純情boogying
気難し屋の友人
「ふぁ……あ、
んー、じゃあ、お前の家の方に行けばいい訳?」
『そ。
着いたらインターホン鳴らして。部屋番号は3506な。』
「ん、了解……
カード使えねーから、現金用意しといて……」
眠そうな声の後、もう一回あくびが聞こえてきた。
『あぁ、分かった、待ってる。』
金、足りるよな?
今朝の根岸登喜子に見舞いにって現金貰ったし。
ケータイを切って一旦膝の上に置いてから、さて貰った袋にはいくら入っていたのかと胸ポケに入れっぱなしだった中身を覗いてみた。
にーしーろーやー……10万か。結構入ってるな。
確か財布には3万くらい残ってたし、足りるだろ。医者にいくらかかるかわかんねーけど。
中身だけ抜き出して財布にしまって
外側をごみ箱にスローインしてから改めてケータイを開いた。
お目当ての人物を呼び出して、コールボタンを押した。耳に当てた先からは断続的に持ち主を呼び出す電子音が鳴っているのが聞こえる。
出るかなぁ?
じゃねーと、俺が想像する最善よりちょっとばかり面倒になるからなぁ。
「……なに。」
おぉ、出た出た。
相変わらず常に不機嫌だな。
『あぁ、俺だけど。今平気か?』
「…………なに。」
『あのさぁ、神保、って人わかるか?
30なかばで右頬から首まで長い切り傷のある、色黒の強面。
……仕事の途中で少し関わる機会があって、連絡してーことあるんだけど。
直で繋がる番号教えてくれねぇ?』
お前、喋り方と表情どーにかすればもっと友達出来るのに。
お前の無表情は恐すぎるんだよ、圭介。……ダチになればイイ奴なんだけどなー。まぁ周りが不必要にビビるからいらねー怒り買ってるだけなんだが。
「神保……傷……あぁ、ヨシツネさんか。」
『ヨシツネ?って言うのか。』
「いや、あだ名。」
『あだ名?』
「あぁ、……じゃあ、後で番号メールするわ。
……用ってそんだけ?」
『いや、あとな、その神保さんから伝言。』
「は?」
『たまには顔見せに帰ってきてやってくれ、だって。……悪いな、借り作るために。お前の家庭環境に口出す気は無いんだけどな。』
はぁ、と短いため息がねクータイの向こうから聞こえてきた。
ごめんって、既成事実作るために、な。
「……この後でヨシツネさんに電話かけるんだろ?」
『あぁ』
「じゃあ、俺からも伝言。
……今度親父がいないとき、帰る、って。」
『ぶっ、
……わかった。じゃあ、また今度暇なとき飲みに行こうぜ?
こっちいる時に連絡してくれ。』
「あぁ、わかった。」
相変わらず実家嫌いだな、お前。
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