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純情boogying
どっちも接客業
 


「……はい、もしもし、……西新宿上村診療所です……」


数回のコール音の後、眠そうな男の声がした。
電話口の向こうから、依然ごそごそと物音が聞こえる。もしかして今まで寝ていたのだろうか。……えーと、楓を店に連れてったのが金曜、次の日丸一日睡眠と買い物に費やして……夜、えっちして一晩たった訳だから今日は日曜か。
……今は10時ちょい前、医者は客にもいるけどやっぱり生活は不規則だと言っていた。


まぁ、ホストなんかはそれより不規則だけどな、と一人自虐的に笑ってリビングのソファに腰を下ろした。

いつもの癖で、ローテーブルのガラスの上に足をのっけて行儀の悪い姿勢をとりそうになって思い止まった。
ばあちゃんの「食べ物乗せるところに乗っかると足が腐るよ」とのありがたい一言を思い出したからだ。……楓も、俺の事、そんな風に叱ってくれるかな?
まぁ、嫌われそうなことはしないけどな。

『ヒデ、俺俺。』

「あー……何、ジン?こんな朝っぱらから何の用?
また女に怪我させられたの?」

『また、って……一回だけだろ。今回は普通に病気で。往診頼みてぇんだけど今から平気か?』


朝っぱら、とは言うがもう世間では「こんにちは」を使い始める時間帯だぞ。
やはりこんな土地で医者なんかやってると生活は大分不規則になるらしい。
もしかしたらヒデは今時分往診はやってねぇのか、な……?


「へぇ……お前が?珍しいなぁ、インフルエンザもかかったことないって言ってたくせに。
声は元気そうだけどどこが悪ぃの?」

『いや……俺じゃなくて。

今、ちょっとワケありで俺の家に子供がいるんだけどさ。その子がお腹痛いっつってかなり辛そうにしてるから。……病院とかどこにあるかもわかんねーし、俺。
出来るだけすぐ来てほしいんだけど、頼めるか?』

「ふぅん……女?
密入国とかじゃねーよな?」


『いや、女じゃねーよ。男の子。あとちゃんとした日本人だよ。そっちの訳ありじゃねぇ。』

「え、じゃあ何の訳あり?」



『……親が、俺の客だったんだけど……あちこちに借金残して消えちまったんだよ。他に身寄りもなくて、俺が引き取ろうと思って家に連れて帰ったんだけど。』

……まさか「中学生の男の子で俺の恋人」なんて本当の事を言う訳にもいかないし。
まぁ嘘ではないからな。

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