C
ラズリが目覚めたのは、琥珀が戻ってから三日目の昼だった。
久しぶりに光を取り込んだ彼の目はぼんやりと曇っている。視覚以外の感覚で、置かれているのは自らの部屋だと認識してから、ため息をつく。
すると、控えめなノックが聞こえてきた。
一拍置いた後、扉がカチャリと開く。
回復し始めた瞳で、ラズリは入ってきた人物に視線だけを移す。
「あっ! おはよう、ラズリ」
「……」
彼は焦点を合わせるように、数回まばたきをする。この国では珍しい服にまず目がいった。
一枚の布を腹で留めた服。
だが、彼の目を惹き付けたのは琥珀の瞳の色であった。
「あの、ごめんね。…びっくりしたよね」
ああ。姉さんは約束を守ってくれたんだな。
「僕は、」
そうお前は
「琥珀、」「コハク…」
言葉がほぼ同時に重なって、二人共に気恥ずかしさを覚えた。
ラズリが知る“コハク”は猫であり、黄色の体毛をもつ雌であった。琥珀は、人間の男の子であり、黒髪を持つ。
容姿で同じなのは、蒼と緋のオッドアイだけである。
だが、ベット横で目を伏せたり、手を握ったり開いたりする彼をラズリは信じて疑わなかった。
確固とした根拠はなく、ただ二人の間に流れる空気は懐かしさと穏やかさをまとっていた。
「あのねっ、」
「おかえり、コハク」
かけられた言葉に、嬉しさと照れを笑顔に交えて、琥珀は途切れた言葉を続けた。
「ありがとう、呼んでくれて……。 それと、ただいま!!」
君へ 永遠の絆を
あなたへ 一番の優しさを
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