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純情boogying
買えないもの
 



初対面の人の前で泣いて、少し気恥ずかしくなって……それから俺はガラスに頭を付けて熱を冷やしながら運転席のジンの事を見ていた。

バス以外の車に乗るのはこれが初めてだから、珍しくて。



「あのな……お前、連れてくるときお前の母親のツケとか言ったけど、違うから、安心しろ。」


『え?』




……何で、何で安心出来んだよ。
そうじゃなきゃジンの店に俺を連れていってくれる理由がなくなっちゃうじゃないか。




『……じゃあ、何で連れて来てくれたの?』


「それは……店の中で一緒に話そう。」



車が停まった前には、ネオンがまだ点いてない看板に黒地に白で【Amour éternel】と書いてある。


ジンが、そばに来た青年(いや、少年と言った方がいいかもしれない)に車の鍵を渡して、突っ立ったまま空を見上げる俺の横に立った。

後ろで、ボボボボ、とかなり低いエンジン音がしてJaguarが走り去って行く。


「これな、フランス語で……」

『……永久の愛。』


ジンが、軽く目を見開く。


「……よく知ってるな。」

『本だけならたくさん読んだ。』




あぁ、素晴らしいね日本は。
この国はなんでも買えるらしい。


この世に欲がある限り、手に入れられない物なんて無い。


あのバカ女は、それだけは教えてくれた。

その通り、欲のまま金を使って何にでも手を伸ばして来たから……



まぁ、金があれば幸せって訳じゃないけど(和子さんの存在は金なんかじゃ買えないし)……幸せにはある程度金が必要で。

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あきゅろす。
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