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 “星”とは国内にしか降らない彩のある石―gem―を指す。

 かつては、煌めく美しさに魅入られた人々の争いの火種となっていた。戦争は長く続いたが、勝利した者達は戦功として星降る土地に城を築き、国は生まれた。

 やがて、平穏な時代が訪れると、人々は gemの研究を始めた。
そして“神に近い力”を遂に見つけ出してしまったのだ。



「どうせ、使わないgemなのだからタダにしてくれたいいのに。元“猫”の私でさえ、せいぜい三割、三割しか引かないんだから!」

「だったら復帰して、命、戻してた方がいいんじゃないか? アクセサリ作りは、がさつな姉さんに似合わないと思」

「いっぺん、魂取り出して純粋なラズリを創り直そうかしらっ」

「あー…ここには、澄んだ gemも、猫の“チョーカー”も無いんだから…確実に消えるぞ、俺…」


 ラズリの首に、姉の細い腕が回される。
ただの冗談なのだが、圧を感じるのは元の職業のせいだろう…。黙ってたら穏和に見える顔なのに勿体ない、と彼は嘆いた。


***


 彼女は最近まで、肉体を失った魂をgemへと戻す資格者『猫』だった。

 猫となるには、潜在能力と長期的な訓練・学習が必須である。
彼女の場合、星の降る前日に特別な夢をみる、それが証。それから約六年、兄弟が顔を合わせるのは年に数回だけだった。

 また、依頼には相当額が必要――こと人間に至っては多額――なため、金を持たぬ者達が資格者を襲うことも絶えなかった。
自己防衛は身に付けざるおえなかった術である。

 だが、例え拐われたとて『澄んだgem・チョーカー・想いと記憶』が欠けていては意味もない。

 二つの物は、星降る土地に建つ搭にしかなく、滅多に外に出ることはない。
仮に揃ったとしても、亡くなった者の想いと依頼者の記憶が強くなければ、不完全な呼び戻しとなり、容姿や性格などが異なってしまう。
その後、捨てられてgemに戻る者も多い。


 ラズリにも呼び戻したい相手がいた。
しかし、彼がまだ幼かったこととその相手が捨て猫だったために、願いは叶えられずに終わった。月日が流れても、患者が滅多に訪れない病院…資金が溜まるはずもない。

 姉が「わたしが絶対に、その子を戻してあげるっ」と彼を慰めたのは、もう十年以上も昔の事である。





 彼の大事な友であり、家族であった『こはく』はまだ帰ってこない。


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