星屑の煌めき
(Fate/士郎)記憶より記録、鮮明に
「ちょっと聞いてくれ士郎!」
「なんだザビ子。俺今忙しいから後にしてくれると助かる」
「忙しいって、夕飯の支度してるだけじゃな────あ、今日のメインはハンバーグとあさりの酒蒸し! 頑張って士郎、私も手伝うよ!」
「飯には従順だな、お前」
◇ ◇ ◇
「ゴチソーさま! 士郎、お茶!」
「少しは遠慮ってものをしりなさいザビ子、士郎、わたしはパックじゃない紅茶ね」
「いや遠坂、お前も遠慮を知れ」
「と言いつつ、そそくさとお茶の支度をしだす士郎は主夫だよね……動きに無駄がない」
「流石ね。ホントにザビ子、アンタ良い物件見つけたわねぇ……家事は全部衛宮君に任せれば自分は外でやりたい放題じゃない」
「いやいや遠坂さん、私はそんな外でフラフラしないよ。外出るならちゃんと稼ぐモン稼ぐからね。
あり、そーいや今日桜ちゃんどったの」
「桜は今日明日手伝いにこれないとさ、昨日そう言ってたろー?」
「なんと、聞いてなかった」
「はい、これザビ子のな。遠坂は後二分程お待ちを」
「ん。ご苦労、褒めてつかわそー」
「そういやザビ子、お前夕飯前になんか俺に言いかけたけど、なんかあったのか?」
「ぶ? ぶぶぶぶ……」
「お茶に口をつけた状態で話さないの、無作法者」
「へーい。つまりアレだ、私は士郎が大好きだって言いたかったんだ」
「…………ばっ!!??」
「うっわ、ご馳走様…………衛宮君もそろそろこの子の突飛な発言にも慣れなさい、そんな顔真っ赤にしてるといじって下さいって言ってるようなものよ」
「どれぐらい好きかと言うかとですね、士郎がオカズなら私ご飯五十杯は軽いぜ!」
「へえ。じゃあ実際にやってごらんなさいなザビ子、今から炊飯器を総動員して十合ぐらい炊いてあげるから」
「すみません無理ですこれは言葉の綾です。
────────あ、オカズって別に変な意味じゃないからね、安心して下さい士郎」
「な……っ!?」
「あーぁ……赤い金魚みたいね衛宮君。
ザビ子も変な事言わないの、これ以上士郎赤くなったら倒れるわよ、きっと?」
「マジッスか〜、マジッスか〜。士郎も良い加減に慣れてくれると助かるのにぃ。
それこそ、どっかの赤い騎士のよーに────コレがアレになるとわ、人類七不思議の一つにランクインするよ?」
「不名誉のランクインね、それ。
よし、二分経ったわね。────士郎、注いで」
「お嬢さんお嬢さん、これ一応私の彼氏だからそんな執事みたいにコキ使わないでくれると嬉しいナ。
士郎、お煎餅持ってきて! 歌舞伎揚げな!」
「お前も少しは俺の事を彼氏として扱えよ!」
「最大限の譲歩で彼氏扱いしてますよ、士郎愛してるだからお願いお茶請け持ってきて!」
「それ明らかに召使い扱い、ないし茶坊主の仕事だろ!?
まあ取りに行くけど…………はぁ、なんであんな奴を好きになったりしたんだろ、俺……」
「なんか言ったかい、士郎」
「うわ!! な、ザビ子いつの間に……!?」
「士郎の手伝い。アンド遠坂さんのケーキを取りに来ました、コー○ーコー○ーで今日買ったんだと」
「さ、左様ですか……」
「……士郎、なんか顔色悪いよ、どしたの」
「いや別になにも無いから安心しろ。ほら、ザビ子のはこっちな、遠坂のは……あれ、無い」
「え、冷蔵庫に箱ごと入ってない?」
「うん、入ってない…………選択肢いち藤ねぇ、選択肢にイリヤ」
「いち濃厚……ごめん遠坂さん、ケーキ藤村先生が食べちゃっ……た?」
「? どーしたザビ子」
「いや……遠坂さんが忽然と姿を……ん?
