キリリク
3
またいつもみてぇに倉庫でぐだくだ集まりやってたら、外に十数台の単車が停まる音がした。
入口付近にいた何人かが吹っ飛ばされて、銀髪の細身な……男?が少しキョロキョロしたと思ったらこっちに真っすぐやって来た。
「お前か?シュンって奴。」
少なからずびっくりした。
俺はその日、周りに誰も寄せ付けずに壁際でビール片手にイライラしていた。
最近、「副総長」ってポストにいる奴がかなりうるせぇんだが。
よくチームの奴らに奢ったり女紹介したり。そんなもんでそいつは人気がある。
んで調子こいてる。
俺は別にチームをしっかり運営するつもりはねーが、コイツは自分の裁量で新しい人間を入れたり、知らない顔が「幹部」とやらになっていたり。
今も倉庫の真ん中辺りで、その「副」が勝手に俺のバイクの横で、俺のバイクにベタベタ触りながら「バイクについてのご高説」とやらを自慢げに語っていて物凄くムカついていた。
しかも俺はその日いつもの上着を着ていなかったから。
(ちょっと前の公開「教育的指導」で返り血が飛んで、クリーニングに出したの忘れてた)
まぁそんな理由含めてびっくりした。
俺はあまり人がいる場所には顔を出さないから……その物言いなら恐らく写真も、コイツは見たこと無いんじゃないかと思って。
『……よく分かったなぁ。』
「こん中でお前だけ、ズバ抜けて強い。
あとはイキがってるだけの雑魚だ。」
雑魚と、わざと聞こえるように言ったのか。馬鹿にされたと雑魚どもが声を荒げ出した。
……俺の前に対峙して、怯むどころか目を逸らすことすらしない。
おもしれぇ……
知らず口角がにぃ……、と上がった。
壁から背中を離して、手がすぐ届く所まで近寄ってその瞳を見下ろす。
体格差にも怯むこと無く、目の前の銀髪はまっすぐ睨み返して来た。
『……ご用は…何だい?僕。』
「この前うちんトコのメンバー囲んだ5人いるかな?」
挑戦的に軽く肩を揺らしながら、首を少し傾ける。
銀髪がしゃらしゃら、と小さく音を立てて、ツナギの隙間から鎖骨が覗いた。
その、白い肌を見た瞬間、「何か」が込み上げて来そうになって……思わず目を逸らしてしまう。
……何、焦ってんだ俺は。
『……もう、いねぇよ。』
気取られぬように、視線を戻して銀髪を見下ろす。
そのままからかうのも忘れて、ただ真実だけを一言告げた。
「あ??」
『集団リンチなんてな、みっとも無ぇー事やる奴俺の下にいらねぇんだよ。
シバいてその辺に棄てた。』
死んではねぇだろ。
「……っは!!、噂通りの暴君だな。」
『へぇ……噂なんてあるんだ。』
どーせろくでもねぇ奴だろ
自覚ならしてる。
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