@星の降る日に
石暦1600年11月6日、一匹の猫が天に召された。
いや、正確に言えば“肉体”が限界を迎えたのであって、魂は生きている
――それが、ここ『エーデル国』の思想であった。
白壁の家が建ち並ぶ城下町には多くの人々が行き交い、目立つ看板を掲げる店は一段と活気に満ちている。
そんな賑やかさとは、あえて距離をおいた人気のない路地に一軒の動物病院があった。
「相変わらず、人がいないのね…つまらなくないの?」
「別に。患者がいないって事は、健康なやつらばっかで良い事だろ」
「まあー、この“や・さ・し・い”お姉ちゃんが心配してあげてるのにー。厳ついのは顔だけにしときなさい、ラズリ」
「……サンゴ姉さん、何か用があってここに?」
「まさか! いつもの事じゃない、通りすがりよ」
院長兼医師兼受付である、瑠璃ラズリはああそうだったと思いながら、軽くため息をついた。
彼のひとつ歳上の姉は、いつも仕事の材料を買い付けるついでに、ここに立ち寄っていく。
「今日は“星の降る日”だから」
おこぼれがたくさんあるかと思ってね、彼女は笑顔でそう答えた。
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