星屑の煌めき




(Fate/士郎)吐き出せない




「ザビ子。起きてるか?」

「起きてるよ。なにかご用かしら、士郎くん?」

「悪いな、急にこんな時間に来て……でも良かった、起きてて」

「魔術師は夜にあまり寝ないからね。それで。ご用はなぁに、士郎くん」

「それが忙しそうなザビ子には悪いんだが……俺に魔術を教えてくれないか?」

「え、私が?」

「うん。ザビ子さえ良ければ……っていうか断られたら結構死活問題な俺」

「あれ…………確か貴方は、私の記憶違いじゃなければ遠坂に教えを請うていた筈じゃなかった?」

「それがなザビ子、聞いてくれよ。遠坂の奴酷いんだぜ? いきなり『出来の悪い弟子を教えるのはもう嫌だ、これからはザビ子に教えて貰いなさい』って言うんだ」

「あぁ────・・・・・・」

「納得するな!」

「あっと、ごめんごめん。なんとなく遠坂の気持ちが分かってさ。
それで。素直な士郎くんは馬鹿正直に私に師事を仰ぎに来たって感じかな?」

「馬鹿正直って、遠坂が匙投げたもんだから仕方なくこっちに来たんだぞ、俺……お前の教え方って感覚的指導だからさっぱり分からないし」

「ならこれからは今まで同様独学で学べば良いでしょうに。
そんなに私に師事を仰ぎたくないのなら遠坂に頭を下げてくれば?」

「すみません嘘です冗談です。俺はザビ子に教えて欲しいです」

「はぁい良く出来ました。ご褒美にこの本を授けよう、私が士郎くん用に書いた魔導書だよ」

「え、あ、さんきゅ……随分と分厚いな」

「そりゃそうですよ。貴方用に書いたと言ったでしょ? 貴方は魔術師ではなく魔術使い、貴方が使えるのは強化魔術ではなく投影魔術……それも思いっきり型破りの投影魔術。
ソレらを一から調べあげて、一度噛み砕いてから綴ったんだから、それ位の厚さになって当然というか」

「そんなに手間がかかってんのか? ……なんか悪いなザビ子……俺はお前達に助けて貰ってばっかだ……自分で自分が許せない」

「大丈夫だよ士郎くん。私も貴方に助けて貰ってる」

「? ザビ子が、俺に……? 一体いつ俺がザビ子を助けたんだ?」

「貴方がこうして、私と出会ってくれた事────これだけで私は貴方に大きな借りが出来てしまった程に。
一生を賭しても返す事が出来ない程の、大きな借り……私は貴方という存在に出会えて、迚も助けられた」

「────────……」

「私は貴方から受け取るばかりで、貴方から与えられるばかりで私からはなにも貴方に返せない。
私が出来るのはこれ位……貴方の魔術を補佐する程度。
でも、これじゃあ恩を返しきれない」

「────ザビ子……」

「今まで私が与えられたモノから比べると、大したモノじゃないから、貴方はそんなに気に病まなくて良いんだよ、士郎くん?」

「…………有り難うザビ子。俺もお前に逢えて良かったと思う……。
お前と出会って、俺は自らの歪みをただせたんだから」

「あはは、それは偏に私だけの恩恵じゃないわ。遠坂と桜、セイバーの力が加わって今の貴方があるんだ。
貴方は皆から必要とされ、同時に皆から愛されて存在しているのだから」

「うわ……ザビ子中二っぽいぞそれ、なんかポエム聞いてるみたいで、こしょばゆい」

「いやいやいや……年中厨二の貴方には負けるわ……なに、いつか見た星って……サブい」

「な、それとこれは今関係無いだろっ!?」

「なに、『遠く響く剣の音、それを頼りにして、いつか、その場所に辿り着く』って……BadEnd?」

「もう止めてくれ、もう分かったから止めてくれ!」

「そしてそんな厨二ポエム士郎くんにコレをあげる」

「脈絡の無いプレゼント、なんだこれ……なんだこの会話」

「私はもう眠いし寝たいから、士郎くんはコレに魔力を通す練習でもしなさい。
遠坂のアレより魔力を通し難い曲者だから頑張ってね、取り敢えず今の貴方に必要なのは魔力のオン・オフの切り替え能力。
ソレは気紛れだから、魔力を通す所か撥ね返したり食ったりするから気をつける事」

「お、おぉ……さんきゅ。なんか見た目えげつないな……赤黒くてブヨブヨしてるから、気持ち悪いな」

「────────まあ。とある魔術師の肉塊だし……」

「? なんか言ったかザビ子?」

「ううん。さあ士郎くん、レディはもう寝なければならない時間なの、貴方ももう部屋に戻りなさい?」

「そうだな。悪いなザビ子、忙しい所急に押し掛けて……。
お礼に明日はお前の好きなモノを朝食に出してやるよ」

「あら、士郎くんにしては気が利くじゃない。
それじゃあ、士郎くんの一番の得意料理を振る舞って貰おうかな?」

「了解、じゃあなザビ子、お休み」

「ええ。お休みなさい士郎くん────せめて、夢の中で位、貴方に幸多からん事を……」









































わたしでは貴方の歪みは糾ない。

わたしじゃ無理だから。わたしじゃ駄目だったから。
アイツをブッ飛ばずのは、アンタに譲ってやるわザビ子。













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あきゅろす。
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