘も差さずに立っていたらいくら士郎が馬鹿でも風邪引いちゃうよ」

「……ああ。そうだな」

「────────こんな雨の中、どこに出掛けるのかと思えば……やっぱりココか……。
この公園は過去の物語の終点にして現在の物語の出発点、始まりの終わり、冬木中央公園。
十年経っても一面焦土だと、公園っていうよりただの広場って感じだけど……」

「……十年前。俺はここで家族を失った。そうして切嗣と出会って新しい家族を得た。
なんの因果か、十年前の丁度今日、俺が親父に拾われた日に、また同じ様に雨が降るなんて」

「全てが終わって、全てが始まったあの終結の戦いから十年。
長かったといえば長かったし、逆もまた然り。
ねえ。士郎は切嗣とセイバーを……ひいては聖杯戦争なんて馬鹿げたシステムを作り上げた御三家関 係 者を恨んでる?」

「恨んでなんかないさ。寧ろ感謝している。
俺はあの事故があったからこそ、お前らと出会う事が出来たと思ってんだ」

「寛容だね士郎。私……全く恨んでないと言ったら嘘になるよ。
あの事故の所為で私は家族と住む家を奪われたんだから、当事者にも同じ目に遭って欲しいとさえ考えてる。
まあ、遠坂も間桐もアインツベルンも家族を無くした事に変わりはないけど」

「……ああ、そうだな」

「でも、アレのお陰で私は士郎と出会う事が出来たんだからちょっとは感謝してるし、意味のある事だったと思える様にもなれた。
……ねえ、私も大人になったと思わない?」

「あはは、そーだな。昔と比べりゃ大人になったなザビ子。
やっと中身が追いついてきたか?」

「…………良かった。士郎が今日初めて笑ってくれた…」

「────────……」

「今日、朝から士郎笑ってくれないから……笑顔は作ってたけど、張り付けた笑顔だってすぐ分かるよ。
だけど────────今やっと笑ってくれた。
既に癒えたと言えば嘘になるその心の傷、癒す事は不可解だと神父は宣った。
けど人間は強いからソレをバネに強くなる。
そんな生き証人が毎日傍にいるから、私も考えを改める事が出来るんだよ」

「…………ザビ子、お前は気付いてないかもしれないが、俺はお前に支えられてこの十年を送ってきた。
俺はお前という存在がいたから、強くなれた」

「私が、士郎を支えた……?」

「ああ。切嗣が引き取ってくれたと言っても、アイツは家を留守にする事が多かったろ?
一人であんな広い衛宮の屋敷に残されるのは辛い、静寂に押し潰されてしまう。それをどうして堪えるコトが出来たと思う?」

「…………私と、藤ねぇが、毎日の様に押し掛けたから」

「その通り、察しが良くて助かる。
親父が出掛けると急にやってきて、親父が帰ってきてもずっと居て、いつの間にかザビ子がウチにいるのが当たり前になってたんだ。
お前という、あったかい存在に俺は助けられたんだよ」

「…………知らなかった、まさか士郎がそう思ってたなんて。
だって私が行くといつも喧しいって呆れて怒っていたのに」

「あれは、その…………照れ隠しといいますか……察せよ、ばか」

「無理です、だって私、士郎の考えすら察せてなかったんだから」

「……。まあそうだな、ザビ子は昔っから人の気持ちを汲むのだけは出来るのに人の気持ちを察するのはからっきしだったし」

「うっさい。それは士郎だけには言われたくない。
あ────────雨が上がってく……見て、ほら新都の空、虹がかかってる!」

「本当だ……綺麗だな、虹なんて久々に見たぞ、俺」

「雨が降ったあとは空気が澄んで光が真っ直ぐ届くってハナシ、本当だったんだね……。
士郎、帰ろう────────みんなが待ってる衛宮の家に」

「ああ。そうだな、そうするか……もうじき夕飯だし。今日の当番ザビ子だろ間に合うのかー?」

「ふふ、余裕で〜す。────ね、手ぇ繋いでもいい?」

「え……な、なんでさ」

「士郎雨に打たれて体冷えちゃってるでしょ、だから私があっためたげる。
お望みならば、抱き締めて体全部を暖めてあげるよ」

「望まないからそんな事! ……ごほん、ま、手を繋いでザビ子の体温を奪って暖まるってのもアリかな……うん」

「うっへへ………………さて。帰ろう、士郎」

「ああ、俺達の、帰りを待ってくれている家族の元に────────……」













































アマ駆ける神竜が飛翔するオトが、虹になるんだ。

「お帰りザビ子、もうとっくに夕飯時は過ぎてるの、知ってる?」
「あはは、ごめんね遠坂さん。今すぐ作りますよ〜、待たしてごめんねセイバー」
「ただいまセイバー、悪かったな夕方の稽古サボっちまって……」
「いいえ、気にしてません。それよりシロウの方こそもう大丈夫なんですか? 今日は朝から具合が優れなさそうでしたが」
「え……あ、ああ大丈夫だが……なあセイバー、そんなに分かり易いのか俺って?」













◆ ◆ ◆















































←前

次→


227/329ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!