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キリリク
10



けどそれは……

熱が出た、なんて知ったらこの男はきっと医者か看護師でも呼びに行ってしまうだろう。



それよりは





『じゃあ……』



このまま


『もっと、くっついて。
そしたら、俺もアンタもあったかいだろ?』




……熱に浮かされたまま、コイツを抱いてた方が良い。




「寒ぃーの?」

『いや……何か、怪我して弱気になってる……かな?
アンタが腕の中にいると大分マシだけど、さっきまで……何だろう、すげぇ心細かった。』




「人肌恋しい?」

『あぁ……多分、それだ。』






背中に回った腕が、軽く俺を抱きしめる。
指先で、まるで親が子供にするみてぇにイイコイイコと撫でられて、

それがスゴイ心地良いものに感じて、胸が苦しくなった。



「痛くねぇ?平気?」

『なんか……むしろ、痛み引いたかも。』



自分に流れ込む他人の体温に「もっと欲しい」なんて思ったのは初めてだった。

ただの抱擁にここまで「嬉しい」と感じたのも。







「! ……見回り来た。」



廊下に響く静かな靴音。



ユウ、と名乗ったソイツが頭の先まで布団の中に潜った。

中でピッタリ傷に障らない位置で俺に引っ付く。


「ちっと我慢しろよ」



……我慢、なもんか。






両手で抱きしめられないのが……少し、口惜しい。







部屋の中に入って来た足音「達」がカーテンを開けてベッドサイドに立った。

……オイオイ……当直の見回りって普通一人じゃねぇの?



まさか夕方の奴らか?





すぐに対応出来るように、寝たふりしながら気配を配った。

腕の中の存在をキツク抱きしめる。


俺より強いコイツを、何でか守らなきゃいけない気がしたから。







「ね?言ったでしょ?」

「ほんとイイ男〜〜!!」

「背ぇ高ぁい……カッコイイ……」

「彼氏に欲しい〜〜」

「ケンカで刺されたんでしょ?ちょっと危険なニオイ……でもそこがイイ感じ〜♪やっぱイイ男って影あった方がいいよね〜」

「背中も一面刺青だったよ、そう言えば。」

「ホントに?えー、私も見たーい」





……は?




俺見に来た訳?






声からすると4人……。

オイコラ看護師他に見なきゃいけねぇ患者がいくらでもいるだろ。


俺の時間邪魔してんじゃねぇ。



左腕を掴まれて、腕に貼付けられた管が外される。




「腕も筋肉スゴイ……こんな男欲しい〜」


『……ッ……』




結構ぞんざいに血管から抜かれた針の感触に、思わず声を漏らしてしまった。




「ヤダァ!!起きてたの?」

「何処まで聞いてた?」






うあ……うるせぇー……

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あきゅろす。
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