[携帯モード] [URL送信]
@星の降る日に

 石暦1600年11月6日、一匹の猫が天に召された。


 いや、正確に言えば“肉体”が限界を迎えたのであって、魂は生きている
――それが、ここ『エーデル国』の思想であった。





 白壁の家が建ち並ぶ城下町には多くの人々が行き交い、目立つ看板を掲げる店は一段と活気に満ちている。
そんな賑やかさとは、あえて距離をおいた人気のない路地に一軒の動物病院があった。


「相変わらず、人がいないのね…つまらなくないの?」

「別に。患者がいないって事は、健康なやつらばっかで良い事だろ」
「まあー、この“や・さ・し・い”お姉ちゃんが心配してあげてるのにー。厳ついのは顔だけにしときなさい、ラズリ」

「……サンゴ姉さん、何か用があってここに?」

「まさか! いつもの事じゃない、通りすがりよ」


 院長兼医師兼受付である、瑠璃ラズリはああそうだったと思いながら、軽くため息をついた。
彼のひとつ歳上の姉は、いつも仕事の材料を買い付けるついでに、ここに立ち寄っていく。

「今日は“星の降る日”だから」

おこぼれがたくさんあるかと思ってね、彼女は笑顔でそう答えた。

[*前へ][次へ#]













3/6ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!