星屑の煌めき
(Fate/セイバー)何も望まない旅人
「こんにちはー。士郎居るぅ?」
「おや、ザビ子。こんにちは」
「あれ? セイバーだけ?」
「はい。シロウは凛と二人で新都に向かいました」
「…………へぇ」
「ザビ子、貴女からなにやらドス黒い魔力を感じるのですが」
「気の所為だよセイバー、今私の魔力はほぼ空だから。放出する魔力なんてない。
つか士郎、アイツなに私を放っておいてなに遠坂さんとデートしてんだ。
クソ羨ましい、悔しいからこっちはセイバーと桜ちゃんを引き連れてやる両手に花作戦だ、どうだ士郎羨ましいだろう!」
「…………ザビ子。本当はシロウに口止されていたのですが、密告します」
「? ……なにをさ」
「シロウは今、貴女の為に出掛けているのです。
今日はホワイトデーなる日と聞きます、要するに今日は先月のお返しをする日なのでしょう」
「はぁ、まあ意味合い的には近いね…お菓子会社の戦略ですが」
「ザビ子、貴女は先月シロウにチョコを渡しましたね」
「!? …………ま、まさか……」
「ハイ、そのまさかです。シロウはザビ子に渡すお返しを買う為に凛に意見を求め、買い出しに出たのです」
「……士郎が……あの朴念仁のあの士郎が」
「本当はザビ子には内緒にしろと口止されていたのですが……その所為で我がマスターに謂われのない容疑がかかってしまった。
マスターの潔白を示す為だ、栓無き事とシロウも納得してくれるでしょう」
「……そっか。遠坂さんに意見を仰いだってのはちょっと引っ掛かるケド……その心がけに感銘を受けたから水に流してやるか。
騎士の倣いに従うセイバーがわざわざ密告してくれたんだし、ね」
「……騎士の誓いに反するが、致し方ない事です。マスターに降り掛る疑いの念は取り除かねば」
「────ありがと、セイバー……」
「いえ。然しザビ子、この件は私とザビ子の秘密にしてもらいたい。
口止料を貰っておきながらリークしてしまった、これは騎士の誓いを破るに等しい行為、何卒その旨汲んで頂きたい……」
「あは、判ってるよセイバー。この事は誰にも言わない、この秘密は墓まで持ってくわ。
さぁて。士郎は私の為に何をしてくれるのかな〜っ?」
「ふふ、さあどうでしょう。なにせシロウが師事を仰いだのはあの凛だ、あまり期待しない方が良いでしょう」
「あはは、そうだねっ」
ホントはなにも望まない。
只、君が傍に居てくれたら、私はそれだけで良い。それ以外はなにも望まないよ。
「士郎、遠坂さんおかえり」
「ただいまザビ子、貴女に士郎から伝えたい事があるそうよ、じゃ後は若いお二人だけでっ」
「若いって……同い年じゃないか。まあ良いけど今日は色々さんきゅ遠坂。
ザビ子、あの、これ……バレンタインのお返しって事で」
「っ、これっ……蝶モチーフのシルバーと、その下には紫のストーンが装飾されているネックレス…私が前々から欲しいって思ってたヤツ、なんで士郎知ってるの?」
「お前の考えてる事は、なんでもお見通しなんだよ」
「……とか言って、遠坂さんに師事を仰いだ癖に」
「なんか言ったかザビ子」
「いいえ。……ありがと、大切にするね」
……前言撤回、やっぱちょっと望みます。
他の女の子に優しくしないでね、時々勘違いしてる娘がいるんだから。
私が世界中の誰よりも一番君の事を想ってるんだから、それを忘れないでね!
◆ ◆ ◆
←前
次→
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!