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純情boogying
そしてまた日常は変化する。
 

Aide-toi et le ciel t'aidera

天は自らを助けるものを助く。



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「……い、おい、羽夜、」


ゆさゆさ、と揺り動かされた身体に強引に意識が眠りから引きずり出された。


なんだ、と目を開くと磨りガラスの向こうから朝陽が押し入った薄暗い店長室を認識する。


その中央の応接セットのソファでぐずぐずに溶けたように寝ていた俺。
そこに覆いかぶさるようにして、昨日散々俺を悩ませた頭痛の種が肩を掴んで揺らしてきているのが目に入った。



『っ、お前、昨日は一体何やって……っ!!』

「悪かった、ごめん、」

思わず怒鳴りそうになった俺の口を手の平で塞いで、ジンが先制で謝ってきた。


この明るさだと他の奴らがまだ寝てる時間か、と大声を出すことは思い止まり
昨日一日無断で穴を空けたうちの店のNo.2に静かに詰問を始めた。


『……お前、昨日どんだけ迷惑かけたかわかってんのか。』

「わかってる。
無断で店を休んで、連絡すらしなかった。……店に迷惑かけたし、客にも悪いことをした。
……自分で自分の尻拭いくらいする。少なくとも、確認できた限りの昨日来た客には全部フォロー入れてきた。
そんぐらいしねーと、お前の前には顔を出せない。」

真顔でつらつらと語るジンに改めて舌を巻いた。
電話をしてから一晩で、昨日来た客に全てフォローを入れ終わっている。
恐らく携帯電話に入っていた連絡で見当を付けたのか。そしてデスクのパソコンが電源入ってる辺り、店の出入帳も確認して自分の客がそれ以外に来ていないかも確認したに違いない。

(しかしある程度パソコン使えるんだから、普段から業務手伝ってほしい。クソ。)


女だけじゃなくて、やっぱりこいつは人の要求読み取ってそれに応えるのが神懸かり的にうまい。

ここまで事後処理された後だと、昨日のトーンダウンした電話の続きで言おうとしていた文句も引っ込んじまう。


『……まぁ、昨日と同じ事をまた言うのも時間の無駄か。
今日は朝も夜も出るんだろ?』


怒りをぶつけるのは諦めて、半分寝ぼけた俺の頭はすぐに今日の売上の予測を始めた。

やはり、昨日丸一日無断で休まれた痛手は大きい。……穴埋めにジンの定休は来週なし、かな……

「あぁ、モチロンな。
……ただ、楓が家にいるから9時には帰りたい。
メモ残してきたけど、気付くかな。仕事だってわかるよな?モーニングあるって知ってるし。

それと、その後そのまま店に連れて来るから、同伴も無理。」


……何だそのやりたい放題な要求は。

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