遠坂さんが座ってた所に紙が……なんかのメモかな……なになに……『二人にしてあげたんだから感謝なさいザビ子? 精々ラブラブしてればいいわ、変なぽかしない事ね、衛宮君もアレで一応男の子だんだからね? 凛』────……っ!?」
「! ど、どうした、顔が一気に赤くなったが、冷房弱すぎたか!?」
「いや冷房は丁度良いよ!? こっちの話だから気にせず士郎は茶請けの準備をば宜しく」
「いやもう茶請けは準備出来たが……なんだ、遠坂の奴部屋に行ったのか?」
「なんか夜の糖分摂取は心の贅だから寝るってさ!?」
「そっか。ザビ子はどうする? お前も部屋に戻るか?」
「士郎は部屋に戻る?」
「いや。もう少しここに居るかな」
「じゃ私も居間にいる。少しでも士郎と一緒に居たいしね」
「そうかい。ほらザビ子の分」
「あれぇ!? 士郎が赤くならないだと、赤くなる様に言ったセリフにときめかないだとぅ!?」
「一日そう何回も聞かされりゃ抗体物質が出来ますってな?
もう面食らわないから覚悟しとけ、ばーか」
「クソぅ、なんで私もこんな奴好きになったんだチキショー」
「ふん、その辺はお互い様……って、へ? ……“私も”って……なにさ」
「んー? さきほど士郎が呟いた恥ずかし〜い独白の真似☆
バーッチリ聞こえちゃいましたからね、実は☆」
「うっそマジでか……恥ず……っ!」
「これまた恥ずかしいセリフをぺろっと言ったものですね士郎、末はタラシかヘタレか。
ヘタレは有り得ないか、士郎の行き着く所はアレだし」
「さんきゅザビ子、今度からは周りに気を付けてから呟く事にしたぞ、俺」
「ま。そんな士郎だから私は好きになったんだけどね。
他人の為に必死になって、君のそんな姿がどこか危うくて……出来ないからやらないっていう私に、出来ないと分かっていながらぶつかっていくなにかをくれたり。
馬鹿みたいになにかに打ち込む事の美しさを、諦めるだけの私に、頑張れって言葉を教えてくれた。
そんな当たり前の感情を与えてくれた士郎だから、私は君を好きになったんだよ」
「…………」
「……なーんてね。お茶冷めちゃったね、私淹れ直し────……」
「────待て、ザビ子」
「おぅわ……! ちょ、士郎なにしてますの!」
「……参った。お前はどれだけ俺の理性の箍を壊す気だ……ホントは抱き締めるだけじゃ足りない……それくらいにお前を求めてる」
「ちょ、それなんて遠回しなセクハラ!?」
「お前な、もうちょっとムードっていうモノを考えないか?
折角、俺が今から良いセリフを言おうとしていたのに」
「…………こーゆーの、慣れてない……。
今まで、男の人と付き合った事がなくて……こんな風に抱き締められた事なんてないから……」
「……」
「こんな風に、誰かを好きになった事なんかなかったから。こんな風に他人を求めた事なんてなかった。
特別な誰かなんて作ったコトなくて……他人と触れ合う事なかったの、だから私をこんな風に抱き締めたのは、君だけだわ」
「へえ。それは良い事を聞いた……。
これから先する事は、ザビ子が体験した事のない事だから、どんな反応をするか楽しみだ」
「キャアーーーー士郎の助兵衛ぇぇーーーー!!」
「いや、おあいこだろコレ。いっつも俺がお前からのセクハラに悩まされてる訳だからな?
これでチャラにしてやるって言ってんだから、安いモンさ」
「助けてセイバァアァアアアア!!」
いいんですか?
こんなにアイツの事、好きになっていいんでしょうか。
いいんだよ士郎、それが君の愛したヒトならば。
君がヒトを愛せてよかった、僕は、安心した。
「いやァ、それにしても……士郎、アレよね。ちょっと慣れてる感が……」
「……」
「切嗣さん切嗣さん、私ちょっと貴方の息子さんを冥府の世界に強制送還させますねえ!」
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