星屑の煌めき
(復活/骸)もう誰もいない夜
「骸。今日はお前の誕生日だろう」
「え。…………あぁ、そういえば、そうですね」
「なんだお前、自分の誕生日ぐらい覚えておけよ。まさか自分の生まれた日を忘れてた、なんて吐かしやがる気か?」
「…………」
「なんでそこで微妙な顔をするんだお前は。
別に、私はお前を責めている訳ではないぞ」
「────はい、分かっていますよザビ子。貴女は僕の為に、僕を諭してくれているのでしょう?」
「無論。まあこれといってお前に贈るモンなんて無いが祝言だけは送らせてもらう」
「クフフ、有り難う御座いますザビ子。僕は貴女が僕の誕生日を覚えていてくれた、という事実が嬉しいですから、これ以上なにも望みません」
「そうか、ならそれで良い。然し、この所雨続きでやる事がない……折角だ、ケーキかなにかを作ってやろう」
「え、いいですよ」
「うむ、それがいい。ちょうど昨日ケーキの材料とかもろもろ千種が買ってきていたトコだ」
「アレ、僕、今拒否しましたよね? 無茶しないで下さいザビ子、僕まだ死にたくないですよ」
「私をどこぞの毒蠍と一緒にしないでくれよ、ボイズンクッキングにはならない。
確かに生まれてこのかた料理をした事なんてないが、なんだか勝てる気がしてならん」
「不安要素しか無いですよそのセリフ、改めて下さい、まだ間に合いますから」
「人間に出来ない事なんてない、出来ない事は過去に往く事と未来を識る事と、不死だけ。
その点、これは実現可能な範疇だ。
大丈夫、ちゃんと本もあるし材料と器具は整っているのだから、恐るものはなにもない」
「あります、物凄く恐るものありますよ。ザビ子、貴女の料理の腕という絶対的な不安が」
「骸。チョコとプレーンだったらどちらが好ましい」
「ぇ、あ、じゃあチョコをお願いします────じゃなくて!
お願いですザビ子、僕の一生のお願いです。思い直して下さい!」
「骸。鶏豚牛、どれが好ましい」
「ぇ、あ、じゃあ牛で────じゃなくて! さっきと同じ反応取らせないで下さい、赤っ恥じじゃないですか!!」
「む。お前先刻から私に対して失礼な事ばかり吐かしているな、取り消せ、私はやれば出来る。
伊達に千種の傍に居ないって所を見せてやろうじゃないか」
「見るのとやるのとじゃ大違いですよザビ子……嗚呼、僕は誕生日に死ぬのでしょうか」
「死ぬ気なら一筆認めておけ、後々面倒だからな」
やれば出来る子ですから。
「ケーキが完成したぞ骸。遠慮せず食すが良い」
「うぅ、僕まだ死にたくな────美味し、え、なんですかコレ物凄く旨いですよ!?」
「だから言ったろう? 私がその気になれば出来ない事なんてないと。料理なんてチョロい」
「すみません、貴女を少々侮っていました。これなら何時嫁に嫁いでも大丈夫ですね」
「貰ってくれる相手が居らんがな。千種はその当たりどうも渋っていけない」
「…………まさか誕生日にこんなブルーな気持ちでケーキを食すなんて、夢にも思わなかったです」
6/9 骸ハピバ!
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