星屑の煌めき
(サモナイ/ディラン)あがないのはな
「ディラン皇子、丁度よい所に居た」
「? なにか俺に用かな、ザビ子」
「特に用などない、が、とりあえず私を匿ってくれ」
「? 構わないが……相変わらず変な奴だな、君は」
「いやいや、それほどでもないよ」
「いや、別に褒めた訳でもないが……ああ、そうだ。さっきファングが君を探していたぞ」
「ゥげえ!!」
「……ザビ子、やっぱり君もランカスタの民が嫌いなのか?」
「────────いや、我が家にそんな教えはなかった。
確かに私は帝国の人間だけど、父が先の戦でランカスタの民に助けられているからね、彼らに感謝こそすれ、嫌悪などもっていない」
「そうか。ザビ子の父上も召喚戦争に関係していたな」
「ああ、そうだ。以来ウチは表面上『反ランカスタ』の姿勢を採るけど、本心はその現状に胸を痛めている訳だ。
因みに、皇子、キミに聞きたい事がある。
……ファングの様子は、その、ど、どんな感じだった?」
「ファングの様子? 怒ってはいない様だけど、なんと言うか、危機迫る、そんな感じはあったかな」
「うぅ……あんな戯れ言忘れてくれても構わないのになんか覚えてそうでなんか嫌だ、顔会わせづらい」
「一体なにをしたんだ?」
「……いやこの間、みんなで飲み比べ大会をしたじゃないか、キミとファラ王女以外で」
「ああ……アレは後始末が大変だったよ」
「私達は楽しかったけどなぁ。
で、だ。そん時に私、ファングと少しばかり口喧嘩した訳さ」
「ははぁ、大分察しがついたぞ……大方、ファングの悪口かなんか言ったんだろう?」
「……ん〜、まぁそんなモノだな。然し……十九にもなってそんなに引きずるかね、アイツ私と同い年のくせに、執念深くて嫌になる」
「俺は素直に謝った方がいいと進言するよ、ザビ子?」
「ディラン議長、これを議題にして裁決したら私は悪くないと思う方、何人立つと思う?」
「…………ムームーとか」
「一人だけかよ、てか人ですらないし、召喚獣だし、幻獣王ウラドの息子だし」
「まあでも、ムームーは多分、君の肩を持つと俺は思うよ」
「王女や神官殿、ルーガも味方してくれないと?
私は女性陣から総スカンされていると?」
「まあとりあえず、議長としては『素直に謝る事』に一票かな」
「皇子、世の中には謝っても償えない罪があるもんなんだ。
贖う事の出来ない罪もある、贖いきれない罪しかない。
人はその身に罪を身体に刻み込み、一生をかけてその罪を背負う事しか出来ないんだ。
人が犯した罪は、一生消える事なく、本人が覚えている事でしか裁かれない」
「…………」
「なぁーんてね。すまない皇子、今のは忘れてくれ」
「ザビ子、今のは……」
「……忘れてくれ」
「……分かった」
「よし。とりあえずここももうじきファングに見つかりそうだ、然らば私はこれにてドロ〜〜ン!」
「────────贖いきれない罪……か。
俺の罪は……父上を止められなかった事だ。
帝国の王国への侵略行為なんて、絶対に阻止しなければならなかったのに……。
俺が弱いから、止められなかった……。
それを俺は一生をかけて償っていくしかない」
贖罪の旅路
彼女の罪、それは王族でありながら亜人に恋心を抱いた事。
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