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純情boogying
アングラの住人とは
 



「……はい、どなたでしょォか?」


昨日耳にした独特のイントネーションがケータイの向こうから聞こえてくる。

確かに直で繋がる番号だったようだ。あの人なら側近くらい居るだろうが、本人が出ると言うことはプライベート用の番号か?と無意識に詮索をしていた。


『……どうも、こんにちは、
昨日の朝ぶりですね?』


[スイッチ]を入れて昨日の朝、アイツに見せた顔に切り替える。
無礼ではないが、下手には出ない。無意識に、姿勢を正してソファに座り直していた。


「……なんだイ、
ホストのにぃちゃんじゃねぇか。この番号何処で?」

『圭介に聞いた。』

「そぉか。なるほど、知り合い程度じゃなくてホントに親しいみてぇだなァ。」

『……ひとつ頼み事があってな、連絡先教えてもらったんだよ。』

「へぇ……で、頼み事ってのは?」


ケータイの向こうで空気が変わるのを感じた。あっちもここから先は【仕事用】ってことなんだろう。


『俺の客、……ホストクラブの。その一人がな、昨日の夜に店で酔っ払って問題を起こしたんだよ。
酔っ払って、ボーイの一人が殴られて、ご本人は逆ギレして帰っちまいやがった。
……その件に関して、俺がうちの店のケツ持ちの事務所に謝罪に行っていた……そういうことにしておいて欲しい。』


「それは……どう言う事で?」

『俺が、代わりに、尻拭いをした。……そう言うことにして恩を売りたいって事だ。
罪悪感を持ってくれた方がこれから好都合なんでね。
俺の客が負い目を感じてそっちに金を払うかはわからないが、そうなったらそれは全額そっちが貰っていい。』

「……で、にぃちゃんはこっちに何をしてくれるんだ?
言っとくが、わかってるよな?
朝の件はとっくに手打ちだ。“俺は嬢ちゃんを見てねぇからな?”」


言外の含む暗喩に小さく「わかってんだよそんな事は」と顔をしかめた。
楓には母親の借金の件で手を出さない、朝の無礼はそれと相殺……条件の良い取引だって事くらい。


『……圭介に、伝言頼んだろ?
アンタがたが素人に頼み事するならロハって訳にはいかねぇよな?』

「それは、……ッチ、分かってんだろ?」


あぁ、これから帰るって知らせてくれたんだろ?

『……どんな形であれ、理由であれ、アンタが俺に頼み事をしたって事実は変わんねぇよ。
交換条件なら周りへの示しもつくだろう。第一、俺の客がそっちに詫びを持っていくのはほぼ確実だ。損な話じゃない筈だぜ、元々。』

体面気にする相手には、交渉も気を使う。
これがヤクザじゃなけりゃ金払ってもいいんだがな。

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