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純情boogying
「ただいま」が言えるということ
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『……た、ただいま。』


ここに住み始めてから初めて言った言葉だった。

楓の学校と俺の店と、すれ違うこともあるかもしれないけど
今日から俺の恋人と一緒に暮らす。自分の帰りを待っててくれる人がいるのがこんなに嬉しいことだと思わなかった。

ばーちゃんと暮らしていた時の事を少し思い出して、少し切なくなった。
……なぁ、俺、料理の上手な嫁さん貰うよ。



『……楓?』

てっきり、「お帰り」が返ってくる物だと思っていたので少し拍子抜けしてしまった。
昨日は大分無理をさせてしまったし、まだ疲れて眠っているのだろうか?


昨日の朝、寝ぼけて舌っ足らずになっているのは可愛かった。
キスで起こすのもいいかも、とニヤニヤが抑え切れないまま寝室のドアを開けた。


『……楓?』

「あ……おかえり、なさい……」


待ち望んでいたその言葉は俺が想像していたような調子では返ってこなかった。


一度起きたのか服を着ていて、サイドボードに置いていた眼鏡を手にゆっくりとベッドの上に起き上がった。
布団にくるまって額にうっすらと汗を浮かべ、少し辛そうに眉根を寄せた表情が楓の異常を知らせている。


『楓……どうした?どこか辛いのか?』

「お腹と……あと、体が、ちょっと痛い、かな……
熱は無いみたいなんだけど……」


ベッドに片膝をついて乗り上げ、楓を腕に抱き寄せた。
手の平をおでこに乗っけるが、確かに顔は火照っていないし熱も無いようだった。しかし両手で庇うように自分のお腹を抱え込んでいて、背中を丸めて浅い呼吸を繰り返す楓は大分辛そうに見える。

俺が、昨日風呂上がりにサカったせいでもしかしたら身体をよく拭拭けてなかった、か?
それで風邪引いたとか?

オロオロするだけの俺を尻目に。辛い筈の楓が1番冷静に喋っている。

「ジンの……昨日の、所為じゃないよ。
俺、風邪引くとすぐ熱が出るから。風邪じゃないと思う。……お腹の薬とか、ある?」

『い、いや……二日酔いと痛み止めの薬しか……』


俺、健康優良児でガキのころからろくな病気らしい病気したことないからなぁ。

インフルエンザもなったことないし、寝込んだのははしかとオタフク風邪と水ぼうそうぐらいだ。

薬、薬……もうドラッグストア開いてるよな?
いや、病院連れてった方がいいか。
でも、今日土曜だよな……?病院って土日やってんの?……中学のころダチの見舞いに行ったことある、から……やって……た、よな……

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あきゅろす。
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